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闇夜に蠢く挑戦状  作者: 大和ラカ
第三章 離島に蠢く怪虫
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突然の来訪

「はぁ? どういうことだよ」


 俺はやや不機嫌な声で、電話の主に尋ねる。


『ですから、夏休み期間ということでそちらに行きたいとのことです』


「だからといって……それにあれの準備もそろそろなんじゃないのか?」


『心配には及びません。今年は少し事情があって時期をずらすようですので』


 一体何があったというのがだ。

 まあ今それはどうでもいいことだ。

 問題はそれよりも……


「というか……何で弓月が俺のところに来るんだよ」


『何か問題ありましたか?』


「問題しかないだろ。俺は夏でも仕事あるぞ」


『まぁ、弓月は行きたがってましたし、私たちでは止めることができませんでした。止めたとして、恐らく屋敷から抜け出したかもしれませんし』


 まったくその通りな気がして仕方ない。

 会話に出てきている、弓月というのは俺の妹である。

 山川弓月、地元の大学に通っており、自称探偵を名乗っている。

 事件を解決したりしているのかは不明だが、その手の勉強はかなりしている。


『まぁ、そういうわけですので、恐らく三十分もすればそちらに着くと思いますので』


「せめて一言かけてからきてくれよ。というか、朝早くないか?」


 壁にかけてある時計に目をやると、今は朝の七時だ。

 俺が早起きるの知ってて電話をかけているのは分かるが、もうすぐ出勤時間である。


『朝一の新幹線に乗るといってましたからね』


「それに、今から仕事なんだが」


『休みなさい』


「無理言うなよ……」


 これに関しては困ったものだ。

 俺は大きくため息をつく。


『まったく帰ってこないのですし、たまには妹のわがまま聞くのもいいじゃないですか』


「こっちは忙しいんだって」


 少々怒り口調で言い返す。


『では、私はこれから稽古なので失礼します』


「え、ちょっと待て!」


 その叫びも意味なく電話が切られてしまう。


「はぁ……どうしてこうなるんだよ」


 そうつぶやき、用意を済ませていく。

 まったく、いつも俺に聞かず話を進めて。

 こっちはいい迷惑だ。

 ……かといって迎えに行かなければ後が怖い。

 後で何かされるよりか、駅まで迎えに行く方が素直だと考え先に行くことにする。


「仕方ない、冬月に遅れること伝えておくか」


 そう思い、スマホを開き冬月にメッセージを送った。

 その後、出勤準備を済ませ終えたところにテレビからある話題が聞こえてくる。


『もうすぐお盆の時期、中には旅行に行かれる方も多いのではないでしょうか? 最近では、離島へ行き都会とは違う海に囲まれてゆったりするというのが流行っているようです。そんな中、注目されているのは急激に観光客が増えたという九十九島という……』


 俺には関係あるまい、どうせ仕事だ。

 そう思い、テレビの電源を切った。

 それにテレビで取り上げられているんだ、人も多いだろう。

 そのようなことを考え、俺は家を出ていく。



 家を出て歩いて駅へと向かう。

 まだ朝とはいえ、太陽は強く照りつけ額から汗が流れる。

 だが、この暑さを感じると夏が来たのだと実感する。


 そして駅に近づくたび不安が高まっていく。

 弓月のやつがおとなしくしているはずがない。

 昔からトラブルメーカーで、何かと問題を起こしている。

 いや、起こすというよりかは飛び込んでいる方が正しい。

 小学生の頃もクラスメイトがいじめられた時も、犯人を懲らしめようとしたりとやんちゃだが正義感のある妹だ。


 気が付くと青が丘駅についていた。

 辺りを見渡すと、こちらに近づいてくる女性に目が行く。

 背は低く、肩にボストンバッグを下げた黒髪のローツインテール姿の女性。

 まさしく弓月だ。


「兄さんおはよう! お迎えありがとう!」


「あぁ、おはよ。来るにしてもせめて連絡してからにしろ、この後また出勤しないといけないんだから」


 小さくため息をつき、呆れながら弓月に言う。


「だって私が行くって言ったら絶対拒否するじゃない」


「当たり前だ、刑事の仕事は忙しいんだから」


「まぁそれはいいや。それよりも背中に背負ってるのって何?」


 弓月は背中の日本刀入れを指さしている。


「刀だよ、普段は脇差を持つんだが今は修理に出しててな」


「刀持った刑事って何? ウケ狙い? てか私を置いて仕事に行くの?」


 引き気味の様子で、弓月は顔をしかませる。

 そして一回弓月を家まで送らないといけないことをすっかり忘れていた。


「……家行くぞ」


 そう言うと、自宅の方に向かって歩みを進める。



「へぇ、家とは全然違ううんだ」


「家賃もばかにならないからな」


 俺が住んでいるのは四階建てのシンプルな鉄筋コンクリート造のマンションだ。

 部屋の家具もシンプルで物が少ない。


「こんな部屋だと彼女できないよぉ」


「別にそんなのはどうだっていいよ。それじゃあ、俺は仕事行くから」


「あ、兄さんって次の休みいつなの?」


 俺は少し考えてみるも、次の休みがいつか分からない。


「しばらくないんじゃないかな。最後の休みっていつだったかな」


「……兄さんずっと働いてるの?」


「事件自体は毎日のように起きてるからな」


 思えば少なくとも例の行方不明事件以降、不可解な事件の件数が増えてきている。

 かといって共通性がなく、余計に謎だらけなのだ。


「とりあえず俺は仕事に行くから。適当に過ごしておいてくれ」


 そう言って家を後にした。


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