第4話「王子の豹変」
計画通り私とシャロンは仲良くなりました。むしろ仲良くなりすぎなくらい。
まぁそのくらい私たちは意気投合しました。
今日はシャロンとオカ子と私の仲良し3人で中庭にあるテーブルを囲みながら甘いものを手に談笑を楽しんでいます。
「ううん! シャロンおすすめのショートケーキ本当に美味しい。生クリームがふわぁとろぉってお口に広がりますわ」
「このレアチーズケーキも甘さの中にほのかな酸味があってとても美味しい」
「ありがとうございます。学園外にある小さな喫茶店で見つけたケーキなので
お二人のお口に合うか心配でしたけど、喜んでいただけて嬉しいです」
「何を言っているのシャロン。甘いものの前では伯爵家も男爵家もむしろ平民も関係ありませんわ」
「甘いものがあればみんな平等」
「ルテナ様、キャロル様、ありがとうございます」
「シャロン言ったでしょ。私たちと一緒にいるときはルテナと“オカ子”だって」
「そうでした。ごめんなさい。ルテナ、オカ子」
「おーい。そこはキャロルでいいぞ」
「どうしてよ。オカ子はオカ子でしょ!」
「はぁ? 私のことを馬鹿にした呼び方しているのはルテナだけだけど」
「馬鹿にしているつもりはないわよ!」
「私、こう見えても公爵令嬢なので。はい、ルテナ不敬」
「はぁ! “甘いものの前では平等”はどこ言ったのよ!」
“楽しい”
こうやって甘いものを食べながらおしゃべりしている時間が。
私は結局、処刑される未来からは免れることはできなかった。
ティード王子の頬をあれだけ思い切り引っ叩いてしまったんだもの。
どうせ殺されるくらいなら残された時間を思いっきり3人で楽しもう。私はそう決めました。
「うーん! この紅茶も美味しいわね。これもシャロンが見つけたっていう喫茶店のかしら?」
「はい!」
「それなら良かったわオカ子の入れる紅茶なら何入っているかわからないから。迂闊に口をつけたものならもう大変」
「何を言っているのルテナ。ちょっと楽しいものが見れる葉っぱを混ぜてあげただけよ。ルテナずいぶん楽しそうにしていたじゃない」
「やっぱりアレは何かが混ぜていましたのね。オカ子」
「天然由来だから安心して」
「しないわよ!」
『ルテナ!』
ティード王子が私の名前を呼んでつかつかと私たちの方へ向かってきます。
きのう叩いてしまったティード王子の頬には私の手形がくっきりと⋯⋯
ついに来ましたのね。婚約破棄”からの“処刑宣告”がーー
「ティード王子どうかしまして。淑女の集いに殿方が割って入るなんて無礼ではなくて?」
「そんなことは承知の上だ。だけど俺はもう我慢できないんだ言わせてくれ!」
“ゴクリ”
「ルテナ!俺は今すぐお前と結婚したい」
「は?」
「その反応はなんだ?ルテナわからないのか!俺といますぐ結婚してくれ」
「ちょ、ちょっと待って!どういうことですか?私は王子であるあなたの頬を叩いたのですよ!
“婚約破棄“されるならともかくいますぐ結婚って⁉︎」
「だからだ!きのうルテナに叩かれた瞬間、君の姿が母上と重なった。そして確信したんだ。
ルテナならこの王国の王妃になれると!」
⁉︎ ええ〜
「はじめはルテナとの結婚に気乗りしなかった。どうせ国王が自分の権勢を保つために決めた勝手な結婚。
それに君の父上も裏がありそうでどこか信用できない。それゆえ、どこか君を愛せず、学園でもルテナを遠ざけて暮らしていた。
だけど君に叩かれて目が覚めたんだ。ルテナこそ俺が愛すべき女性だと!」
「ルテナおめでとうございます」
「よかったね。ルテナ」
「⋯⋯」
「ルテナさん?」
「オカ子⋯⋯ちょっと来て」
「どうしたのよ」
「いいから」
「ルテナ?」
***
「こわいこわい!なんなのよティードのアレ」
「ティード王子は熱しやすくて夢中になりやすいのよ。でもよかったじゃない。
願ったり叶ったりで。これでループは成功よ」
「私、嫌なの!」
「は?」
「見たでしょあの豹変!あの王子はこうだッ!って思い込んだら周りが見えなくなって自分を抑えられなくなるのよ。
だからシャロンに夢中になっていたときに平気で私を何回も殺せたのよ!
そう考えたら恐ろしくて一緒にいられないでしょ!この先、私の知らないところでまた別の女が現れたらまた殺そうとするわ!」
「ループを繰り返して何度も殺されるあまり王子への愛が冷めてしまったか⋯⋯」
「逃げましょう!3人で。どこか遠くへ行って幸せに暮らすの」
「ほら落ち着いて。いまだけなら抱きついていいから」
「オカ子⋯⋯」
「泣かない泣かない。ルテナも王子のことを好きになった時のことを思い出すの」
「うん。はっきりと覚えている。8歳のころ父上が勝手に決めてきた結婚だからお母様ともう反対したの。
だけどはじめての顔あわせの場で、ティード王子の顔を一目見た瞬間、輝くような精悍な顔つきに私とお母様の
心は一瞬で射抜かれたの」
「めちゃくちゃ浅いわね。ティード王子への愛」
「なんとかしてオカ子」
「困ったなぁ。ルテナとティード王子が結婚しないと王国もいろいろと揉めごとになりそうだし⋯⋯
そうだ!ルテナ、妃になったら私とシャロンをメイドに雇いなさいよ」
「メイド? オカ子とシャロンを?」
「なんなら王宮専属魔道士でもいいわよ」
「ちゃっかりしてるわね」
「とにかく、私たちがルテナのそばにいたら安心でしょ? 学園を卒業してもずーっと一緒」
「そうか!やっぱ持つべきはオカ子だッ!」
「それじゃあシャロンとティード王子のところに戻りましょう」
***
「!戻ってきましたわ」
「ルテナーッ!」
ティード王子が人目もはばからず私に手を振っている⋯⋯
「す、すいません。急なことで私も戸惑ってしまって恥ずかしい。
考えれば婚約者なんだから自然のこと。ティード王子、私、喜んで⋯⋯」
「見つけたぞシャロンッ!」
「お父様!」
つづく
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