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人を異世界へ飛ばす大型トラック美女運転手、今日も元気に残業中!  作者: 酣睡


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領域の扉を押し開け、薄紫の絶対軌跡

白石家のあの冷え切った屋敷から完全に縁を切って立ち去ってからの一ヶ月の間、白石こころは自分自身の精神が格段に落ち着き、安定したことをはっきりと実感していた。


毎日十トントラックを駆り、選ばれし天選の者たちを異世界へと送り届ける業務においても、彼女はいよいよ手慣れてきただけでなく、業務の合間を縫っては、一之瀬萌乃が纏う「他人の運気と存在感を強奪する」悪辣な呪いに、一体どのような法則と限界が存在するのかを冷静に研究し始めていた。


この期間の密かな観察と検証を経て、白石こころは極めて重要な幾つかの規則を導き出していた——


第一に、「後天的に習得した確かな実力は奪われない」ということ。


長年苦労して身につけた料理の腕前やデッサン技術であれ、あるいは今まさに死線の極限で磨き上げている大型トラックの運転技術であれ、筋肉と魂に刻み込まれた本物の技量は、萌乃の呪いをもってしても微塵も揺るがすことはできない。


第二に、「半魔物化した同僚たちには認知干擾が完全に無効化される」ということ。


体内に深淵の魔物の血統を宿している限り、その因果律の階位は定命の人間を遥かに凌駕するため、萌乃の運気補正など彼らの目には稚拙な冗談のようにしか映らない。


第三に、そして最も決定的な一点——「人間の姿を保った同僚が一之瀬萌乃の写真を目にした場合、確かに一時的に呪いの影響を受け、本能的に白石こころへ理由のない嫌悪感を抱くようになる。


だが、直接肌が白石こころの身体に触れさえすれば、その微弱な精神暗示は白石こころに刻まれた創世神の刻印によって一瞬で粉砕され、その場で即座に解除される」ということ。


まさにこの規則こそが、あの日玄関先で長女の白石絢香がなぜ突如として雷撃を浴びたかのように硬直したのか、その真相を白石こころに完全に理解させた。


今や自分自身の生活はとうに軌道に乗っているのだから、白石こころは萌乃にすっかり寄生されきった白石家の血縁者どもなど、もはや気にかけることすらやめていた。


過去の泥沼にエネルギーを浪費するよりも、今の彼女には何よりも優先して、一刻も早くモノにしたい重大な課題が存在していたのだ——


深夜二時、漆黒に包まれた険しい峠道。


まるで移動要塞のような二台の十トン改造大型トラックが、前後して時速百二十キロを超える狂気じみたハイスピードで連続コーナーを爆走していた!


鼓膜を劈くエンジンの咆哮が夜の静寂を容赦なく引き裂き、タイヤとアスファルトの激しい摩擦が、コーナーごとに幾重もの焼け焦げたブラックマークを刻みつけていく。


そして今、前方で先行して車群を引っ張っているトラックのドライバーこそ、今日わざわざ本部に外出同行の申請を出してくれた清水陽向だった。


今日こうして人間の姿で会社の結界の外へ出てくるまで、白石こころは心底驚愕していた——


普段の休憩室で極彩色のコンゴウインコの頭部を乗せ、明るく気さくに振る舞っているあの清水先輩が、魔物の外見を脱ぎ捨てた素顔は、なんと自分よりも年下の十九歳の少年だったのだから!


