合流
学園のすぐ手前までパトカーが来たのを確認し、俺は遺体のそばで待機していることにした。
万が一離れたときに遺体が消えたなどあっては困る。
しばらく待っていると、冬月とその同期である新田、他数名の警察官が駆け付けてくる。
「先輩、先に来てたんですね……!?」
俺のそばにいる米村の遺体を見て、冬月は動揺が隠せていない。
他の警察官も遺体から目をそらしている。
「な、何なんすか……うっ……」
新田の顔は青ざめており、口元を手で覆っている。
「新田、こんな所で吐くなよ? ほかの方々は現場保存の方お願いします。それと、第一発見者の水崎明日香からも話を聞いてもらえますか?」
現場に来ていた警官は各自の業務にあたった。
「そういえば、新田は何で来てんだ?」
新田の方を見たがいまだに気分悪そうな様子だ。
「担当していた事件のまとめが終わったみたいで、警部に押し付けられた感じですね」
「……あぁ、なるほど」
そう言うと、もう一度遺体の方へと歩み寄る。
「すみません、遺体のことなんですが」
遺体の状況を確認していた鑑識の佐倉に声をかける。
「あぁ、この状態はかなりひどいな。前回とも凶器が似てる辺り同一犯の仕業と思うよ」
「やはりそうでしたか……それと、心臓の状態なんですが……」
佐倉は視線を落とし、少し黙る。
そして、ゆっくりと口を開く。
「考えたくもないが、これは人間にできることじゃないな。ただ、傷口の大きさから人間の手ぐらいのサイズで間違いないと思う」
やはり、前回みたいな奇妙な何かが……
「先輩、ちょっとこっち来てください」
冬月の声が聞こえ、そっちへと向かう。
どうやら体育館倉庫の裏口らしい。
「どうしたんだ?」
「いえ、何かないかとこの辺りを調べてたんですけど、どこにも足跡がないんですよ」
「それってまさか……」
「……犯人が被害者を襲ったなら返り血を浴びるじゃないですか。それならどこかしらに跡が残ると思うんです」
「それなのにその足跡がないと……」
冬月は小さくうなずく。
「お前なら理解できると思うが、今回の事件は前回の時のような変な力が関与してるんじゃないかな」
「先輩の感じていた違和感ってのはそれのことなんですね」
小さく頷き、別のところへと歩き出す。
この事件はただの殺人事件じゃない。
もしかしたらまた、奇妙な出来事に出会うんじゃないか。
そんなこと思っていると、どこからか声をかけられる。
「隼さん……あの……」
声の方を見てみると、そこには絵里が立っていた。
「絵里ちゃん?」




