見学
第1部に新たに話を追加してますのでよろしければそちらもお願いします。
この物語の方向性が大体わかります。
「おはようございます」
「おはよう」
朝目が覚覚めたらすでにクレアがいた。他はまだ眠っている様だ。現在の時刻は、6時より少し前の時刻。寝ていてもおかしくない。リク自身もまさか早く目覚めるとは思っていなかった。昨日のアレが頭にこびりついてしまったせいなのかもしれない。
「昨日はおたのしみでしたね」
「何某RPGの宿屋の店主の様な言葉を言っているのだ?」
「?なんのことです」
リクのツッコミを理解できなかったのかキョトンとした表情だ。住む世界が異なっていたため、この様な共通のネタというものを理解できないのは悲しいものだ。
「それでこれからどうするのだ?」
「正直ここは目的地ではありませんから少ししたら首都へむかうことになります。しかし急いでも仕方がありません。ここには様々なものを見ることができます。それを知っておくのは今後においてもプラスです。知識というのはなくて困ることはあれどあって困ることはありませんから」
「確かに。それは全面的に同意だな。それなら色々勉強させてもらおうか」
「それでは、エレノアとともに行ってきてください」
「?クレアは行かないのか」
「レイラ様が昨日から『何故か』悶えており、今も顔を赤くしていらっしゃるので、からかいに―――様子を見る必要がありますので」
その言葉で昨日のことを思い出す。顔が赤くなっているかもしれない。それを見られるのは恥ずかしい。
「そうか。それじゃあエレノアと行くとする」
リクは早々にこの場から離れていった。
「遅い」
自分の宿泊室に戻り支度を終えて、エントランスに出るとそこにはすでにエレノアの姿がいた。少し待ちくたびれてしまったのか、些か不機嫌な様子だ。
「悪い」
「行くわよ」
一言素直にリクは謝る。それを見て、納得したのか、していないのかわからない態度でエレノアは歩き出す。
「今から向かうのが、昨日言っていた要塞。この表現は正確じゃないけど……この街を存続させる上で書くことができない施設よ。すでにレイラ様が話を通していただいているの。問題なく入れるはずよ」
「そこでは、軍隊の訓練とか行われているのか?」
「そうね。それも行われているわ。でもこの街はやたらとデスアモルが出現する。部屋の中でぬくぬく訓練するよりも、実戦で鍛えている方が多いわ。その方が、確実に力がつく。それゆえこの街にいる兵士は皆強いわ」
「なるほどな」
「だからあの中で行われているのは研究よ。デスアモルやそれに対抗するための武器に関する研究が盛んに行われているの。国からの補助もこの街がトップクラスに多いわ」
「そんなところを見学できるとは光栄だな」
「一応私たちは、特別な立場にあるのよ。特にあなたは。そりゃ特別扱いもするわよ」
「俺が?」
リクの疑問は、まだ大した実績もない人間にそこまで特別扱いをするのか?という疑問であった。
「一般人ならともかく、それなりに地位の高い人間はあなたのことを知っているわ。噂程度でね。そしてこの国においては、デスアモルとその生みの親デストヒュヌスは、まさに脅威。滅ぼすべき魔物。それを倒すことができるかもしれない人間を蔑ろにすることはないわ」
リクの疑問にエレノアは答えてくれる。あまり自分の立場というものに理解が及んでいない、リクは納得したという態度だけはとる。それからお互い何か話すわけでもなくならんで歩いていく。
するとこの街に入るときに見えた要塞。とても進入できるとは思えない立派な建物が見えてきた。
中へ入る門には、屈強な男が何人もいる。それ以外にも兵器らしきものが見える。
少し身構えてしまう。何かやましいとかそんなものはないものの、やはりこういう妙な緊張感が漂う場所に入れば、その空気に慣れていない人間にはどうしても身体的反応が出てしまう。
「許可書は?」
門番の一人の男が淡々と問いかける。
「これよ」
エレノアは、そう言って何かを見せる。おそらく許可書だろう。
「どうぞ」
男はそれを見ると、先程よりもいくばくか態度を軟化させた。それを見て妙な緊張からリクも解放された。
「行くわよ」
エレノアの声につられリクもエレノアの後をついてく。
中はある程度予想はしていたが、それを超えるものであった。要塞とまで言われているもの。何人もの兵士がいるのであろうと思ったが、違った。
