第五話「大惨事スーパージャングル大戦!」⑤
エストの方も、回復が終わったようで、リアンと一緒に私の隣に走り込んでくる。
まだまだ体力的には、余裕あるんだけど……更なる増援が来たところだったので、助かる。
ちょうど、倍速の効果が切れて、ズシッと身体が重くなる……エストも復帰したことだし、ここは無理しないで下がるか……。
「エスト! ゴメン、ちょっと私も下がる……休憩っ! こりゃキッツいわ!」
「オッケ! あのエルフの人達もなんか解ってるみたいでちゃんと合わせてくれてるね。
うん……この調子なら大丈夫! なんとかなるよぉ。」
「だねぇ……ディードリーさんも回復使えるから、リアンも無理にエストの回復とかしないでいいからね!
自分の身を守ることを最優先にすること!」
「はいっ! でも、お二人を支えるのが私の役目なので、ここはちょっとがんばります!」
リアンがプロテクトを唱えると、エストの防御結界が強化される。
「挑発」やら「騎士の構え」とか色々スキルを使って、エストが再びヘイトを稼いでいく。
私は、オーラを切って、反撃せずに回避に専念。
私を追ってたハンマー持ちが一機また一機と、エストへと向かっていく。
銃持ちもターゲットをエストへ変えた……ひとまず、これでスイッチ終了。
まだハンマー持ちが二機ほどまとわりついてるけど、ルーシュのチャージショットで一機が沈んだのを見計らって、もう一機に反撃! 両手のダガーを同時に肩に叩きつけて、Xの字に切り捨てるっ!
まぁ、効果音はいつもどおりのブッピガン!
更なる増援……ハンマー持ちが三体追加……タイミング悪く、リアンが私にヒールを使ったばかりだったので、まっすぐリアンへ向かっていく。
「やらせないっ! 私が相手だっ! バーニングフレアソードッ!」
ちょっと気に入った火力アップスキルで、攻撃力を上げて、メガネ犬に斬りかかる!
3体はどうもリンクしてるようで、一体に斬りかかったら、3体がすべてこちらへ仕掛けてくる!
さすがに3対1……一体切り伏せた所でカウンターで肩に一撃良いのを貰って軽々とふっとばされる!
「ロゼさん!」
リアンが慌てて、ヒールを飛ばそうとする……でも、今はタイミングが悪い!
「リアンはしばらくヒール使っちゃ駄目! まだまだ大丈夫だからっ!」
慌てて立ち上がるのだけど、ハンマーが当たった左肩から先が動かない……骨にヒビでも入ったかもしれない。
けど、その様子を見ていたディードリーさんが青い霧のようなものをこっちに飛ばしてくる。
ちょっとスピードが遅いけど、恐らくヒール系の魔法!
バックステップで下がりつつ霧に触れると、肩の痛みがウソみたいに消える!
メガネ犬がトドメとばかりに大ぶりでハンマーを振り下ろしてくるけど、私はそれを片手で受け止める。
「調子のんな! このポンコツっ! サクラ……今よっ! やっちまえっ!」
さっきから、手出ししたくてウズウズしてたっぽいサクラに呼びかける。
「よし任せるのじゃ! これなら、恐らく一撃じゃっ!
我が指先よ漆黒の炎となりて、我が敵を穿ち穿け! ファイブ・ブラスト!」
サクラが指先から5連の黒い炎を放つ……それはまるで、巨大な手のように2体のメガネ犬に襲いかかり、次々に黒い炎で串刺しにして空中に吊るし上げる!
「ふはははっ! トドメじゃ! 塵も残さず消え失せるがよいっ!」
サクラがその手を握りしめると同時に、黒い炎を大きく広がり、メガネ犬が一気に炎上し消滅する!
「サクラ! ディードリーさん! ナイス!」
そう言って、ちょっと振り返って親指を立てる!
二人もサムズアップを返してくる……うん、いい感じ!
エストが二回目の挑発で、更に敵を引き寄せる……たぶん、これで安定するはず!
メガネ犬が10体近く集まって、もうフルボッコって感じになってるけど、防御強化とリアンの回復援護で割と平然と耐えながら、エスト自身も周囲を囲まれないように立ち回りながら、次々と切り伏せていく!
リアンも付かず離れずと言った感じで、エストを援護する。
たまに、リアンに向かってくる敵には私が対処する!
やっぱ、エストがメイン盾だと安定する。
サクラも実戦を通して、大分解ってきたみたいで、チャージして一撃必殺の域まで火力を高めて、落としていってる。
エストと私で盾役を交代しつつハンマー持ちを引きつけて、後衛組が銃持ちを仕留めていくと言うパターンを繰り返す。
やがて、不意に銃撃が止む……どうやら銃持ちは全滅したらしい……残りはエストに群がっているハンマー持ちのみ!
アドラーさんと私で背後から斬りかかって、片っ端から落とす!
敵は一回切られて、初めて振り返るような有様で……こうなるともう一方的。
後衛組もここぞとばかりに全力攻撃を開始し、次々メガネ犬を仕留めていく。
……やがて、動く敵は居なくなる!
私達の勝利……だった。
「やっと……終わったわぁ……。」
「つ、疲れました……。」
リアンとエストがお互い背中合わせになって、座り込む。
「全部で30体以上はいたね……なんなのこれ。」
さすがの私もひっくり返って、大の字になって寝転ぶ。
「たぶん、この階層にいたのが全部集まってきてたねぇ……こりゃ、酷いわぁ。」
エストが兜を脱いで、びしょびしょになった髪と顔をタオルで拭きながら応える……さすがにハードだったらしい。
私も水筒の水を一口飲んで、エストに投げ渡す。
「ロゼっち、気が利くね……ちょうど喉乾いたーって思ってたんだぁ。
ここまでの連戦だと、休憩しながら戦わないと駄目だね……なんか1時間近く戦ってなかった?」
「うん、それくらいは戦ってたね……さすがに、今のはハードすぎよ……まったく。」
「ごめん……皆、ボクらが見つかったばっかりに……。」
ルーシュが申し訳なさそうに頭を下げる。
「いや、今のは私ら全員でも危うかったね……ディードリーさん達と一緒じゃなかったら、全滅だったかも。」
「いや、私達だけでも全滅だったよ……この階層、敵に見つかったら、逃げ回って各個撃破するしかないからねぇ……。
私達も基本、こそこそと隠れながら、隙を見てゲートに飛び込むって調子で15層まで辿り着いたのよ。
皆、凄いわ……まさか一階層の敵、まるごと全滅させるなんて……お見事!」
うわっ……やっぱそんななんだ。
これもダニオが設定したんだろうな……後で尋問しよう。
「よし……今のうちにゲートに飛び込んで、とりあえず、12層に行こっか!」
私がそう言うと、全員が頷く。
ゲートについては、すでにルーシュが見つけていたので、案内に従って飛び込む!
そして、次の階層第12層……と言っても、11層と同じくジャングルが広がっている。
どこがどう違うのか解らないけど、似たようなもんだろう。
このまま、攻略するにしても、恐らくまたさっきと同じくメガネ犬との連戦となるだろう……皆、消耗してる事だし、今日のところは一旦撤退っ!
むせる戦いしゅーりょーっ!(笑)




