第八話「特に理由のない暴力がダニオを襲うっ!」②
……とりあえず、ひとまず落ち着いてから、ダニオとリリエンヌとか言う少女から、一通りの経緯を聞いてみた。
なお、二人は並んで正座。
私は腕組みして、見下ろす感じ! 何故なら、この場で一番偉いのは私だからだっ!
「んで……あんたはこの迷宮のダンジョンコアで、私の上位存在だと?」
「そ、そうです! 一番偉いんです! なのに、なんで貴女には、私の強制力が働かないのです?」
「知らないわよ……強制力? なにそれ! 私に命令できるような奴なんて、今んとこ誰もいないの! 私より強いってのなら、言う事聞いてやらなくもないけど、ダニオもアンタも全然弱っちいし! だから、この場で一番偉いのは私よ! 文句ある? そもそも、ダニオの命令だって、お願いとして聞いてあげてるだけだったしー!」
「リリエンヌたん……ロゼたんはこう言う力こそ正義な世紀末覇王思想のコなんだお。ダンジョンコアの強制力が効いてないなら、もう逆らっちゃ駄目。面倒くさくなると殴って黙らすくらいには、野蛮ちゃんなんだから……ね? 俺氏みたいになりたくないっしょ?」
「り、理不尽です……なんで、私がこんな扱いを……屈・辱・で・す・のっ! マスター! なんなんですか! こいつは! 言う事聞かない時点で、明らかに失敗作じゃないですかっ!」
「ロゼたんは……確かに俺氏が召喚したんだけど……正式な守護者登録されてないんだ。……と言うか、3分でチャチャッと作ったから、素体も何かの役に立つかなーってストックしてた鬼神族の魂を元にしてるし……どうも他の迷宮守護者と違うような感じなんだお。なんで、こうなったのかは俺氏にも解らないお……なんか、いつのまにか迷宮に依存しないスタンドアロンな存在になったみたいなんだよね……。」
「みたいですね……迷宮からの魔力パスも通ってはいますけど……他の冒険者同様加護だけ受けてる感じです。それでいて、なんなんですか! この潜在魔力とパワーは……こんなのうちの迷宮守護者も素だと勝てませんよ! レベルも30とか行ってるし……。」
「あ、やっぱそんな感じなの? さらにロゼたんって変身して、パワーアップするのよ! 変身して暴れた結果があの12層の惨状なんだお……。昔、ここに来てメッシャーラと空中バトルやったギャプロンとか言う緑っぽいの居たじゃん。
ロゼたん……迷宮補正なしのガチ状態で、あいつを普通にボコボコにしちゃったんだお。だから、この場に守護者呼んで排除とか制裁なんて考えないほうがいいお……。きっとボコボコにされて、どっかの魔王様みたいに足元に水たまり作るのがオチだおっ!」
二人の言ってること……全然解んないだけど、凄い言われよう。
……私、まるで化け物扱い……酷くね?
でも、私ってばダニオの召喚モンスターみたいなもんだと思ってたけど、すでに自給自足で独立してたのか。
さすが私……そうなると……その気になれば、世界中を旅したり、自由に生きることも出来るって事!
でも……そうは言っても、世界が滅んじゃったら、元の子もないのよねー。
それに、何より私にはもう大切な仲間たちがいる……私は皆のために戦うのだ……。
きっとこれが愛とか友情とかそんな感じの奴なのね。
でも……それならば、最速の解決方法があるような……。
「ねぇ、ダニオ……この娘がこのダンジョンのコアってのなら、この場でコイツぶっ殺しとかすれば全部解決?」
ちょっと可哀想な気もするんだけど……このダンジョンが機能停止すれば、色々問題解決するって事に気づいてしまったよ。
これはもしかしなくても、チャンス到来って奴なんじゃなかろうか?
