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美々、翼都よ 永遠に

やっと最終話です。ついに現れたシーザー王。美々は?海斗は?そして翼都はどうなるのか。

ダンジョン1F


 建物は全体的に暗い。まあ、まったく見えないという訳でもないのだが。



 「おい、タモツ!そのシーザーとやらに早く会わせろ!」


 海斗は機嫌が悪い。もう、もっと大きく構えたらいいのに。


 「美々さん、もう少しでダンジョンを一階上がります」

 「そう、ありがとう」

 「美々さん、王にどうする気なのですか?」


 そう、タモツは少しもじもじしながら聞いていた。


「えー?そうね……」


私は少し考えてから、


「タイラ星から手を引いてもらうわ」

「美々!なんだそりゃあ?そいつはそんな友好的に行くわけねえだろ」

「ふーん、一応交渉してみるのよ」


その私の意見を聞いて、タモツは笑い出した。


「はっはっは。美々さんは大物ですねえ。良いですよ、話し合いに行きましょう」

「行きましょう、海斗」

「ま、待てよ!……ち、仕方がねえな」


そう言うと、海斗も私たちに続いた。





ダンジョン2F



薄暗さは一階よりも暗くなっていた。階を上がっているのに、寒さが出てきて、眼で見ても息が白いのが分かる。たまに水滴が天井から落ちて来て、少し空気もジメッとしている。


「それにしても……」


私は辺りを見回す。


いや、ね、敵が全然出てこないなあって。もう少し戦う事を想像していたんだけど、これでは少々拍子抜けだ。まあ、戦いなんて無けりゃあ、無いに越したことは無いんだけど。


そう思っていると、それが聞こえたように、私たちの前に、白い建物が現れた。


これは……。


「サイレントゾーンだわ」

私が叫んだ。それを聞いた海斗が、変な顔をした。


「なんだ?その……サイレン……なんとかって?」

「え?えへへ……名前作っちゃいましたー」


そう、自分で命名したのだった。それを言うと、海斗は半分呆れたようになって私に言った。



「ここは、チャプチャ・ローズって言う幻の空間!」

「それって、地球語に直したらなんていうの?」

そう言われると、海斗はちょっと口ごもり、

「えーっとな、あれだ、「イリュージョン・クラウド」だ」

そのあと、たぶん…と言う、小さい声を付け加えた。


と、そう思えば、


「私たちの声、聞こえてる」

私が言うと、海斗は威張ったように胸を張って、


「俺は、聞こえる事なんて知っていたさ」

「ほんとに?」


ふふんっと笑う、出た、悪魔な海斗だ。


「って言ってられんみたいだぜ」


そうそう、

って、え!?

私は驚いた


ギャンギ人がわんさか歩いているではないか。


「危ない!杖出さないと」

「へ、準備悪いぜ。俺はもう持っているぞ」


そう言って、海斗は剣をしっかり持つと、ギャンギ人に向かって走り出した。


「行くぜ!」

「海斗!」


私も行かなきゃ!


走り出そうとすると、翼都の骨の入ったネックレスが光った。


「!?翼都?」

私は自分の瞳を信用できないくらいになった……。

翼都が……いる。私の目の前に!


「翼都!」


私は翼都に抱き着いた。


「翼都!翼都!」


抱き着かれて目を白黒している翼都は、


「み、美々」


もう離れない、離れたくない!


