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人生をやり直しまくる令嬢、サリーナ  作者: 高杉 涼子
おまけ(婚約後のルシオとサリーナ)
33/188

ルシオ、父に案を出す

自室で頬に手をあてていたルシオは「うーん」と唸った。

机の上には、小分けにされた茶葉が並んでいる。

これは先日、サリーナと行った茶葉の専門店で買ってきたものだ。

一つ一つには封がされており、匂いが混ざる心配はない。

一番端には、サリーナがルシオにとプレゼントしてくれた茶葉がおかれている。


「やっぱり、最初はこっちだな」


苦みが残るお茶を一気に飲み干したルシオは、机の端においてある通信機を引き寄せた。

ジジ、と鈍い音がして、通信がつながる。


「父さん? 話があるんだけど」


返事を待たずして、ルシオは口を開いた。



ルシオは自室のドアノブを引き出して、回転させる。

決められた回数右へ左へと回転させ、カチリと音がはまるまで押し込んだ。

そのままゆっくりとドアを開けると、廊下ではなくレンガ造りの壁が見える。

白い煙が充満している奥に、人影が見える。


「よぉ、どうした」


先にソファに座っていた父親が、ひょいと手をあげている。

姿をや否や、机に広げていた書類を片付け始めたので、話を聞く準備はできているらしい。

ルシオは煙を出している魔道具を見下ろした。

相変わらず時間を歪めているらしい。


「一体、いくらかけてんだか」

「仕方がないだろ、時間が足りないんだ」

「夕飯までに帰りたいだけだろ」

「当たり前だ、特に今日は早く帰りたい。今日の夕飯はオムライスなんだ」


子供のように嬉しそうに笑う父親を、ルシオは何とも言えない目で見る。

ルシオの父親は、こうやって時間を歪めまくって仕事をこなしている。

決して安くないこの魔道具の為に売り上げが消えていくのかと思うと何とも言えないが、利益を食いつぶすことがないどころか、しっかりと黒字を出しまくっているので許容である。


