戦いの予感
「ここがアルボスか。いい街じゃないか。えぇ?そうは思わないかハリー?」
「……嬉しそうだな。アンドリュー?」
アンドリューと呼ばれる女性はにやにやとあまり気分の良くならない笑顔で街を見下ろしていた。
それをハリーと呼ばれる男はいつものことなのだろう。気にもせずただ前を見つめていた。
「この街に私たちの『卵』があるのだろう?」
「そうだ。それを人間に持たせておくわけにはいかない。返してもらう。そのために私と君は呼ばれたのだからな」
「だけど向こうも、返してくださいとこちらが丁寧かつ敬意を持ってお願いしても返してはくれないだろう?そんなことは当たり前。それでハリーどうやって返してもらう気だい?」
「無論……そんなことはアンドリュー。聞くまでもなくわかっているだろう?」
そう言ってアンドリューは2本のダガーを遊ぶように持ち。そしてハリーは、2m近い大きな槍を持つ。
「我らデスアモルは戦いの中で生を見つける存在。そのような存在が戦わずに平穏で、会話を持って解決を図ろうという人間。それも弱腰の官僚のような行いわしない。武力を持って、暴力を持って返してもらう」
「そうこなくっちゃ。後ろで控えてる同士も。今か今かとうずうずしているからね。そろそろ行動開始と行こうか!」
「少々まずいことになりました」
エレノアとリクがホテルに戻ると困り果てたレイラがいた。
「まずいこと?」
「えぇ。実はリクたちが見学に行ったあと私たちはウァリエタースの大統領との連絡を試みたのです。これから活動する上でもやはり、他の国々にも行き来しなければならない上に各国が持つ護石が必要です。そのために大統領との面会の予定を取り付けようとしたのですが―――」
「うまくいかなかったというわけですね」
「はい……」
レイラは申し訳なさそうな表情をする。
「しかしなぜでしょう?ウァリエタースは、デストヒュヌスは滅ぼす必要があるという認識がある国。その国のトップが非協力的なのは何か理由があるのでしょうか?」
エレノアは疑問を口にする。
「……私たちを信頼していない。それが原因でしょう」
「俺という存在は、不確かなもので信頼に値するか、そもそも任せるだけの器量があるのかわからない奴に会うわけにはいかない。そんな感じかな?」
「端的に言えばそうですね」
申し訳なさそうにいうレイラ。
「でも。協力を取り付けないといろいろ厄介になります。なにせ。それができないと事前の根回しをすることができなくなります。他の国に繋がるのはさらに骨が折れそうですしね」
「それが問題です。しかし現状では、会ってくれそうにありません」
「会ってくれそうな実績を作るか。はたまた。会わざるを得ない状況に持っていくか。どちらかと言った感じかな」
「会わざるを得ないね……。そんな状況を作るのは大変でしょうけどね」
エレノアはそっけなくリクにいう。
「確かに。それに俺は基本的には何も知らない立場である以上なにもできないしな」
「とりあえず。もう一度連絡をとっています。カーティスにも相談することにしましょう。そのため、この街にはもう少しだけ滞在することにしましょう。ですのでエレノア。クレア。多少は手伝っていただきますが、暇な時は休んでいただいて結構です。もちろんリクも。このような仕事は私がやるべきですからね」
「そうですか。それじゃあ私は久しぶりに出かけることにしましょう。ホテルでは家事をやる必要もないですし。護衛もこのホテルはなかなかのものですからね。お言葉に甘えさせていただきます」
「私もそうさせていただきます」
クレアとエレノアは、二人はそう返事する。
「では。私はまた部屋に戻りますので。リクも何かあれば」
そう言ってレイラは部屋の中へ消えていった。
「クレア。あなたはどうするの?」
「とりあえず。街を適当にぶらぶらします。そうだお茶しに行きません?この街は、経済的にはそれなりに活性化していて、色々な国や地域の食べ物も揃う珍しい場所ですからね。都市からこれほど離れていて、この周辺ではいわゆる大都会にあたるのですから」
クレアは上機嫌に提案するが、エレノアは首を振る。
「嬉しいけど。私とリクは、先に寄るところがあるの」
「ん?俺は特にないが……」
「書籍。忘れたと言わないわよね?屋敷を破壊した救世主さん?」
「……そうですね。俺も用事があるから遠慮するよ」
エレノアの言葉で恐ろしい罪悪感が蘇り。リクは断ることができなかった。クレアはそんな二人を見て苦笑いをする。
「それじゃあ。せっかくですしみんなで行きましょう。その後なら問題ないでしょう?」
「ええ。それなら大丈夫よ。そうね?」
「まぁ。そうだな」
どうやら午後の予定は確定したようだ。