「僕はここの世界だと、実体化できるんだ」

「翼都、私、貴方がいないの……もう嫌なの、もう消えないで」


すると、その様子に気が付いた海斗が、


「翼都先輩、ついに現れたか」

「海斗、久し振りだな」


そうしているうちにも、ギャンギ人が私たちに近づいてきた。だから、翼都が弓矢で突いた。


「今は戦おう」

「うん、翼都!」

「どーかん、っらあ!かかってこい!」


そう言うと、海斗がギャンギ人に飛びかかった。


そうして、敵を一掃。

が、イリュージョン・グラウドは解かれない。

それを言うと、タモツは頷いて、


「へえ、だからここは自然にGIKが広がっていて、解くとかじゃないんです」


と、大げさに身振り手振りで話すタモツ。


「そうか……ふん、王を倒すのみ。か、いいぜ、いい度胸だ」


舌舐めずりしながらそう言う海斗に翼都は頷くと、


「美々。先へ行こうか」

「ええ、翼都」



もう、ここから私は翼都の事しか見ていなかった。翼都が目の前にいる。もう離れない。私はその時そういう気持ちでいた。



「もう少しで、一階上に上がります」



そう、タモツが言った。




ダンジョン3F




どこまで行くのだろう。もう結構歩いているのに……。

私は正直少し疲れてきていた。でもそれは海斗も同じようで、


「おい!早いところ親玉に会わせろ」そう凄んだ。

「へえ、しかしですね……」

「俺様をなめるんじゃねーぞ!」


と海斗はタモツの胸ぐらを掴んで叫ぶ。


「まあまあ、彼だって好きで歩いているわけではないのだろう。な、タモツ」

そう翼都は涼しい顔で言った。それを聞いてびっくりしたのはタモツ。

「な、なんのことです?」


「王の命なのだろう?」


「!?」


「大方、我々をこのまま疲れさせて、戦いが少しでも優位にするように、君にそう伝わっているのだろう」

「……そ、そうでは……、わしはただ」

「それに、密かに我らの攻撃力でも計っているしな」

「!!……」


凄い、翼都は色々観察していたんだ。

そう言われたタモツは、刀を持つと翼都に切りかかってきた。それをヒラリと華麗に避ける翼都。


「きっ!」

「もう、やめよう。タモツ君」

「このっ野郎!」


そう叫ぶと、切りかかった。すると、翼都は遠い眼をすると、




「いや……シーザー王」



「へ?」


私と海斗はびっくりして翼都を見た。



「僕が分からないとでもいうのかい?君のその付けているマント、それは君の、王のオーラをかき消すシールドだ」



「翼都。タモツがシーザー王?」



「そうさ、このまま我々をだまし続ける気だったんだ。大方秘密の暗殺室に


でも連れ込もうっていう気だったんだろう」


「こいつ……!」


海斗も持ち前の攻撃性を露わにした。


「さあ!シーザー王。そのマントの中身を見せるんだ!」


そんな翼都の叫びを聞いていたタモツは……、肩を揺らし始めた。



「……ふ、ふふふ……よく、見破った。流石は翼都。と言ったところか……」

そう言いながらマントを身体から引きちぎった。


「!?」



ぐんぐん背が伸びて行く、筋肉も隆起している。タモツ……いやシーザー王

はどんどん変わって行く。



「美々、危ないから君は下がっていて」



優しくそう言う翼都。でも、私だって戦えるわ。そう思い一歩前に出る私に、翼都は少々戸惑っていた。貴方と一緒に戦うわ。そうよ、翼都を助けないと。私はそう思い、手に杖を力強く握った。


「ふ、ひひ……翼都、お前はこれだから楽しめる……」


「シーザー!お前を今度こそ倒す!」


そう言い翼都は弓を構えた。




「ひ……ひひ、なあにを言っている。俺がお前などに殺せるわけが、ひひ……無いわ!」



大声で笑うシーザー。それは衝撃波へとなり私たちを襲った。


「美々!」


翼都と海斗はほぼ同時にそう叫んだ。翼都が私の体に覆いかぶさった。


「翼都」

「君は危険だ、美々」

「だ、大丈夫よ!」

「美々……お願いだ、君は下がっていてくれ。そうじゃないと戦えない」

「翼都……。私は邪魔なの?」

「そういうんじゃない……美々、分からない?」

「翼都……」



私にだって分からないわけじゃない。でも、貴方と共に、戦いたい。戦わせて。翼都。


そうしてうちに、シーザーの巨大化は完成した。

なにが、綺麗な顔よ。シーザー王は悪魔の化身なのだろうか。目は飛び出したようになっていて、口は耳まで裂けていた。それはそら恐ろしい姿だった。


 「翼都。前に買った和風のお箸、後であげるから」

 「美々?」

 「ね?」


 生きよう、一緒に、生き抜こう。


私は杖に光を集めると、シーザー王に向かい叩きつけた。それは、化け物と化した王に当たった。が、シーザーはあまりにも大きい身体で……。


「ひひひ……お前ごときに……ひひ、やられるものか」


 そう笑うと、シーザーは大きい手を私たちへ伸ばしてきた。


 「美々!」


 翼都は叫んで私の方を見たが、私はそれを察知して後ろへ飛んだ。


 ジャンプして私に近寄る翼都。


 「私なら大丈夫よ。貴方たちと一緒に戦えるわ」

 「でも……」


 まだ何かを言いそうな翼都の口に私の口に当てた。


 「……」



 二度目……。でも、今度のは前のとは違う。

少し余韻を楽しんでいた様子の翼都は、



 「ば、馬鹿、美々。君……!」

 「私なら大丈夫!ほんとうよ!」



 それを聞いた翼都はしばらく考えていたが、すっときびすを返した。



 「分かった」

 「翼都!」

 「だけど、危なくなったら、逃げるんだ。いいね」



 私は微笑みを浮かべると、すぐに杖を構えた。

 私だって戦ってやる!