それもそのはずで、会頭であるルシオの父親は夕食までには帰り、自宅に仕事を持ち込まないことを信条にしている。

ルシオの記憶では、この父親は朝と晩は必ず一緒に食事をとっていたし、休日も家族とともに過ごしていた。

子供が全員自宅から出て生活している今でも、夕食は自宅で食べることを大切にしているので、今日もルシオの母親と一緒に食卓につくのだろう。

そのためならば、大金をはたいて時間を歪めまくったとしても、全く気にしていないのだ。


「とろとろの卵と野菜スープ、楽しみだなぁ」

「子供かよ」

「子供で結構。いくつになっても、おいしいものはおいしい」


きっぱりと言い切った父親のその視線が、ルシオが持っていた白い箱にとまる。

その瞳が瞬いた。


「何持ってんだ、お前」

「ティーセットだよ」

「え、何。お茶でもご馳走してくれるってことか? 何があった、怖いぞ」

「仕事に決まってるだろ」


体を両手で抱きしめ、わざとらしく震える父親を平坦な目で見返し、ルシオは箱を開ける。

中から出てきたのは、普通のティーセットである。

湯気がまだ立ち上っているカップを、ルシオは父親の方へと押しやる。


「……何だ?」

「いいから。感想が聞きたい」


じっと見られ、父親は恐ろしい物を見るかのようにカップを見つめた。

濃い朱色をした飲み物が白い陶器に映えてとても綺麗で、花のような香りもする。

だが、ルシオから渡されたというだけで恐怖の飲み物に変わるのだから不思議である。

それでも父親はカップを手にした。

ルシオが「仕事」と言ったからには、何かあるはずだ。


「では失礼して」


湯気は出ているものの、飲みやすい温度に調整されているだろう。

カップをくるりと回すと、さらに香りが沸き立つ。

初めて嗅ぐ香りに瞬きながら、そろそろとお茶を口に含んだ父親は、目を見開いた。

複数の茶葉を混ぜたのがわかる、飲んだことがない味だ。


「何だ、これ」

「どう?」

「どうって……初めて飲むから何とも。というかこれ、茶葉、何種類混ぜた?」

「五種類。商会におろしている茶屋から購入した茶葉だよ」

「それでこの味か。香りもしっかりついているし、苦みもない。ルシオ作? 何でわざわざ混ぜた?」

「俺じゃない、サリーナだよ。サリーナが、調合した」


ぴくり、と父親が動きを止めた。

潜められた眉を見て、ルシオは口の端をあげる。

黙った父親はもう一度お茶を口に含み、味を確かめている。


「配合じゃなくて?」

「調合」


そう言い切ったルシオが、書類を机に投げる。

サリーナがこの茶葉を購入した店は、コンラード商会に茶葉をおろしている店なので特定は早かった。


「この茶葉とこの茶葉は、合わせたら効果が跳ね上がる、苦みはこっちで打ち消してるけど、影響はない。これは単独。ほとんど味にも香りにも影響がない」

「ほぉ」

「店長に聞いたけど、苦みを消すだけなら別の茶葉でもよかったんだって。でもサリーナが譲らなかったって言ってたから調べたんだ。こっちは追加で体を芯から温める効果があるらしい」

