鈍感
まったく、光のやつは何を考えてたんだか。
光の行動に呆れながら、駅近くのファミレスでメニューを眺めている。
俺の隣には明日香が座り、向かいに光が座っている。
「……ファミレスってこんなにメニュー多かったか?」
「そう? 普通じゃないかな」
困惑しながらメニューを見ている俺を不思議そうに明日香が見ている。
「外食に行くことはほとんどないんだよ。コンビニで弁当を買ったりでさ」
「それなら自分で料理したらいいじゃない」
「俺が料理苦手なのを知ってて言ってるのか?」
「はは、確かに隼は調理実習で何度かやらかしてたな」
光が笑いながら言う。
「う、うっせぇな……」
光め、俺の黒歴史を掘り返しやがって。
そう思うも実際、料理が苦手なことに変わりはない。
「栄養面とかは考えてる? コンビニの弁当ばかりだと体に良くないけど」
明日香が心配そうに俺に言ってくる。
以前同じようなことを誰かに言われたことあるような気がして仕方ない。
「あはは、一応手料理も食べることあるから大丈夫だよ」
そう言うと、光と明日香は不思議そうな表情で俺のことを見る。
「え、隼君どういうこと?」
「俺の後輩の冬月が時々作ってくれるんだよ。あいつ料理が得意みたいでな。それにすごい上手でさ」
俺の発言に対し、光も明日香もきょとんとしている。
そして、光は突然ため息をつき、明日香はまるで静止画のように止まっている。
何かまずいことを言ったのだろうか?
「隼、その冬月ってこの前紹介してくれた人よな?」
「あぁ、よく覚えてたな」
「……最近だったしな」
「それもそうか。あいつには世話になりっぱなしでな。この前の事件の時も……」
俺が話している最中に隣からゴンッという音が聞こえた。
音のした方を見ると明日香が机に突っ伏していた。
「おい明日香、どうかしたのか?」
俺が声をかけるも返事がない。
「あー……これはかなり効いたみたいだな……」
「何の話だ?」
「いや、鈍感って恐ろしいよ……」
俺にはどういうことか理解できず茫然としている。
「うぅ……もう注文するよ!」
勢い良く明日香は起き上がると、呼び鈴を勢い良く押した。
「あっちょっ、まだ注文決まってないって! えっと何を頼むか……」
少し怒っていた様子でかつ半泣きの状態で明日香が俺のことを睨んでいるような気がして仕方なかった。




