襲い掛かる魔の手
「……冬月、外から何か感じないか?」
小声で冬月に問いかける。
するとは小さく頷き、「先輩も気づいてました」と小声で返した。
恐らくさっき逃げ出した俺たちを探しに来た連中の一角なのだろう。
「香織さん、この家には裏口はありますか?」
「えっと、台所の方に勝手口があります」
「なら弓月と一緒にそちらに行ってください。俺たちも様子を伺いながらそっちに向かいます」
そう言うと香織と弓月はゆっくりと台所の方へと向かった。
俺と冬月は外へ注意を向けながらゆっくりと勝手口を目指す。
そんな中、台所からカランと金属製品が床に落ちた音が聞こえてきた。
「おい、中に誰かいるぞ!」
外から男の声が聞こえてきてすぐに窓ガラスが派手に割れた。
そしてそこから窓をけ破って男が三人入ってきた。
「こんなところに隠れてやがったか」
「さっさと捕まえちまおうぜ」
男たちは鉄パイプや木刀を担いでいた。
……いま俺たちは何も持っていない。
それに人数差でもこちらが不利だ。
「大人しくしろおらぁ!」
鉄パイプを持った男が鉄パイプを振りかぶった。
その動きは素人のそれであったため、避けるのは容易であった。
右腕を引くように半身になって避けると、右足で男の腹に蹴りを打つ。
「ぐっ……このぉ……!」
苦しそうにしながら腹を抑えているが、向けてくる敵意は相変わらずだ。
木刀を持った男も俺にめがけて突っ込んでくる。
蹴りを放った直後のため体勢は崩れているが身をかがめて何とか避ける。
俺は一度距離をとるように後退する。
何も持っていないと思っていた男は仕込んでいたナイフを出し、冬月に向かって突っ込んできた。
ナイフを持った男の腕を掴み、腕を振り下ろした。
衝撃で男は手からナイフを落し、冬月に捕まれた腕を何とか振りほどき距離を置いた。
俺は近くにいた木刀を持った男に接近して、木刀を持っている腕に手刀を振り下ろす。
怯んだ男にすかさず腹に膝蹴りをくらわした。
「うぅっ……くっそぉ……!」
俺は床に落ちた木刀を素早く拾い上げようとした。
隙を見た男は俺に鉄パイプを振りかぶってきた。
しかし、これは予想していた。
木刀を手に持った刹那、閃光のごとく刀身を振り抜いた。
刀身が男の腹部に直撃すると、後ろによろめきそのまま仰向けに倒れた。
「な、何だこいつ……っ!」
男は声をあげながら殴りかかってくる。
自棄になっていたその拳は俺に届くことなく空を切る。
これは好機と思い、その男の背後に回り込み、首に左手で手刀を打ち込む。
そして、手刀を食らった男は気を失いその場に崩れ落ちた。
冬月の方を振り返ると、冬月と対峙していた男も地に伏せていた。
「先輩、大丈夫ですか?」
「あぁ、それよりも早くここを出るぞ。次第に応援が来る可能性が高い」
「わかりました。二人を呼んできます」
そう言うと冬月は台所の方へと向かっていった。
しばらくして冬月は弓月と香織を連れて居間にやってきた。
「に、兄さん大丈夫?」
俺と後ろで倒れてる男たちを見て、心配そうに見てくる。
兄が目の前で命かけて戦っていれば心配にもなるだろう。
「大丈夫だ。流石にこんな奴らにやられるほどやわじゃない」
そう聞いて弓月は安心したのかホッと胸をなでおろした。
弓月が落ち着いたのを確認すると、香織に声をかける。
「香織さん、ここのほかに安全そうな場所なんて知らないですか?」
「そうですね……」
香織は少し考え込むと、ハッとした表情になった。
「……おじさんのところならもしかしたら」
そのおじさんというのは、恐らく昼間にあった東坂健介のことだろう。
警戒されるのかどうかはわからないが今は他に思いつかない。
「よし、それならその健介さんのところに案内してください」