「えーと。シュベルグ家は、茶葉に詳しい家系だったっけ?」

「そんなわけないでしょ」


当然のように返され、父親は「だよね」とこくりとお茶を飲む。

言われたせいか、体が温まってきているような気さえしてきた。


シュベルグ子爵家は、代々魔力が高いことと、魔力をコンロトールする力が認められて、魔法石に関する仕事をしている。

領内では茶葉を栽培すらしていない。

サリーナがここまで茶葉に詳しいとは、おそらく誰も知らないだろう。


「サリーナが、疲れたときにいいって言ってた」

「……は?」

「サリーナが、疲れたときにいいって言いながら、俺にくれたんだ」


ゆっくりと繰り返して伝えると、父親が黙り込む。

カップを揺らした父親は、小さくため息をついた。


「これが、サリーナ嬢の持つ知識の一端ってわけか」

「本人、何も気がつかずにやったけどね」


ルシオが小さくため息をついた。

サリーナは自分の持つ知識の価値に、全く気づいていない。

だからこそ、けろりとした顔をして、ただルシオのためだけに茶葉を合わせたのだ。


貴族は茶を好む。

わざわざ取り寄せて購入し、珍しい茶葉があればお金を出してでも購入することも厭わない。

食事はもちろん、その日の体調や気分によっても味を変える。

主人の好みはもちろん、茶葉の効能が何かを知っておくことは執事やメイドにとっては基本的な知識だ。

高位貴族ともなればもっと細やかな配慮を求められるので、彼らはブレンドティーとして主人の好みに合わせた茶を入れることも多い。

だがそれはあくまで味や色味、香りを合わせたもので効能は二の次だ。


効能を考えたうえで茶葉を配合ではなく、調合したとなると話は変わる。

個々の茶葉の知識はもちろん、掛け合わせた場合の知識も必要になってくる。

薬学の知識もなければ、ここまでうまくはできない。

サリーナが持っている知識は、つまりはただの子爵令嬢が持つには深すぎた。

もちろんすぐに店主には口止めもしたし、漏れないかは見張るよう手はずは整えてある。


その上で、サリーナが実際に茶葉を混ぜている姿も確認した。

実際に香りを確かめ、細かく量って調整をしていた。

店主に確認をしたところ、サリーナに従者は外で待機していたこともあり、その姿を見たのは店主のみだという。


そこまでルシオの話を聞いた父親は「口止め料としていくら払ったの?」と笑いながら言うので、ルシオは口を紡ぐ。

かわりに、机の上に投げ出された書類を指さした。


「サリーナの知識を生かして、茶葉を売りたい。店舗売りの、許可がほしい」

「まぁ、そうくると思ったけどね。それで口止め料分は帳消しか」


手を伸ばして書類を手にする。

ルシオが返事をしないので、ぺらぺらと計画書をめくりながら視線を走らせた。

計算式がいくつも書かれてあり、読むのが面倒くさそうだ。


「しっかしお前、茶葉だけで利益がでると思っているわけじゃないだろうな。魔法薬よりも安価だが、効果を感じるかどうかは人それぞれだぞ」

「そんなことわかってるよ。だから、組み合わせる」

「茶葉は餌か」

「あとは書いてあるから、今すぐ読め」

「読めったってねぇ、お前すでに手をつけてるだろ。どこまでだ?」


ルシオは肩をすくめた。


「店長には分け前含めて話はつけてあるし、販売ルートも確保してある。売り方も方向性は決めた」


なんやかんやで、しっかりと外堀を埋めきっているルシオは平然としている。

一応体面的に父親に許可を求めているが、結局のところ事後報告でしかない。


「シュベルグ子爵にも、商会の勉強の一環として話は通した。最終利益は、サリーナの個人財産として扱う予定だよ」

「そこまで手を回して赤字出したら、笑うよ」

「ただの通過点で赤字なんか出すか」


しれっと返してきたルシオに、これは結果が楽しみだと、父親は笑みを深めた。

正直に言えば動いていることは知っていたので、今更である。

そして、気になる発言がもう一つ。


「お前……他に何やる気だ?」

「人聞きが悪いな。俺は王家が入ってこないようにしたいだけだ」

「ホント、そういうところは揺るがないねぇ、お前は」


ルシオはサリーナの名前を出すことで、コンラード商会の後継者である、自分の婚約者だと確立させたいと思っている。

コンラード商会のサリーナとして名前が広まれば広まるほど、王家が入り込む隙間などなくなる。


ルシオの父親は、ふむと考える。

計画書はざっとしか目を通せていないが、茶葉だけでも最低ラインの利益が出そうだ。

個人に合わせるとなると、利益以上に大きな物を得ることができそうだとそっと笑う。


「仕方がないから、協力してあげましょうかねぇ」


父親は計画書を机の上に放り投げた。


「貴族相手にも売り出せるだろ。肩書のないお前じゃ接客は無理だろうから、そこは引き受けてやろう。随分とおもしろそうだしな」

「父さんだけじゃ、調合はできないだろ」

「下調べぐらいしてこいよ。会頭を動かすんだから、それぐらいはやってみせろ」


さも当然のように言われ、ルシオは計画書を引き寄せる。

ルシオの父親が踏み込んでくるということは、分け前を求められる。

じろりと睨みつけた。


「どれだけ持っていく気だ」

「二割ほど頂きたい」

「ふざけんな、基本情報はこっちが準備するんだ。追加情報分を考えたらゼロで十分だろ」

「お前、貴族相手に接客する面倒を知らないだろ! せめて一割よこせ」

「クソ侯爵家令嬢の接客したけど、そこまでの対価はなかったな」

「あんな一回でわかった気になるなよ」

「茶葉を薬として考えれば、やり方によっては既往歴も持病情報も手に入れられる。情報料としては最高だと思うけど?」


ルシオは対価を払う気など、毛頭ない。


庶民には全員同じ効果がある茶葉を一括で売ろうと考えているが、貴族ならば別だ。

貴族であれば、多少値が吊り上がっても、個人に合わせたオーダーメイドの物が売れる。

むくみやすい人、肌が荒れやすい人などの個人の持つ悩みに加え、動き回ることが多い、書類など目を酷使することが多い等、日常的なことも考えて、その人だけの茶葉をブレンドできる。