 それは、私という魂の叫びだった。その様子を見た翼都は、自分も弓を構えてシーザーの攻撃に備えた。



 「おい!お前ら!手伝え!」



 一人で戦っていた海斗はたまらずそう叫んだ。私と翼都は頷きあった。

 走る私と、大きくジャンプをする翼都はシーザーへと飛びかかった。



 「しゅっ……!」



 そういった掛け声をかけると翼都は弓の部分のとんがったところを向けて刺した。



 「ぐ……」

 「たああーー!」



 私がそう叫びながらシーザーを叩いた。光と共にシーザー王の身体が割れる。


 「ぐぐ……」


 痛いのか、シーザーは苦悶する声を上げた。



 「お前ら……!そうこなくっちゃな!おおっしゃあ!」



海斗は、口の傷を拭うとシーザーへ向けて剣を突き刺した。

その時、翼都が、ここだ!と叫ぶと、


「アクア!」


翼都の弓から水の竜巻が起こりシーザーはその攻撃を全身に浴びた。




「ぐわあああーーー!」





断末魔の声。


やった!



と私は思ったが、シーザーを倒すのはそう簡単ではなかった。

口から、何かを出したシーザーはにやりと笑いながら倒れる。


 「やったわ!」


 そう叫ぶ私。しかし、翼都はその異変にすぐに気が付いた。


 「危ない!美々、後ろへ!」

 「え?」


 そう振り返った私はそのシーザーの吐いた液体に囲まれた。


 「美々!」


 それは炎となり、私の身体を焼いた。



 「……きゃあああ!」




 私は悲鳴を上げた。


 赤い……目の前が、赤い。


 たまらずもがく私。



 熱い……!




 「美々!」


 翼都が……海斗が、倒れた私に駆け寄る。



 ……何が……あったんだろう……。痛い……熱い……熱い……。翼都……翼都……!



 何かが私の手に当たる。



 ……何……?……ああ……これは……翼都の……手だ。彼の細い……手が……私の手を握る。



 「よく……と……」


 「美々!美々!」


 私はそう懸命に叫ぶ翼都を、愛おしいと……本当に愛おしいと思った。……だから、手に力を入れて……それに答えた。



 翼都……貴方の事……忘れない、私……。







 好きだった人に抱えられ、亡骸となった私は、シーザー王を倒して誰もいなくなった塔をゆっくりと下りて行った。


 海斗は泣きじゃくっている。翼都はずっと俯いたままだった。


 私はと言うと、少し上から私の亡骸と、翼都たちを見ていた。

 これって、私は死んだの?じゃあ私は今幽霊になっているの?そんな不思議な気持ちでいる私だったが、翼都が海斗に私を預けて、



 「彼女の亡骸を、頼む」

 「あ、ああ……、先輩は?」

 「俺は、もう……」


 すると、彼の身体が消えていくではないか。


 「!翼都先輩!?」


 「僕は、仮に生き返っただけなんだ。実体のない僕はもうこの世には居られない」


 「先輩……!」

 「君に、後を託したい……地球へ行って、彼女の身柄を……頼む」


 そうして翼都は上の方を見た。


 !?


 私を見て微笑んでいた。

 翼都……?

 跡形もなく消えた翼都を、海斗は探している様だった。


 「……美々」


 私はそういうはっきりとした声を聞いた。振り返ると、彼が私の隣へと歩いてきたのだ。


 「翼都!」


 私は翼都に抱き着いた。

 もう、離れない。離さないで。


 「美々……」


……そうして、ギャンギ人は一旦であっても地球への侵略をやめてくれた。


海斗はよくやってくれた。


 葬儀をして、私と翼都を弔ってくれた。

私はそれを空から翼都と見ながら、

 「海斗なら、大丈夫よね」

 そう私は言った。翼都はそれに頷いた。

 

さあ、私は翼都と次の世界へ行こう。


そうだ、


これからが、二人の世界の始まりなんだから……。


 「行きましょう、翼都」

 「ああ、美々」

 

翼都、愛してる……アイシテル……。

 

行こう

もう永遠に離れない。

 

私たちは共に……


 いつまでも……。

               完

いかがでしたでしょうか。

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