浮かれる君
アメリアは、ハッとした。
待って、私ルーク応援隊 隊長なんてやってる場合じゃないわ!
死亡フラグは、折りたいのよ!
アメリアが、チラッとルークを見ると、目が合ったルークは照れ臭そうに笑った。
いや、大丈夫だわ!私は、ルークに無理強いをして困らせたりしないもの!それに、今のところ嫌われていないわ!
「もう、外も暗いわ。ルーク、今日泊っていったらどうかしら?」
「まぁ、お嬢様名案ですわ!ルーク様応援隊として、ここで帰らせるわけにはいかないですね!」
アメリアの提案に、リリーはキャッキャッと喜んだ。
「そんなっ!申し訳ないです!僕は、大丈夫です。」
ルークは、手と頭をブンブンと振った。
「そんなに、私の家に泊まるのは嫌なのね…」
アメリアは、シュンッとした。
「…これが、クラウド様の言ってた天然タラシですね…。」
折角、嫌われなくて死亡フラグ回避!って思ったら、泊まるのを断られるなんて…嫌われてるのかしら!しかも、凄い拒絶の仕方……あぁ、死亡フラグ!なんて思っていたアメリアには、ヒューのつぶやきは聞こえなかった。
「そんな!嫌なんて、滅相もありません!…では、よろしくお願いします…」
ルークは、顔を真っ赤にしながら言った。
きゃー!やったわ!なんて喜んでいる、アメリアとベラには、冷めた目をした大人達には気づかなかった。
「…また、お嬢様に…。カラム様が苦労されますわ…」なんて呟くリリーに、「…でも、そんなルークの気持ちも分かっちゃうんですよね…」なんて呟くヒュー達には…。
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城の者達が寝静まったころ、使用人室でリリーとベラは苦い顔をしていた。
「…私は、お嬢様にはお伝えしない方がよろしいかと…」
「…そうよね。私もそう思うのだけど…」
リリーとベラは、うーんと唸った。
カラムが1度も、アメリアが倒れてから、屋敷に訪れないのだ。それに、アメリアの身を案じるメッセージも贈り物も何もない。
それだけなら、まぁ、カラムも忙しいのだろう。と、納得できるのだが、どうやらカラムは愛人候補と噂されたセシリーの屋敷へと、通い詰めているらしいのだ。
聞いたリリーとベラは、あり得ない!と、有る事無い事言いふらす者の風の噂だろう。と、思ったのだが、ルークを迎えに行ったクラウドが実際に、セシリーのところへと向かうカラムを見たというのだ。
そして、アメリアが倒れたので来て欲しいという、誘いにもカラムは乗らなかった。
カラムは、セシリーに惚れてしまったのではないかという思いと、あのカラムがアメリアを忘れるわけがないという複雑な思いが絡まり、リリーとベラは寝ずに話をしていた。
「カラム様と、お嬢様の婚約は国の未来のために必要ですから、婚約破棄はありえないのよね。…もし本当にカラム様がセシリー様に惚れてしまったとすると…結婚したら愛人となったセシリー様よりアメリア様を何事も優先しなくてはならず、会う回数も減ってしまうから、今のうちに会いに行ってる…ということなのかしら…?」
「でも、あのカラム様ですよ!?アメリア様のお屋敷には、余計な虫をつけるな と命令され、クラウド様と共にずっと男が寄らないようにしていたあの方ですよ!なのに、今更 他の女性のところへなんて!」
怒っているのか、泣いているのか分からないベラの表情に、リリーは顔を綻ばせた。
「…大丈夫。…きっと、大丈夫よ。何か意味があって、セシリー様のところにいっている。…そう信じましょう。」
「そうですね……」
言ったリリーも、頷いたベラも、もしかしたら、カラム様はもう…という思いは消えなかったが、そう信じたかった。