私も数々の戦闘経験を積んで、直感で相手の戦闘力を図る能力とでも言うものが身に付いてきている。
その直感が告げている……力づくなら、このダンジョンコアとやらに負ける要素はない……文字取り、指先一つで終わるような気がする。
うん、ここはクールかつ非情になって、世界平和のために、非道なる行いを許容し遂行すべき時なのかもしれない。
皆のために、正義のために……涙を飲んで諸悪の根源を斬る……それも、運命ならば仕方がない。
「……ホント、悪いんだけど……アンタ、ここで死んでくれる?」
私がそう告げると、リリエンヌは小首を傾げて、自分を指差す。
何を言われたのか理解が追いついていない様子……けれど、私がスラリと抜き身のダガーを抜くとその意味を察したらしく、顔色を変える。
「や、止めてくださーい! この私はただの端末なので、この身体が破壊されても本体に影響はありませんからっ! でもでもっ! 結構苦労して作ったし、せっかく色んな感情とか学習したところなんです! それに、痛いのとか苦しいのは一緒なんで、酷いことしないでくださいっ!」
なんだ……そう言う事なのね。
とりあえず、ダガーを太もものガーターベルトに戻す。
別にコイツをどうこうしても何の解決にもならないって事なのね……なら、無益な殺生は止めよう。
でも、いい機会だから力関係ってもんを教えてやろうっと。
「どうしよっかなー! さっき何か偉そうなこと言われたし……いっそ、ひと思いにやっちゃおっかなー!」
そう言って、手の関節をボキボキ鳴らして凄んで見せる。
まぁ、この手のは身体に教え込むのが一番っ! とりあえず、一発ぶん殴ろう。
「ご、ごめんなさい……命ばかりは……命ばかりはお助けをーっ!! 痛いのも怖いのもやーですの! や、やべてくだざぁい……なんでもしますから……ピェエエエエーッ!」
あ……ガチ泣きだこれ。
ぺたりと座り込むとどっかの魔王様みたいに足元に黄色い水たまりが……お前もかっ!
ダニオがものすご~く白い目で見てる……。
これ……私が悪い流れだ……あーうー。
「あ、うん……なんか、ごめん……脅しすぎた? とりあえず、この場は何もしないから……ね! だから、泣き止んでよ……なんか、悪い事してる気になってくるし……とりあえず、ダニオは始末したから、とりあえず、着替えましょう……色々大変な感じだし……ね?」
……さすがに悪いと思ったので、色々後始末は私がやってあげている。
具体的には、ジョビジョバになったパンツやらスカート脱がしたり……ダニオをぶっ飛ばしたり!
ダニオ謹製パンツ履かせるとか、気持ち悪い事したくないので、洗い終わるまでノーパン&腰タオルで我慢してもらった。
うん、やりすぎた……さすがに反省することしきり……このコ、私よりちっちゃいし……。
それにこう言う世話の焼けるタイプは何故か嫌いになれない。
なんだろね、この世話してあげなくちゃって、変な義務感は……。
さっきまでムカついてたんだけど、泣かせちゃったらちょっと気が引けた。
まぁ、何より私のほうが大人だって解ったし! なにせ私、ちょろっとだけど生えてるけど、このコはつるつる……勝ちぃっ!
つまり、私は大人のレディーって事……大人のレディーはお子様には優しくしないとね!
「うう……何から何までありがとうございます。
もう、いじめませんか? 痛いことしないですか? 食べたりとかしませんよね?」
上目遣いでそんな風に言ってくる……あう、なんかやりにくい。
と言うか、このコ……もはや、思考が完全に小動物化したらしい。
初めからこうなら可愛げあったんだけどなー。
「食べないよーっ! って言うか、なんでそうなるの? だって、あんたにどうこうしたって、意味ないんでしょ? どうせぶち殺しても、何事もなかったのように新しいのが湧いてくるとかそんな感じだったりするんでしょ。」
「確かに、新しい身体はいくらでも作れますけど、痛いのとかイヤですし……食べられたくなんてないですっ! 私、戦闘力とかありませんから……この身体もあくまでマスター様と話し合いをする為に用意したんですのっ! 暴力反対です! 弱い者いじめ駄目です! えっと、核兵器反対? でしたっけ……マスター様?」
なるほど、ダニオの好みを理解した上で、敢えてこんなちっちゃい身体にしたんだ。
ある意味身体張ってるような……よくダニオ……手出ししなかったなぁ……。
ちょっとだけダニオ見直した……長さにして3cmほど?
ちなみに、サブタイは進撃の巨人のウソ予告のパクリ。(笑)
そして、リリエンヌたん……お前もか!
ロゼたんの犠牲者がまた一人……でも、なんだかんだで後始末手伝う辺り、ロゼたん意外と母性系。




