終末期のカウントダウン
「世界が滅ぶと言われてか約一年、巨大隕石が明日、地球に飛来すると言われていますが……。」
「どうしようもない事なのでしょうか。空を見上げると見えてくるほうき星、それが地球に……。」
車を運転しながらポケットラジオを聴く。
またやってる、地球に隕石が来る可能性がある、って言う話から一年位経ったのかな、それがとうとう明日に来るって言うもんだから、街はとんでもない騒ぎになってる。
最期まで冷静でいよう、って言う人達が自警団的に作り上げたスーパーマーケット、そこに買い物に行くついでだけど、街中はカオスな状況だ。
警察、消防、救急、全てが機能していない世界、なんてのが、俺達が生きてる間に来るとは思ってなかった、それはまだまだ未来の話だと思ってた、でも、現実として、明日地球は滅びてしまう、それが計測された未来だった。
「まったく……。」
快楽に浸る者、現実を逃避する者、どうせならと犯罪を犯す者、色々といるにはいる。
中には、まだ希望は残っている、と懸命に治安を維持しようとする者達もいる、ただ、それは無意味と言えるだろう。
一年前、ある日突然訪れた滅びの予言、一年後に隕石が飛来して、地球は滅ぶ、という予言めいたオカルト、だったはずの話が、本当にそれだけの大隕石が地球に飛来する、という演算結果を生み出した、そんな馬鹿みたいで本当の話。
それは、最初は些細な話だったはずだった、隕石が落ちてくること自体、眉唾として扱われていたはずだった。
でも、それは現実になった、それがリアリティを増してきたのは、かれこれ一年前だったか。
それ以来、自警団的な、ある種レジスタンス的な営業をしている人達からしか、品物が入手出来なくなった、町の荒れようは酷いもんだ、都心に行くと、腐乱したゴミに包まれてて、そこはまるでゴーストタウンみたいな静けさがあって、でも人間が生活をしていて。
なんだか不気味な世界に迷い込んだみたいだ、なんて、自警団のスーパーに向かう時に感じたりして。
「浩介、そっちはどうだ?もう少しで帰れるけど。」
「うん、こっちは問題ないかな。」
「そっか。」
通信設備、って言うのもだいぶ機能しなくなってきてる、テレビはかろうじてまだ繋がってる、それを使命としてる人達が、最期までその役目を果たそうとして、頑張って通信設備を持ちこたえさせてる、って話だ。
それ以外の通信設備、って言うと、もうラジオか無線しか残されてない、スマホは電気が使えなくなって使えなくなった、携帯も然り、固定電話なんてもっての外だ。
現在の日本、その命運は、握られている様で放棄されている、それを実感したのは、テレビ以外の電力関係が潰れた事が発端だ。
テレビ局は、必死になって電力を確保して、番組を続けてるけど、それでも他の通信設備が駄目になる程度には、電気関係も駄目になってるんだろう、俺達は無線機器をやり取りしてる闇市でこれを仕入れて、それ以来ガソリン燃料を少しだけかすめ取って、それを使ってる。
そもそも、今戻ってる俺達の居場所、って言うのも、自警団的に組織された人達の集まりで、上は自衛隊の退役軍人、下は赤子と幅の広い人種が集まって、何とか生活を堪えられる様に、と組織された、体育館での集まりだった。
俺の役回り、それが車を持ってるから物資補給班、って言うだけで、各々が役割を持って、人生を全うしようとしてる。
俺の恋人であって、幼馴染でもある浩介は、炊事担当で、今は手が空いてるらしい。
って言うのも、うちの連中も随分と人が減った、と言うか、今日が最期の日になるだろうから、ってリーダーだった退役軍人の与義さんが、解散の音頭を取った。
今日は皆自由に過ごすと良い、最期の一日位、好きな人間と好きに過ごせ、って言ってて、俺達はそれでも残る事を選んだけど、与義さん自身、独りで過ごしたいから、って言って、体育館を出ていった、それが今朝の話だ。
「じゃあ、後十分位で戻るよ。」
「はーい。」
無線を切って、荒廃した街並みを見ながら、車を運転する。
って言っても、襲撃をされるだとか、そう言う事も無くなった、抗う事に疲れた人々が、今日という終わりをどうやって過ごしているのか、それがよくわかる。
これが二週間前だったら、空腹だけど自警団に受け入れられてない人、とかに襲撃をされてたかもしれない、それだけ、ひっ迫した状況だった、と言い換える事も出来るだろう。
「……。」
街は静かだ、不気味なほどに。
静かすぎて、人間が他にいる事を忘れてしまいそうだ、それ位、しーんと静まり返ってる。
よく見ると、俺の車を見ている人、なんてのも見つかりそうだけど、それを探してたらこっちが怪我しそうだし、それは御免だ。




