↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/70

第2話 明確な意思

 三日目。今日の夜には最初の経由地の街、ルセに到着予定だ。久々のベッドと、お風呂に期待が高まる。


「周囲問題なし、このまま進んで大丈夫。——レェナちゃん、すごく楽しそう。ルセがそんなに楽しみなのぉ?」

「そんなに顔に出てる?」


 ユーユに指摘されてしまった。


「ふふっ。可愛いなぁ。ねっ、美味しいお店もあるし二人で行こうねぇ」

「そうなんですか? ぜひぜひ……あっ……」


 ふと、私は御影さんの方を見た。彼は目をつぶって何か考え事をしている。


「ふふ、御影さんも一緒でもいいよぉ?」

「……ううん、二人で大丈夫」

「わかったぁ。彼のことも、また聞かせてね」


 ユーユは何か意味ありげに視線を私に向けた。何を聞きたいのかよく分からないけど、かなり興味を持っているようだ。

 私は、なぜか意地悪をしたくなって、彼女に聞く。


「ユーユは、クレフさんとモランディさんどっちが好きなの?」


 喋りながら、この感じは、噂好きのリーサっぽいと思った。彼女の口調がうつったかもしれない。


「えっ……だからぁ、腐れ縁だって!」

「うーん、やっぱりモランディさん?」

「……! だからぁ、そう言うのじゃ……そういえば、着替えるときに少し見えたけど、胸の上の辺りに何か模様のようなものなかった?」

「あれは——」


 私は生まれつき右胸の上にある痣の説明をした。


「生まれ……つき……」

「うん。そうなの。だから、袖のない服は苦手なの」

「……そうなんだ。ごめんね……変なこと聞いちゃって……」


 ユーユの顔が曇る。


「ずっとあるから、もう私は気にしてないし大丈夫だよ」

「うん……わかった」


 すぐに彼女は、元の調子に戻って、別の話を始めた。馬車の旅が一旦、もうすぐ終わる……そう思っていた。

 しかし……ルセの街にもう一息というところで突然、後方から声が聞こえた。


「敵襲!」


 周囲の人達が一気に緊張するのが分かる。


「大型の狼に何か乗っている!」


 まさか——嫌な予感が脳裏をよぎる。


「コボルドですか?」

「ううん、違うみたい。多分、ゴブリン——」

「……そうですか」


 ゴブリン。コボルトより一回り大きな体の種族であり、緑色の肌を持ち醜い風貌を持つ魔物だ。人間と敵対し、奪ったり殺したりすることを厭わない、悪しき者たち。

 このまま振り切れるかもしれないということで、一旦走り続けることになったようだ。


 しかし突然、以前にも感じたことのある殺気を感じた。


「前方からも! 何か来ているよぉ!」

「くっ、挟み撃ち? この地方にはゴブリンなどいなかったはず」


 ユーユが前方を指さし、クレフさんが焦りの表情を見せた。前方を見たところ、ゴブリンが三匹見えた。緑色の肌に尖った鼻。まっすぐこちらに向かってきている。


「挟み撃ちだ。三匹なら私たちだけでなんとかしましょう」

「そうだな! 俺らの馬車がやつらに突っ込む。そんで、後続の商人たちは待機。追手がかかれば走り抜けてもらおうぜ。レェナちゃんと御影さんは降ろしてる余裕がねぇから、悪いけどこのまま乗っておいてくれ!」

「——分かりました!」


 手綱をクレフさんが握り、馬車を道の左端に寄せた。ユーユがゴブリン達を誘導するように弓を放つ。すると、ゴブリン達は私たちの馬車の方向に僅かに方向を変えた! 後続の馬車は右にずれて距離を置くため、スピードを緩めた。


 そのまま接近して馬車を止め、ユーユ達が飛び出す予定だったが——あと少し、と迫ったところで、なんとゴブリンの一匹が弓を構え、矢を放ってきた!

 矢は命中しなかったものの、馬をかすめた。馬は驚いてヒヒーンと無き、足を止めてしまった。幸いスピードも出てなかったので、大きな揺れがあった後、馬車は止まった。


「レェナさんたちは、馬車で待機していてください!」


 クレフさんはそう言って、モランディさん、ユーユと飛び出していった。私と御影さんは言葉通り、中で待機しつつ、戦いの様子を見ることにした。

 しかし、すぐ先ほど感じた嫌な感覚が襲ってきた。殺気とは違う強い意思、しかもゴブリンたちのいる方からじゃない!


「!! 御影さんはここで待ってて!」

「どこ行く?」

「気になることがあって……」


 馬車の外を覗くと、ガクン! と足下が揺れ、外に投げ出されてしまった。腰を強く打ち、息が出来ない。声も出せなかった。


 馬車の方に首を傾けて見ると、とても大きい人がいた。いや、人じゃない! 巨人(オーガ)族の【オニ】—がいた。魔法が使え、知性があり、引き締まった体つきに青みがかかった肌。

 オニの近くにはぼろぼろに壊れた荷台が見える。


「みつけた……我らの指導者を!」


 オニがこちらに近づいてくる。カーラ村で見た狼やコボルドと同じだ。真っ黒な目をしていて瞳がどこにあるのか分からない。顔の造形はイメージしていた巨人(オーガ)族よりも、人に近い。

 全身の激痛が走り起き上がることすら出来ない。襲われる! 反射的に目を瞑るが、何も起こらない。急に体がふわりと浮いた感覚がして、見上げるとオニの顔がそこにあった。


 御影さん……助けて……


 叫ぼうとするけど声が出ない。オニは、私の胸の辺りに手をかざすと、呪文を唱え始めた。


「ダークネス。…………スリープ!」


 襲ってくる魔法の力に抵抗をするものの、周りの喧騒が次第に遠のいていく——


 御影さんが、何か叫んでいるのが聞こえたような気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=oncont_access.php?citi_cont_id=122268010&sツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。