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闇夜に蠢く挑戦状  作者: 大和ラカ
第二章 少女に蠢く憎悪
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少女の思い

「殺す……邪魔なやつは全員殺す……!」


 そうつぶやくと右手のナイフを振りかぶり、俺を切りつけようとする。


 俺は咄嗟に半身になり、間一髪のところでナイフを避ける。

 そして、二メートルほど距離をとって体制を整える。

 立花から発せられるさっきは徐々に強くなっていき、まるで悪魔に魂でも乗っ取られたように見える。

 それよりもどうにかして動きを止めなければならない。

 できるだけ傷つけないようにしたいところだが、俺自身体術はあまり得意ではない。

 せめて刀があれば……


 そのように考えながら立花を見ていると、俺めがけて走り出す。

 そして再びナイフを振るう。

 狂気に落ち、殺意に満ちているとはいえ立花の太刀筋は素人のもの。

 避けることは容易だ。

 剣道で行うような足さばきで斬撃を次々と避けていく。


「大人しく死ね!」


 立花は叫びながらナイフを振り続けている。

 避けれているものの、このままだと防戦一方だ。

 反撃の一手が欲しいが極めて危険だ。


 一気に距離をとり、一度絵里の方を確認する。

 地面に座り込み、悲痛の表情を浮かべて肩を抑えている。

 肩の傷口が深いのか出血が止まっていないようだ。

 早いとこ病院に連れていきたいところだし、連絡もしたい。

 この状況をどうにかしないと……

 絵里を気にしていると、立花が目の前まで迫ってきていた。


「しねぇぇぇぇぇぇ!」


 叫び声とともに腕を大きく振りかぶる。

 この距離では避けられない……!

 腕を盾にするようにナイフを受けようと構える。


 すると突然、どこからか銃声が聞こえてくる。

 カーンといった音が鳴り響き、見てみると立花の握っていたナイフが地面に落ちた。

 手からナイフが離れた立花は突然その場に倒れてしまう。


「隼先輩! 大丈夫ですか?」


 後ろから銃を構えながら冬月が駆けつけてくる。

「冬月……あぁ、おかげで何とかな」


「やはり犯人は立花このはだったんですね……」


「あぁ、にしてもナイフを手放した瞬間気を失うなんて……」


 冬月とともに立花を見ていると、後ろから気配を感じた。

 振り返ってみるとナイフが独りでに宙を舞い、冬月めがけて飛んできている。


「冬月、危ない!」


 俺は咄嗟に冬月を押し倒した。


「きゃっ、な、何ですか⁉」


 かろうじて避けることができ、ナイフを眺めている。

 冬月もそれを見て驚きが隠せていない。

 何せナイフが宙に浮いているのだ。


「ジャマダ……ワタシノジャマヲスルナ……!」


 どこからともなく女性の声が頭に響く。

 困惑している俺たちの目の前に、何かが浮かび上がってくる。

 それは人の姿をしており、霊とでも呼ぶべきものだろうか。

 しかし、体は透けており地に足がついていない。

 見た目は女子高校生くらいで、とてつもない殺気を感じる。

 また、どこか立花と容姿が似ているような気がする。


「な、なんだ……?」


「ナンデ……ナンデ、ワタシノフクシュウヲジャマスル……」


 立花のような霊が俺たちに語り掛けてくる。

 俺も冬月も驚きと恐怖に言葉が出ない。


「このは……?」


 絵里はゆっくりと霊の方に歩み寄っていく。


「エリ……ワタシノモトニキテ、ソウスレバキヅツカナクテスムカラ……」


 え、絵里ちゃん危ないよ!

 声を出そうにも声が出ない。

 体を動かそうにも金縛りにあっているように体を動かせない。


「確かに……飯田さんたちにはひどいことされた……」


「ダッタラ……」


「でも、殺すのは間違ってるよ!」


 絵里は真剣なまなざしで霊に言い張った。


「怖くて反抗できなかったし、助けも言えなかった……でも、このはが支えててくれたから……何とか頑張れてたの」


 絵里ちゃん……

 霊は黙ったまま絵里の話を聞いている。


「確かに嫌だったけど、このはがこんなことになってはほしくなかった……」


「エ、エリ……」


「もうやめてよこのは……」


 絵里がそういうと、霊は涙を流した。


「ワタシガ……マチガッテ……アァァァァァァ!」


 立花の叫び声とともに霊がその場から消えていった。

 気が付くと、俺も冬月も体が自由になり動けるようになった。



 その後、救急車と警察の応援をよび、校舎にいた木村と欅の無事を確認。

 二人とも出血が酷かったものの命に別状はなかった。

 この後、絵里へのいじめに関して色々話を聞かされるだろう。

 絵里はあの後、今まであったことを俺と光に話した。

 しばらくは安静にするとのことだ。

 立花はというと、ここ数日の記憶が無いようで聞き取りが難航している。

 一人の少女がいじめられたことで起きた今回の事件。

 誰かを思う気持ちは、時に憎悪を生んでしまう。

 俺たち警察は、そのような被害を減らしていかなければならない。



ここまでの閲覧ありがとうございました!

無事二章を書き上げることができました!

少し短くなってしまいましたが楽しんでもらえていれば幸いです。

次章も楽しみにしてください!

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