それは柔らかく軽やかなレイヤーの入った温もりあるオレンジゴールドのショートヘアに、濁り一つなく澄み渡る青空のようなスカイブルーの瞳。


爽やかで整った顔立ちで、笑うと覗く八重歯が愛らしく、まるで大型のゴールデンレトリバーのように温かく頼もしい陽の気を全身から放っていた。


白石こころは当時、思わず心の中で突っ込まずにはいられなかった。


性格も見た目も忠実な大型犬そのものなのに、どうして会社の因果によってお喋りなコンゴウインコへと同化されてしまったのだろうか、と。


『白石ちゃん、後ろの調子はどうだい? その感覚の片鱗は掴めてきたかな?』


運転席の暗号化無線機から、清水陽向の快活で澄んだ少年の声が響いてきた。


白石こころが一刻も早くベテランたちの語る「領域」の境地を掴めるよう、清水は今夜、この封鎖された山道で極限の追走特訓に付き合ってくれていたのだ。


スタート当初、清水はあえてペースを落として後方からプレッシャーをかけていたのだが、わずか三つ目のコーナーを抜けた瞬間、清水は白石こころの立ち上がりにおける荷重移動の微小な隙を完璧に見逃さず、常軌を逸したトラックのラインクロスによって一瞬でインを刺し、そのまま力づくで白石こころを封じ込めてしまったのだ!


このような狭小な峠道で、巨大な十トントラック二台がミリ単位の超接近オーバーテイクを仕掛けること自体、すでに人間業の領域を超越している。


しかし白石こころは痛感していた——岡田課長のみならず、目の前のわずか十九歳の清水陽向ですら、純粋なドライビングの技量において今の自分を遥かに置き去りにしているという冷然たる事実を。


「……領域の感覚、まだ全然掴めません」


白石こころは両手でステアリングを固く握りしめ、手のひらにじっとりと汗を滲ませていた。後方に押し込められて排気ガスを浴びせられているプレッシャーから、彼女の呼吸と心拍数はわずかに乱れていた。


「領域」を理解できないままでは、たとえ創世神たる魔王直々の加護を受けた魔物トラックを駆っていようと、純粋な技術において通常の大型トラックすら超えられないというのだろうか?


『焦らなくていいよ。一番大事な第一歩は、コーナーに入る直前に頭の中で【ベストな走行ライン(レーシングライン)】を視覚化できているかどうかだ。それこそが今の白石ちゃんが真っ先に掴むべき核心なんだから!』


「ベストなライン……?」


白石こころの瞳に微かな迷いが走った。


そもそも、彼女がかつて大学で専攻していたのは純粋な美術デザインであり、人生の最初の二十年間はレース漫画すら数ページ捲ったことがある程度だったのだ。


それがどういうわけか、この理不尽な次元間物流会社に放り込まれる羽目になった。


手元にある運転免許にしても、何人かの勇者候補を異世界へと跳ね飛ばした後に、岡田課長に急かされてようやく取りに行ったものなのだ——しかも取得したのは、ごく普通の第一種普通自動車免許に過ぎない!


『そう! 白石ちゃんがこれから担当するのは、間違いなく極めて難易度が高く、あらゆる反応速度と防御技術が頂点を極めた手強い勇者候補たちなんだ』


前方を流れるようにクリアしていく清水は、無線越しに丁寧に経験を説き明かしていく。


『多元宇宙の因果の法則において、僕たちによる物理的な引導を回避する能力が高ければ高い候補者ほど、異世界へ転生した後に覚醒する潜在能力と救世の力もより強大になる! だから白石ちゃんが社内でのキャリアとランクを上げていけば、上層部はそうした難攻不落の標的を次々と回してくるようになるんだ』


それを聞き、白石こころの疑問はさらに深まった。


「勇者の異世界での強さって……現世でトラックに轢かれる難易度で決まるんですか?」


『あはは、完全にそうとばかりは言えないけどね!』


無線越しに清水陽向の朗らかな笑い声が弾けた。


『ただ単純に、身体能力や神経伝達速度、直感のすべてが頂点を極めている人間は、現世の段階で規格外に手強いってことさ。そういう連中はただ歩道を歩いているだけでも、野獣のような第六感でトラックの正面激突を正確に身体を捻って躱してしまう。もし相手自身が車を運転できるなら、持ち前の天性のセンスで僕たちの追撃を完全に手玉に取ってみせるだろうね』


