事件の裏側
香織の案内で島唯一の診療所である健介のところへと向かっていた。
道中、島民に見つからないよう慎重に向かい、やっとのことで診療所へと辿り着いた。
時刻は夜の九時を回っており、診療所の方は明かりがついていないようだが、居住空間の方は明かりついているようだ。
診療所の裏に周り、香織が玄関をノックする。
ややあって中から健介が扉を開けてくれる。
「こんな夜中にどうされましたか……っと香織ちゃんじゃないか。それにあなた方は昼間の」
目を見開き驚いた様子で健介は俺たちのことを見ている。
何かを察したのか健介は俺たちを家の中に入るように促す。
「とにかく一旦中に入りなさい。それから何があったか説明してくれ。ケガした人がいたら言いなさい、治療してやるから」
俺たちは言われるがまま、健介の家へと入っていく。
部屋の奥へと案内され、ようやく休息がとれる。
健介は俺たちにお茶を進めると同じように腰を下ろした。
「さて、一体何があったというんだ? ただ事じゃなさそうだが」
状況をうまく呑み込めていないようで、少し困惑した面立ちで聞いてくる。
俺たちはこれまで起こったことの説明を始めた。
信じてもらえるかはわからないが、起こったことをありのままに話した。
説明を終えると健介の表情が驚きではなく、何やら憤りを感じた様子だった。
視線を落とし、手に力が入っている。
「源次のやつ……ついに本性を現したな……!」
健介の表情から見るに何か知っていることがわかる。
「正人に手をかけるだけでなく、二人にも手を出すとは……」
怒りをあらわに、歯を食いしばらいながらつぶやいている。
「それはどういうことですか!?」
この人は今回の事件について何か知っている……
事件解決に不可欠な情報を持っているに違いない。
「あなたは本土から失踪者を探しに来た刑事さんと言ってましたね。恐らくその事件の元凶は轟破源次で間違いない」
険しい顔で健介は答えた。
もしかしたらあの生物についても知っているのではないだろうか?
「健介さん、もしかしてあなたはさっき話した謎の生物のことも知っているのですか?」
そう聞くと健介は小さく息を吐いた。
そして、ゆっくりとどこか寂しそうな表情を浮かべ話し始めた。
「その生物に関しては聞いてはいたが見たことはない。詳しいこと全て聞いたわけではないんだ」
「その話は誰から聞きましたか?」
「……香織ちゃんたちの父親の東坂正人からだ」
健介がそういうと香織は驚いた様子で目を見開いている。
自分の父親がそのことを知っていたとは夢にも思ってないだろう。
「正人はその生物のことを知って島から追い出そうとしてた。私にこのことを話してくれたのは正人が亡
くなる前日に聞いた。そして、正人は事故で亡くなったと言われているが、私はそうは思わない」
「それはどういう……」
香織が恐る恐る尋ねる。
健介は少し黙ったのち、ゆっくりと口を開いた。
「事故で亡くなったと聞いた時、私は轟破が殺したんだと思った。いや、君たちの話を聞いて確信に変わったよ」
健介の話を聞き、俺は激しい憤り覚えた。
家族を、自分の大切な人を奪われた悲しみは痛いほどわかる。
それに香織のことを思うと轟破のしたことは許されるはずがない。
「話を戻そう。正人はずっとあの生物を追い出す方法を探していた。私が話を聞いたときにはもうすぐ追い出す準備が整うと言っていた。あいつが言うにアドバイスをくれた人がいたらしい」
……あの生物のことを知っている人物が他にいたというのか?
それも追い出す方法の完成に導くほどの人物がこの世に存在するというのか。
「正人は私に、島の中央の山の北側の麓に古い小屋があると言った。協力してくれるならそこに来てほしいと言っていた。恐らくそこでずっと追い出す方法を探っていたんだろう」
健介の言葉この話自体には現実味を感じない。
常人からすれば狂気の沙汰ではないだろう。
しかし、俺と冬月はこの話を信じるだけの経験をすでにしてきている。
また、現にあの生物を目の前で見たのだから。
「そうですか……明日にでもその小屋を調べに行きたいのですが行き方を教えてもらえませんか?」
「もちろんだとも。私も正人が見つけたものを知りたいのでね」
健介の言葉に礼を言う。
すると冬月が健介に質問した。
「あの、その正人さんとはどういう間柄だったのですか?」
「私の実の弟だ。あいつが一人で戦っていたことを知ったのが遅すぎた。だから君たちに協力するのは正人への罪滅ぼしでもあるんだ」
「そうですか……必ず、轟破は我々が捕まえます」
真剣なまなざしで冬月は健介に言い放った。
ここでようやく、健介は安堵の息を吐いた。




