第6話 村の防衛戦
村の東側の入り口、そこが集合場所になっていた。
入り口前には木製の杭でコの字型にかたどられた防護壁が作られ、そこが陣にもなっていた。壁の外には、先生を含む、男女十人ほどの剣士隊。
そして、陣の後ろにはローブをまとった魔法隊が二十人ほど。そこにリーサの姿が見えた。
何人かクロスボウを持っている弓矢隊もいる。
リーサが私たちに気付き手を振ってくる。私も手を振り返す。
私たちは、彼女らの後方に少し距離を置いて並んだ。近くにはスクロールを持った村人が何人か集まっている。
その光景を見て不思議そうに御影さんが伯母さんに言う。
「村人の殆どが出てきているようだけど、みんな戦えるんですか?」
「そうだね。剣を扱う者は、あの通り少ないが魔法は大抵の者が使えるよ。ちょっとこの村は変わってるの」
御影さんはうなずくが、いまいち納得できてないようだ。
「どうしたの?」
「いや、君ら戦闘民族なの?」
「……うーん、この村がちょっと特殊って言うか……殆どの人が魔法が使えるから。私は少し苦手だけど、剣士隊の人ですら魔法が使えるの——」
言いかけたところで、周囲がざわついた。近づいてきた集団のことが分かったらしい。
「魔物接近、狼が三十、コボルトが数匹。西の森から向かってきている」
みんなが緊張しているのが伝わる。
——コボルド。ゴブリンより一回り小さい、犬のような頭を持ち、鱗の肌をしている。知性は高くないし、さほど力も強くない。村に近づくことは殆どなかった。
おおよその数と方向は、防衛機構で把握できていた。村の中央にある神殿の奥で、文字や記号が表れては消える不思議な黒い板があって、それに示されたということだ。それと、村の四方にも狼の姿が一、二匹見えるという。見張りだろうか。
壁の隙間は応急的に閉じてあるし、外側から壁に近づくと、防衛機構からの攻撃がある。小柄な狼とコボルドでは攻撃に耐えられず越えられないのだという。
「文字が表れる黒い板!? タブレットみたいなものがこの世界にもあるのっ!?」
「……えっと、わかんない。ごめんね?」
御影さんが、目を輝かせて聞いてきたので、私は苦笑いをして答える。ほとんど見たことがないし……。変なものに興味がある人だ。
「二人とも、無駄話はやめな」
伯母さんが、入り口を睨みながら言った。なんだか、少し怖い。——伯母さんが。
御影さんを見ると、しゅん、としていた。
「魔物接近!」
「来たぞ! 前方に集結している!!」
「剣士隊は一旦下がる! 奴らが近づいてきたら、射程に入り次第、クロスボウと魔法で遠隔攻撃! 勢いが止まったら突撃する!」
外に出ていた先生達が下がってきた。前衛となったリーサ達は魔法を唱える準備を始め、クロスボウ隊が弓を放つ準備を始めた。
戦士隊は、杭の壁の隙間から突撃の準備をする。
「御影さん、もしリーサ達の攻撃がうまくいかなかったら、下がった方がいいかもしれない」
「剣士隊の攻撃次第じゃないのか? 彼らが主力だろ?」
「うーん、なんとなくだけど......」
嫌な予感がする。伯母さんは、無言で私を見つめていた。
敵集団の先頭が、ついに見えてきた。昼間に襲われた狼と同じだ。目が黒く牙が鋭くなっている。
怖いけど、もう手は震えなかった。
私は、リーサ達の攻撃がどうなるか、固唾を飲んで見守る。
「魔法の矢!!」
リーサの魔法の詠唱を皮切りに、魔法隊と弓矢隊による、攻撃が始まった。




