申し出
「……先輩、仙道さんのあの様子おかしくないですか?」
仙道が部屋を出た後、呆然としていた俺たち。
そんな中、冬月がぽつりと呟いた。
「あぁ、あの態度はどう考えても怪しい。明らかに挙動不審な態度を取ってたからな」
あそこまで怪しい態度を取っていると疑いもかかる。
だが、疑いがかかるのは仙道だけでは無い。
我孫、金子、吉木の3人も怪しくないと言ったら嘘になる。
これは一度この4人について調べてもらう必要があるだろうな。
「冬月、すまないが少し席をあける」
「はい、わかりました」
そのように伝えて俺は部屋を出た。
廊下をゆっくり歩きながらスマホを取り出し、桂木に電話をかける。
『もしもし、お疲れ様』
「あぁ、おつかれ。すまないが調べて欲しいことがあるんだ」
『あら、急ぎの調査なの?』
「急ぎは急ぎかもしれないな」
俺の口ぶりからどこか穏やかでないことを察したのか、少し声のトーンが下がり『そう……』とだけ声を出した。
「詳細は後でメールで送らせてもらう。事件に直接関わってるか分からないが怪しい人物が4人上がった。その4人について不審な点がないか調べて欲しい」
『分かったわ。それじゃああとでメールよろしくね』
「あぁ、頼んだ」
そう言って電話を切り、すぐに調べて欲しい4人についての分かっている情報をメールに書き込み送信した。
桂木への連絡を済ませると冬月が待っている部屋へと足を進める。
「すまない、待たせたな」
「お疲れ様です。そう言えば何をしてたんですか?」
「桂木に4人について調べてもらうように連絡してたんだ。現状、調査対象になるのはあの4人だと思うしな」
「そう……ですよね」
冬月は眉をひそめ、俯いた。
そして、小さく深呼吸をすると顔を上げ、真剣な表情で口を開いた。
「先輩、私やはり仙道の動向が気になります。ですので行動を監視したいのですが許可頂けないでしょうか?」
仙道に対し、何度も追求していた冬月。
彼女は恐らく仙道が黒であるという予感が働いたのだろう。
だから備考して、情報を増やしたい。
何か怪しい行動は無いかを調べたいのだろう。
「……分かった。だが俺は他の件で調べないといけないしな」
ついて行くことは難しい。
桂木に負担をかけることを頼んでいるのだ、俺も手伝わなければいけない。
「では警部に同行してもらうようお願いしてみます。それでしたら大丈夫ですよね」
「そうだな。警部も別で調べてくれているだろうし、可能そうなら情報を共有しておいてくれ」
「はい、わかりました」
今後の行動方針が決まり、時計を見るともう17時だ。
一度署に戻り今日の捜査の進展を報告しなければならない。
一度院長の元に訪ね、一言挨拶を残すと俺たちは署へ戻るのだった。