予想以上にその様な人物は少ない。もちろんゼロではないし、一人二人などというわけでもない。ただ大多数を占めているわけではないということだ。
中にいるのは白衣を着た人間だ。いわゆる研究職。その様な人物が多かった。そして歩きながら横目で部屋を見ると、何かしらの研究が行われている。それも至る所でだ。
(大規模な研究所だな)
この感想はおそらく正しい。これに授業を行う教室などが用意されたら立派な大学になったであろう。
「研究所見たいと思ったでしょ?」
すると隣からエレノアが話しかけてきた。
「そうだな。確かに研究も行われているとは言っていたが、研究がメインとは思わなかった」
「そうね。要塞と言われているのだから普通戦略上防衛に使われているものと思うかもしれない。でも要塞とは、他の人がそう言っているだけよ。だって要塞とは、今言った通り防衛のため、なのにこんな街のど真ん中そして国からも遠い。防衛としては赤点じゃない。正確なところ。ここは研究所が正しいの」
それを聞いて納得する。アルボスという街は、本来国の中でも田舎にあたる。首都からも遠く、インフラ整備もまだまだ、首都から行くとなれば相当苦労する。そしてこの要塞と呼ばれる代物は、街の真ん中のシンボルの様にある。ここは城であると表現する方が要塞と表現するよりもまだ近いとも思える。
それでも要塞だと言われるのは、やはり、この建物がそれほどまでに頑強に作られているからであろう。
「さてここよ。ここにこの建物トップがいるの」
エレノアはそう言って、ノックをする。すると、低い、しかしどこか陽気な男の声が聞こえた。
「いやはや。ようこそ。お会いできて嬉しいよ。君があれかね?デストヒュヌスを倒す男かね?素晴らしい。実に素晴らしい。その様な人物に会えるのは光栄だ」
顎に髭を蓄えた男は、にこやかにリクの手を握りブンブンと振るう。身嗜みは、上等なスーツに身を包み、靴も綺麗に磨かれていることから気にかけているのだろう。しかしどうにも小柄な身長に、態度、そして全体から感じ取れる雰囲気から『トップ』とは見えなかった。
「おっと。自己紹介もまだであった。失敬。私はチェスター。この街の責任者だ」
「リクです」
「レイラ様に使えるメイド。エレノアです」
「おぉ!聞いておる。今日は見学をしにきたのだろう?レイラ様からお聞きしておる。ならば存分に見ると良い!何せ
この街はデスアモルに関して最先端の研究がなされている。これからあなた方の役に立つことでしょう!」
この施設をまるで立派な息子であるが如く、誇らしげに語るチェスター。
「ここで様々な研究が日々行われ、新しい発見が常にある。そして街の中には、屈強な兵士たちが常に市民の安全を守っている。我が街は、小さな街でありますが、一度たりともデスアモルたちに不覚をとったことがない!我が街はまさに!国を支える重大な街であると確信しております。きっとあなた方は退屈することはないでしょう」
まだまだ語り足りぬという表情を見せるチェスター。想像以上の自身であった。
「それは楽しみです」
水を刺すのもあれだと考えたリクは当たり障りのない言葉を投げかける。
「ならばこんな何もない場所にいては仕方がない。早速いきましょう!さあ早く!せっかくですから案内しましょう」
ウキウキでチェスターはそういう。
「しかし仕事がまだ大量に残られているのでは?」
エレノアはチラリと後ろにある重ねられた書類に視線を移す。しかしチェスターは気にした素振りはない。
「何大丈夫。明日の私がどうにかしてくれる!」
(絶対にどうにもならないだろ)
心の中で呆れる。明日に希望を見出している大半は、さらに引き伸ばすという性質があることを知っているからだ。もっともだからと言ってリクに支障をきたすわけでもないし、そういう人種は見ていて面白いからなんら問題ない。なんなら自分もたまに使う。そして、結果は予想通りである。
「さあ参りましょう」
チェスターは、リクの呆れに気がついていないのか意気揚々と外へと向かった。リクもエレノアに一瞬目を合わせ仕方がないといった表情を互いに作りながらチェスターに続いていく。
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