背後にあるロジックを完全に理解した瞬間、技術をものにしたいという白石こころの渇望は一段と強まった。


今の彼女は、現実世界における名門の肩書きも偽りの家族関係もとうに失い、一見すれば天涯孤独の身に見えるかもしれない。


しかし、あの誰からも愛されず透明人間のように虐げられていた暗黒の日々に比べれば、今の生活は彼女にとってかけがえのない救済そのものだった。


時折女子寮のドアを叩けば、レベッカ上司の甘く香る柔らかな胸元に飛び込んで甘え、これまで一度も得られなかった「愛される安心感」を満喫することができる。


隣を走る清水先輩は、まるで頼もしい実の弟のような眩しい陽光と寄り添いを与えてくれる。


無骨な岡田課長は、とうの昔に失われていた父親の深い愛情を注いでくれる。


給湯室で軟体動物への恐怖心を克服してからは、あのタコ頭の先輩が出張のたびに可愛いお土産の小物を山ほどプレゼントしてくれた——先週末に二人で休日に街へ出かけた際、触手の外見を解いたタコ先輩の正体が、小柄で内気で声の細い、とんでもなく愛らしい美少女だったことを知って心底驚かされたものだ。


命懸けで人を撥ね飛ばすブラックな異次元企業の中で紡がれるこれらの出会いと日常は、滑稽でシュール極まりないものかもしれないが、ここで白石こころが受け取っている敬意、温もり、そして幸福感は、あの凍てつくような白石家での日々の何千万倍も本物だった。


だからこそ、彼女はこの仕事を完璧に成し遂げ、手に入れたこの大切な居場所を守り抜きたかったのだ。


『とにかく白石ちゃん、覚えておいて——高速チェイスにおいて、ベストラインを奪うことこそが、前を逃げる側が追撃を振り切る唯一の解答なんだ!』


前方の大型トラックが見事な荷重移動でヘアピンカーブを駆け抜ける中、清水の声は無線機の中で一転して真剣さを帯びた。


『だからこそ、腕の立つ手練れほど、車速を限界まで引き出せる完璧なラインを無意識に奪いにかかる。でも逆に言えば……もし白石ちゃんがコーナーへ入る刹那、相手よりも一手早くその【ベストライン】を正確に見切ることができれば——相手を追いかける必要なんてない。先んじてアクセルを踏み抜き、そのラインの必中ポイントへ向かって容赦なく突っ込めばいいんだ!』


——見事なまでの絶対予測!


その言葉は白石こころの脳裏にあった霧を鮮やかに切り裂く雷光となり、彼女に「領域」の転生業務における真の使い方を完全に開眼させた!


これは単なるスピード勝負のレースなどではない。サーキットのライン取りを極限の生死を賭けたチェスの読み合いへと昇華させた盤面なのだ——


相手の技術が凡庸ならば、より完璧なベストラインでねじ伏せて吹き飛ばせばいい。


だが相手の技術が一流であればあるほど、その走りのラインこそが最も致命的な隙へと反転する!


ベストラインを外せば速度が落ちて追いつかれ、ベストラインを選べばその先の未来の軌跡を完全に白石こころにロックオンされるのだから!


すべての理を呑み込んだ白石こころは深く息を吸い込み、乱れていたその眼差しは一瞬にして絶対の冷静さを取り戻した。


手首に刻まれた深淵のウロボロスが夜の闇の中で幽かに紫の燐光を放ち、白石こころは車体の底から響く十トン魔導エンジンの野獣のような重低音に耳を澄ませながら、鷹のような鋭い眼光で前を行く清水陽向のテールを捉えた!


夜の帷の下、眠りについていた秋名の連峰は、二つの暴力的な重金属の咆哮によって完全に引き裂かれた。


前方を走るトラックのテールから突如としてエアバルブの凄まじい減圧音が鳴り響き、無線の向こうから清水の興奮交じりの叫びが届く。


『白石ちゃん! ウォーミングアップは終わりだ——ついてこれないと、僕の後方乱流スリップストリームで崖下まで吹き飛ばされちゃうよ!』


言い終わるが早いか、前を行く清水のトラック両脇のフェアリングが跳ね上がり、可変式導流翼が鷹の翼のように展開される。


テールエンドの二本のエキゾーストパイプから、閃光のようなオレンジのアフターファイアが勢いよく吹き荒れた!


