↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
14/45

【コード13話】始まりの咆哮

高評価!コメント!貰えると嬉しいです!

X rin_rincanのフォローもよろしくお願いします!


朝の陽光が差し込む通学路を、ふたりの影が並んで伸びていた。


「昨日の生徒会……思ったよりすごい話だったんた」

燐は制服のポケットに手を突っ込みながら、隣を歩く真白へと目をやった。


「うん。カゲトって人、本当に何か仕掛けてくるかもしれないって、会長さんも言ってたし……」

真白は少し不安げな瞳で答えたが、すぐにいつもの柔らかな微笑みに戻る。「でも、大丈夫。燐はもう、ちゃんと強いから」


「……ああ」

燐は小さく頷いた。力を得てなお、心の奥にはまだ恐れがあった。それでも、彼女の隣で戦いたいという覚悟が、自らを前に進ませていた。


学園の正門をくぐった瞬間、異様な空気が二人を包んだ。


ざわめき。騒然とした声。生徒たちの視線が、ある一点に集中している。


「……何があったの?」

真白が不安そうに周囲を見回す。


燐は迷わず、人混みをかき分けてその中心へと進んだ。


そこには——


大きな校庭の木に、両腕を吊られるようにして、血と痣で全身を覆われた柏木の姿があった。


「柏木……!」

燐が駆け寄り、その身体を抱えるようにして木から下ろす。重力に引かれて崩れる身体。その瞬間、ズキリと燐の胸を貫く痛み。


顔は腫れ、骨が不自然な方向に曲がっている。脇腹には深い打撲。まるで獣にでも襲われたような惨状だった。


「柏木!聞こえるか、柏木っ!」

声をかけるも、彼の目は開かず、息は細く浅い。意識は遠のいたままだった。


「真白……頼む」

震える声で燐が囁くと、真白は小さく頷き、膝をついた。


彼女の手が柏木の胸元に触れた瞬間、光が静かに溢れ出す。


「《心響の光(レゾナント・シャイン)》……!」


しかし——


光はあまりに淡く、柏木の傷にほとんど届いていない。


「……どうして?」

真白の声が揺れる。あの時、燐を癒した時とは明らかに違う。彼女の能力が、想いに応える形で強くなるものであるなら——今の彼女には、それが足りていなかったのか。


「焦らなくていい」

燐がそっと彼女の肩に手を添える。だが、時間は待ってくれなかった。


その時だった。


「わりぃな、通らせてもらうぜ」

低く響く声が群衆を切り裂いた。


現れたのは、制服を軽く着崩した長身の青年。久世ユウトだった。彼の背後には、同じ制服姿の生徒数名が付き従っている。


「……ユウト先輩」

燐が警戒の色をにじませた声を上げる。


ユウトの視線が柏木に向いた瞬間、眉が鋭く吊り上がる。


「おい、お前ら。こいつを保健室に運べ」

淡々とした口調だが、その内に潜む怒気が隠しきれていない。


部下たちが柏木を慎重に担いで運び出すと、ユウトはゆっくりと燐の前に立った。


「……これをやったのはお前か?」


「違います」

即座に燐は否定した。


真白も横で力強く頷く。「燐くんはそんなこと、絶対にしません」


「じゃあ、これは一体なんだ」

ユウトはポケットからスマートフォンを取り出す。画面には、送信済みのメール。


《今からリンの野郎と決着つけてきます》


差出人:柏木大牙


「昨日、あいつは俺との修行のあと、お前の所に向かった。……そして今、意識不明だ」


「……そんな」

燐は言葉を失った。身に覚えはない。昨日はずっと、生徒会との話や訓練に明け暮れていた。


「俺は……会ってすらいない。信じてくれ」


「証拠はあるのか?」

ユウトの目は鋭く、そして怒りに満ちていた。「お前と柏木の因縁は周知の通りだ。動機は十分。俺は師として、これを見過ごすわけにはいかねぇ」