その情報は、茶葉をある意味薬に近いものとして考えるからこそ、手に入れられるものだ。


「茶葉相手に、求める効果が出るかねぇ」

「計画書を読んでから質問しろよ。販売戦略は書いておいた」


机の上におかれた計画書を、父親は眺めた。


「これでくだらない話しかなかったら、どうしてくれる」

「引き出し方が甘いんだろ。自分の接客術をどうにかしろ」

「日々勉強して、せっせと磨いてるわ!」

「だったら欲しい情報ぐらい引き出せよ、商人なんだろ」


譲る気のないルシオに、父親はため息をついた。

このままだと、先が見えない。


「まぁ。最初は様子見ということで、手数料なしでやってもいいけどね」


交渉だな、と父親が先に引いた。

貴族相手に商売ができる手段が増えるのならば、願ったり叶ったりである。


父親は、机の上におかれた書類を押し返した。


「とりあえず、書類は再提出だな。売り込み先に貴族を入れて、もう一度計画を練り直せ」

「差し替えでいける」


ルシオが、後ろから取り出してきた書類を出してくる。

受け取って一枚目をめくった父親は、顔をしかめた。

先ほどとは厚みが違うし、しっかりと自分の名前が書かれてある。


「全く。いくつ計画書を作成したんだか」


王宮へ行く日は決まっている。

時間は限られているので、動くならば一日でも早い方がいい。

いくつもパターンを考え、その分の計画書を作成したのだろう。


ぺらぺら紙をめくっていた父親の目が、ある一ヶ所で止まる。

売り込み先の貴族相手のリストに、どうしても見逃せない名前がある。


「お前これ。この名前、サリーナ嬢の元婚約者の彼だよね」

「王女とセットで、役に立つ上客だろ」

「役に立つってお前……サリーナ嬢に話はつけてあるんだよな?」

「当たり前だろ」

「よくもまぁ、オッケーしたな」


関係性がよくわからんな、と父親は頭を捻って考えることを放棄する。

サリーナと元婚約者の婚約解消は、間違いなく元婚約者の王女殿下への恋慕が原因だろうと思うが、一般的にその話は出回っていない。

二人は七歳で婚約をしてから、一般的な婚約者同士として思い出を積み重ねてきたはずだ。

手紙のやり取り、互いの家への行き来や手を取り合っての外出、社交界ではファーストダンスも踊った間柄である。

多少の情ぐらい残って良そうなものだが、婚約を解消したときのサリーナはすっきりとしていたし、その後はたいした関心もなさそうである。


「あの王女さまの性格じゃ、接触しかねないだろ。わざわざ元婚約者まで引っ張り出して、今更燃え上がりでもしたらどうするんだよ、お前」


ルシオのことだから、サリーナを元婚約者から引き離すことはあっても、まさか近づける可能性があるとは思ってもいなかった。

ルシオが「バカらしい」とため息をついて、口を開く。


「その前に切ればいいだけでしょ」

「怖っ!」

「くだらないことはいいから。読んだ? 許可は?」

「お前、この短期で読めるわけがないだろ! 何ページあると思ってるんだよ」


急かしてくるルシオに思わず叫ぶ。

それにしても、と父親は息を整えた。


「サリーナ嬢、よく受けたな」


茶葉に関しては、サリーナがいなくては話にならない。

王家に目を付けられることを嫌がっている彼女が、表にでることをよく受け入れられたものである。


「お前、まさかとは思うけど、圧をかけてないだろうね」

「かけるわけないだろ!」

「お前ならやりかねないからなぁ」

「ふざけるなよ。大体、サリーナが実際に接客するわけでもないんだ、裏方だろ」


サリーナには、あくまで裏方に回ってもらう気でいる。

彼女は自分の持つ知識や情報の重要性をいまいちわかっていないし、それがどういった影響を及ぼすかまで考えていない。

サリーナが迂闊なことを言えば、反応する客もいるかもしれない。

それが貴族であれば、尚更である。


「そういえば、さっきも言おうと思ったんだけどね。サリーナ嬢、話せば今度は気付くと思うよ」