メーターの針が跳ね上がる。140……160……180 km/h!


十トンもの巨大な鉄塊が狭い片側一車線の峠道で狂ったように加速し、巻き起こる突風が路肩の木々をへし折らんばかりに薙ぎ倒していく。


「あいつ……正気なの?!」


強烈な加速Gが白石こころの華奢な身体をバケットシートに力任せに押しつける。窓の外の山肌はすでに一本の引き伸ばされた光の残像と化し、インパネの速度警告灯がけたたましいブザー音とともに赤く明滅する。


『警告:現在の車速 185 km/h。連続五連ヘアピンに進入。遠心力が物理的なグリップ限界を超過しています——』


白石こころは奥歯を噛み締めて低く唸り、電光石火の早業でシフトを二段落とすと、左足でブレーキペダルを力強く蹴り込んだ!


ギギャアアアアアアッ——!!!


時速二百キロに迫る極限領域での強引なアプローチにより、十トントラックの四輪複輪は瞬時にグリップの限界を突破した!


巨大な車体は横滑りしながら強烈なドリフト姿勢でコーナーへとねじ込まれ、外側のアクティブサスペンションが軋みを上げて悲鳴を響かせる中、分厚い金属底盤が激しいロールによってアスファルトへと食い込む——


ズザザザザッ——!!!


チタン合金のアンダーガードが粗い舗装路と激しく擦れ合い、漆黒の峠道に数十メートルにわたって谷底を照らし出すほどの刺すような火花の滝を撒き散らした!


灼熱の火の粉が豪雨のように後方へと飛び散り、大気は焼け焦げたゴムの臭気とオゾンの匂いで満たされる!

しかし、前方の清水はさらに速かった。


清水のトラックはコーナーの内側、山肌の側溝スレスレを驚異的な精度でトレースし、巻き上げられた小石が白石こころのフロントガラスをバチバチと激しく叩く。


立ち上がりの瞬間、清水のテールのブースターが再点火され、見えない巨手に背中を押されたかのように、脱出の直線でメーターの限界を力づくでこじ開けていく——

200 km/h! 210 km/h!


落差数百メートルの断崖絶壁の縁で、二台の十トン大型トラックがスーパーカーをも凌駕する狂気の速度で命懸けのデッドヒートを繰り広げていた!


ボディの継ぎ目から風切り音が悲鳴を上げ、二台の巨獣の圧倒的な車幅が狭い峠道を完全に埋め尽くす。


白石こころの視界には、前を行く清水のホイールの奥で、引き裂かれる空気の中で真っ赤に焼けたカーボンセラミックのブレーキローターが、禍々しい赤熱の光を放っているのが鮮明に映っていた。


『掴み取るんだ……白石ちゃんなら見えるはずだ、たった一つの生き残る道を!』


耳元に響く清水の導きに、白石こころの透き通った琥珀色の瞳が極限まで見開かれた。


視界を埋め尽くしていた突風、砕石、火花、そして轟音を立てるエンジンの咆哮が、まるでこの一瞬だけ消音ボタンを押されたかのように遠ざかっていく。


息すら止まるような超高速の世界の果て、前方の空間に、幽かな薄紫色の光の帯が幻影のように浮かび上がった——


それは、清水のトラックが次のブラインドコーナーにおいて、遠心力に屈して横転することなく駆け抜けられる唯一無二の限界ライン。


「見つけた」


白石こころの双眸に鋭い冷光が宿る。彼女は減速するどころか、センターコンソールの最深部に位置する黒いレバーへと右手を伸ばし、一切の躊躇なく奥まで引き抜いた!


ブースター、フルパワー点火!


ドォォォォンッ!!!


魔導トラックのリア装甲が左右へと展開し、超音速戦闘機のアフターバーナーを思わせる深淵の蒼炎が爆発的に噴流となって解き放たれる!