地面に一歩足を踏み出すユウト。

その瞬間、アスファルトが爆ぜた。


瞬間的な加速。周囲の空気が振動する。


燐の目が見開かれる。


「っ……!」


「黙って来い。拒否権はねぇ」

ユウトは静かにそう告げると、背を向ける。だが、そこには明確な“怒り”があった。


「……仕方ない。今は、ついていくしかないのか」


燐は奥歯を噛みしめ、真白を振り返った。

彼女は何も言わず、小さく頷いた。



——


朽ちたコンクリートの破片がそこかしこに転がり、風に舞う砂塵が視界をかすめる。

 人気のない解体予定地――骨組みだけを残した鉄骨が錆びついた音を立てて揺れている。


 その中央、ほぼ更地となった空間に、燐とユウトが対峙していた。

 緊張が空気を張り詰めさせ、ましろが数メートル後方で見守っている。


「……やっぱり、話を聞いてくれないのか」

 燐が声を振り絞るように問いかける。だが、その声は乾いた風にかき消されそうなほどかすれていた。


 ユウトは無言のまま、ゆっくりと首を横に振った。

 その双眸には怒りと、裏切られた痛みがにじむ。


「お前とは前もやったな。前回の俺は本気じゃなかった……。だが今回は違う」

 低く、震えるような声。ユウトの足元に、淡い風圧のような力が立ち昇る。

 地面がわずかに鳴動し、足元の砂が跳ねる。


 燐が剣を握り締める。左肩には半透明の盾――浮遊する光壁が静かに寄り添っていた。


(……やるしかないのか)

 燐の胸中で覚悟が決まる。剣は片手で扱える十字架状の光子剣。静かに右手で構え、盾がぴたりと背後を守る。


 次の瞬間、ユウトの姿が消えた。


「――っ!」

 風を切る音と共に、燐の右横から強烈な回し蹴りが襲いかかる。

 とっさに剣を立てて防ぐが、衝撃で体ごと数歩押し出された。


 ユウトの動きは獣じみていた。跳ね、滑るように足元へ潜り込むと、低空からの蹴り上げ。

 燐は盾を展開して受け止めるが、盾越しでも身体に鈍い衝撃が走る。


 視線を合わせる間もなく、ユウトは旋風のように駆け抜け、反対側から斜め後ろに蹴りを放つ。

 燐は地を蹴って横へ飛び、ギリギリで回避した。


「っ……速い……!」

 滲む汗をぬぐう暇もなく、連撃が続く。


 一撃一撃の重さよりも、その連続性が厄介だった。

 ユウトの足は、止まることなく動き続けている。全身が蹴撃に最適化されていた。


 燐は必死に剣を振るい、盾で急所を守る。

 リビドーによる身体強化もある程度は効いているが、差は明確だった。


「なんで……あんたが、そこまで怒ってるんだ!」

 燐が叫ぶと、ユウトの蹴りが一瞬止まった。


「……言ったろ。あいつは……俺の弟子みたいなもんだ」

 ユウトの声が低く響く。「お前に勝つ為に頑張ってたんだぜ。その弟子が、お前のせいで瀕死だ。そりゃあ、やりすぎってもんだろ。」


 再び加速。


 怒りと悲しみが入り混じったユウトの猛攻が、容赦なく燐に迫る。


 その場で踏み込み、左脚を軸に身体をひねると、踵が閃光のように飛ぶ。

 燐は剣で受け止めるが、弾かれた刃が空を裂く。


 次の瞬間、ユウトの膝が腹部を突いた。

 呻き声をあげながらも、燐は踏みとどまり、右手の剣で反撃の一閃――。


 しかし、その一撃は空を切った。


 背後。

 ユウトがすでに回り込んでいる。


 ——ドンッ!!


 鋭い蹴りが盾に命中し、燐ごと数メートル吹き飛ばされた。

 地面に叩きつけられ、土煙が上がる。


 だが、燐は立ち上がった。歯を食いしばり、剣を構え直す。


 見守る真白の胸が締め付けられる。

 彼女の眼差しは、祈るように、そして叫ぶように燐を見つめていた。


 ——まだ、終わっていない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。