「……は?」

「つついておいた、この間。だから、これからは彼女も考えて動くと思うけど?」


父親の言葉に、ルシオは目を見開いた。

違和感の正体が、形になる。

サリーナに茶葉の話をしたときに、すぐに自分が何かやったのかと口にしたときにおかしいと思ったのだ。

いきなりどうしたのかと思っていたが、目の前の父親のせいだったらしい。

ぎりっと拳を握る。


「何、してんだよ」

「何だ、もう反応済か。商会の人間として考えるなら当然だろ。至る所で種をまかれたら、後始末に困る」


父親の言葉はもっともだ。

貴族相手に商売をしようとするのならば、最早カバーではなく後始末レベルにまで発展するかもしれない。

そうなれば、ルシオだけでは手に負えなくなり、会頭である父親の手を借りることになる。

頭ではわかっているが、サリーナの辛そうな顔が忘れられない。


眉根を寄せたルシオを見て、父親は呆れたように息を吐く。


「お前ねぇ。溺愛はダメだよ」


ルシオの瞳が剣呑な光を帯びた。

父親はカップを引き寄せて、冷えたお茶をゆっくりと飲む。


「彼女は、お前のそばにいたいんだよ」

「そんなことは、知ってる」

「だったら考えろ。そばにいたいは、そばにいてほしいとは違う。お前はどっちだ」


ルシオの父親の視線が、ルシオを捉える。

その真意を確かめるような、鋭い瞳だ。


「彼女は囲えるかもしれないが、閉じ込めることのできる相手じゃない。お前のそばにいたいからと、壁を壊すし超えていくぞ。それができる」


ルシオは何も言わない。

だからこそ、父親はあえて言葉を選ぶ。


「猫かわいがりするだけじゃ、歪みが出来る。彼女を使うと決めたなら、間違えるなよ」


サリーナは、ルシオに手を引いてもらうだけの令嬢ではない。

コンラード商会の名前を背負う以上、リスクも理解してもらわなければ困る。


「まぁ、それはされおき。概要はわかった」


父親はルシオから視線を反らし、計画書を綺麗にまとめた。

それを横においてあった他の書類の一番上に置く。


「とりあえず、明日まで待て。読みたいが時間切れだ、オムライスが待ってるからな」

「オムライスが優先かよ」

「俺の優先は、家族なの。仕事は、家族あってこそなんだよ」

「俺は、息子と言う名の家族の一員ではなかったのでしょうか」

「お前は近場とはいえ、家を出ただろ」

「家を出たら、家族の対象から外れると?」

「突っかかっても意味ないぞ! 今日はここまでだ。質問があれば連絡する」


父親はさっさと話を切り上げて、帰ろうとしている。

ルシオは、舌打ちしそうになるのを堪えた。

父親にとって最優先なのは家族であり、それだけは決して揺るがなかった。

子ども四人がそれぞれ家を出てからと言うもの、現在その一番上にいるのはルシオの母親だ。

この有様で、ルシオがサリーナを最優先にしていることに口を出してくるのだから、腹がたつというものである。


「その状態で、よく人のことが言えるな」

「俺はねぇ、お前と違って家族も商会も大事にしてるんだよ!」

「嘘つくなよ。何かあれば、母さんを取るだろ」

「そりゃそうだけど! だけどねぇ、俺はちゃんと商会を守るよ。わかるか、ちゃんと二兎追いかけてんだよ」

「そのうち猛禽類にでも食われるな」

「おい!」


しれっとしたルシオに対し、父親はぐぬぬと唇を噛んでいる。

だが結局のところ、父親が今日はこれ以上は仕事をする気がないのは変わらない。


机の上を片付けた父親が「じゃ、明日な!」と鼻歌交じりで元気よく出ていくのを見送りながら、ルシオはため息をついた。

いつか自分も「今日のご飯はグラタンだぁ」等と言いながら、ウキウキ帰宅することになるのだろうか。

想像するだけで吐きそうになるな、とルシオは頭を振ったのだった。


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