十トンの鋼鉄の要塞は時速二百二十キロの極限領域からさらに人外の二次加速を炸裂させ、車頭が空気を切り裂く重苦しい衝撃波を轟かせながら、激しく舞い散る火花を従えて、薄紫に輝く必中の軌跡を捉え、清水のインサイドの死角へ向けて特攻するかのような勢いで突入していった!


その瞬間、白石こころはまるで自分自身が冷たく広大な深海の中へと力任せに放り込まれたかのような錯覚を覚えた。


周囲を覆っていたエンジンの猛烈な唸り、タイヤの悲鳴、鼓膜を裂く風切り音が瞬時に遠のき、耳の奥には水底へ沈みゆく時にだけ響く、どこか神秘的で重い「ゴボッ……ゴボボッ……」という気泡の音だけが木霊する。

喧騒のすべてが削ぎ落とされ、世界は完全な静寂へと沈み込んだ。


時間が無限に引き伸ばされたかのようなその深海の視界の中で、前方の空気の揺らぎ、清水の描く走行ラインのすべてが、鮮明な薄紫色の軌跡として解読されていく。


白石こころは思考することすらなく、両手と両足が本能の導くままに寸分の狂いもない微調整を完了させていた——


十トンの魔物巨獣が常軌を逸したアプローチアングルをもって、ミリ単位の精度でその軌跡を完全に踏み越え、清水陽向の大型トラックを力づくでねじ伏せて抜き去ったその瞬間、かつてない解放感と澄み渡る全能感が温かな奔流となって彼女の四肢百骸を駆け抜けた。


次の刹那、深海の幻影は水泡のように弾け飛び、世界は凄まじい衝撃とともに現実へと引き戻された!


——ズドォォォン!


暴力的な音波と重力が一斉に感覚を殴りつける。極限のオーバーテイクを完遂した白石こころは、時速二百キロを超える戦慄のスピードでコーナーを立ち上がった。


だが、あまりの車速と慣性により制御の限界ギリギリを彷徨う重たいコンテナの外側が、激しいロールの中で崖沿いのスチール製ガードレールを激しく削り取った!


ガガガガガギギギッ——!


目も眩むような黄金の火花が夜空へと豪雨のように狂い咲き、十トンの魔導巨獣は一切の迷いを断ち切った圧倒的な気迫を纏いながら直線で差を広げ、清水のトラックを完全に後方へと置き去りにした!


『……見事だよ、白石ちゃん』


後方のトラックの運転席で、清水陽向はゆっくりとアクセルを緩め、無線越しに心底からの敬畏を込めた感嘆の声を漏らした。


夜の闇の中へ遠ざかっていく黒い車影を見つめ、清水の瞳に宿った衝撃はいつまでも静まる気配を見せなかった。


わずか二ヶ月——たったの二ヶ月で、この少女は自らの手で「領域」の扉を押し開けてみせたのだ。もはやこれは「天賦の才」などという生易しい言葉で片付けられるような悟性ではない。


清水自身、十五歳でこの理不尽な会社に連れてこられてステアリングを握り、幾度となく死線を潜り抜けて十九歳になった今、ようやく領域の雛形を掴み取ったのだ。


それですら、本部ビルの百戦錬磨のベテランたちから「百年に一人の天才少年」と持て囃されてきたというのに。


四年近くの歳月を費やしてようやくその入り口に手をかけた自分を前に、入社してたった二ヶ月の新人が、白昼堂々とその神の領域へ足を踏み入れてみせたのだ。


初めて領域を「視覚化」したとはいえ、実戦の中でそれを意のままに精密制御できるようになるには、今後も気の遠くなるような研鑽と実戦の積み重ねが必要だろう。


だが、間違いなく言えることが一つだけあった——


目の前にいるあの冷ややかで華奢な少女は、あらゆる常識を塗り替える本物の怪物であり、この次元間物流会社が始まって以来、最も破壊的な天選のエースなのだと。

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