終わり。
「浩介、寝ないのか?」
「……。この景色を、最期の景色を、心に刻み付けておこうと思って。」
「そっか、俺も隣を良いか?」
「勿論。」
午前三時、普段なら寝てる浩介が、この時間まで起きてるって言うのは、心底珍しい。
って言って、そろそろ隕石が見えてきておかしくはない、そんな星空を眺めて、怖くならないんだろうか、とも思うけど、星空はいつもと同じ様に綺麗で、美しくて、心を奪われる。
「綺麗だな。」
「うん、とっても綺麗。これが最期の光景で、良かったと思うよ。」
浩介と手を繋ぎながら、少し寒くなってきたって言う感じな十月の空気を感じて、空をを見て。
こんな幸せな終わりで良いんだろうか、こんな幸福な終末で良いんだろうか、なんて事を考える。
終わりはもっと、みっともなくなると思ってた、皆混乱して、破滅に向かっていくんだと思ってた。
でも、個々の人達も、マーケットの隊員さん達も、各拠点の人達も、最期まで冷静でいた、平静でいた、装っていただけかもしれないけど、でもそれでも、俺達の希望通りの終末だ。
そんな事を、月明かりに照らされてる浩介の顔を見ながら思う、終末につき合わせたのは申し訳ないって言うか、それぞれ過ごしたい時間があっただろうに、俺達につき合わせて、それでお終いだ、って言うのは少し申し訳ないけど、それでも、俺達はやりきった。
だから、これで良いんだ。
これで良い、俺の人生は、これで良い。
きっと、未来の観測者からしたら、人類として、不幸な部類なんだろう、俺達は、終末を見た者達として、不幸な人類として記録されるんだろう。
ただ、俺達は不幸だとは思わない、それは違うと胸を張って言える、俺達は、幸せな時を生きて、ちゃんと、生き抜いたんだ。
「……。俺達は、俺達の人生を生き抜いたんだよな。」
「うん。」
「俺達は、幸せだったよな。」
「うん。」
最期の確認、これで終わりなんだから、これ位聞いたって構いやしないだろう。
「俺達は……。」
「僕はね、悠介と一緒に居られて、幸せだったよ。誰が何といったとしても、誰に不幸だと論われても、幸せだったよ。」
「……。そうか……。」
涙が出てくる、それは悲しいからじゃない、嬉しいからだ。
浩介と最期を迎えられる、それは俺にとっては祝福で、最良の事で、最善で。
だから、これは嬉しくて涙が出てくるんだ。
「悠介、見て、ほら。あれが、僕達の終わり、僕達の終焉、僕達の末路。……。だったとしても、僕は幸せだったよ。」
「俺もだ。俺も、ずっと幸せだった。浩介と一緒に居られて、皆と一緒に居られて、俺は幸せだったよ。」
時間はない、終わりはもうすぐそこに見えている。
予定時刻より早く到達した隕石、それが、宙に見える。
最期に、キスをしたい。
「浩介……。」
「うん。」
キスをする、超巨大隕石が飛来するという、最期の瞬間にキスをする。
巨大な地震、と言えば良いのだろうか、超巨大な質量を持ったそれが、地球を破壊していく。
海に落ちたそれは、巨大な津波を引き起こし、その津波は、世界を飲み込んでいく。
そして、地球という天体が、崩れていく。
それは、滅び、どうしようもない、人類にはどうする事も出来なかった、滅び。
人間は、地球の生命は、滅びを迎えた。
これを聞いてる宇宙人か、それとも未来の人類か、それはわからないけど……。俺達は滅ぶ、それはどうしようもない確定した未来で、変えられない未来。ただ、俺達はそれでも生きた、生き抜いた、生を全うした。これを聞いてる人に、お願いがある。これを聞いている君も、生きる事を全うしてくれ。どんな終わりがあるのかはわからない、どんな終末がまっているのかもわからない。ただ、生きてくれ。生きて、最期に笑って、死ぬその時まで、厚顔不遜に笑うんだ。それが、きっと幸せな命だった、そうである事を祈ってる。……。それじゃ、俺はこの辺で。恥かしいかもしれないけど、これを聞いている誰かがいる事を祈ってる。




