第3話「見参!悪役令嬢は戦う」
「シャロンと仲良くなるなら、王子より先にシャロンと出会って仲良くなる必要があるわ」
「ねぇオカ子。それはわかるのだけどどうして私たち草むらの中に隠れる必要あるの」
「この人気のない広場はシャロンが図書室の仕事帰りによく通るコースなの。
とにかくここに身を潜めてチャンスをうかがう必要があるわ」
「だとしても服が汚れちゃう」
「しッ!」
「な、なに?」
「ティード王子よ」
ティード王子が私たちが隠れている草むらを横切っていく。
「どうしてティード様がここに?」
「ティード王子もここを散歩コースにしてるのよ」
「オカ子やたら詳しいわね。どうやって調べたの?」
「9回もループしてると嫌でも詳しくなるわよ。それに5回目あたりからどうやったらルテナがうまくいくか
私なりに調べていたのよ」
「やっぱり持つべきはオカ子だぁ」
「いちいち泣かない。それに2人はここで出会って運命の恋に落ちたのよ」
「それはマズいじゃない!」
「しかもそれが今日、この時間よ」
「って本当にマズいじゃない」
「来たわよ。シャロンだわ」
「わぁあああ! 本当に来ちゃった」
「私はティード王子の方をなんとかしてくるから。ルテナはシャロンと仲良くなってきて! 健闘を祈る」
そう言ってオカ子がものすごい勢いで草むらから飛び出して行った。
「ちょっと待ってオカ子!ひとりにしないでッ!」
「あっ!さっきの方」
み、見つかった⋯⋯
「どうして草むらの中から⋯⋯」
思わずまた草むらの中に隠れてしまった⋯⋯恥ずかしい⋯⋯
⁉︎ 人の気配?
『見つけたわよ。貧乏人のシャロン』
「サラさんにリーナさん、それにローリィさん」
「あ?貧乏人。様だろ。馴れ馴れしくするな」
目つき悪ッ⁉︎
なんなのあの令嬢3人は? しかも言葉づかいもあまりよろしくありませんわ。
「聞いたわよシャロン。あなたのお父様、事業に失敗してお金無くなっちゃったんですってね」
「結局、成り上がり男爵様なんてこんなものねぇ。貴族の間じゃあずいぶんと嫌われてましたもんねぇ。まったくざまぁですわ」
は、は〜ん。これは取り巻き令嬢たちお得意の“手のひら返し“ですわね”
私もよく使うからわかります。
「みなさんどうしてそのようにひどいことをおっしゃるのですか。今朝まで一緒に朝食を食べたり化粧品の貸し借りしたじゃないですか」
「あんなのもういらない。貧乏がうつるわ」
「言っとくけどね。別に私たちあなたと仲良くなりたくて一緒に遊んであげたわけじゃないの!
私たちの家族があなたのお父様の融資で事業をしていましたから、致し方なくあなたに付き合ってあげていただけのこと。
そうじゃなかったらあなたのような貧乏くさい女と仲良くするわけありませんわ」
「もったいないって言ってマニキュアすらちょっとずつ使うとこなんか本当、貧乏丸出しでゾーッとしましたわ」
「やっぱり成り上がりだから平民だったころのクセが抜けてないのよ」
「所詮、成り上がりなんて貴族の皮を被った平民。もうその皮も破れちゃったからまた平民ね」
「「「オーホッホッ」」」
うわっ本当こういうときの貴族令嬢って下品ですわね。
私も彼女たちと同じ立場なら同じことをしていたかもしれませんけど⋯⋯
だけどいまはーー
『ちょっと待ったーッ!』
「な、なに」
「だれあなた?」
「相手の弱みを見つけるとよってたかって上から罵るのは貴族の悪いクセ!」
「な、なんなのよあなた。いきなり」
「さきほどの方⋯⋯」
「シャロンは下がっていて。ここは私に任せて」
「は、はい⋯⋯」
カッコつけて飛び出してきちゃったけどどうしよう。
うわぁ3人めっちゃ私のこと睨んできてるぅ〜
“!”
なにいま? からだ発光したような。
そうかこれはオカ子がかけてくれた動揺を落ち着かせてくれる魔力ね。
「あなたたちのこの子に対する言い方、聞き捨てならないわね」
「なによ。あんたは関係ないじゃない引っ込んでなさいよ」
「は? なにか言いまして」
「ひっ! 目つき悪ッ!」
「おいサラちょっと待て」
「ここで引き下がれってのリーナ」
「よく見ろ。あの方、公爵令嬢のルテナ・ウォード様だぞ」
「ウソッ! ティード王子の婚約者の⁉︎ 目つきが悪すぎて気づかなかった」
「あらいまごろ気づいたからなんなの?」
「ご、ごきげんよう。ルテナさま⋯⋯いいお天気ですね⋯⋯」
「もう夕方だけど」
「ひっ!」
「あなたたち、他人への罵り方もなっていませんでしたね。貴族令嬢としてこの先、どんな財界の方とお付き合いするかわかりません。
そのための相手への嫌味や罵言も貴族令嬢には必要なスキルです。あなたたちにも聞かせてあげてあげましょう本当の罵言を」
このあと聞くに耐えない言葉をめちゃくちゃ吐きました。
「「「ひぃぃイイ」」」
「あ、ありがとうございます。る、ルテナ様。さきほどは公爵令嬢様と知らず失礼いたしました」
「そ、そんな頭をあげて。そうだ! あそこのベンチで少しお話しましょう」
***
「そういうわけでいまの父のおかげでこの学園にも通うことできました。
だけどやっぱりわたしは本物の令嬢とは違ったのですね。平民がいくらお嬢様らしくても平民は平民」
シャロンの過去についてはオカ子から聞かされていた。
シャロンは幼い頃、王都でも有名な商人の家で生まれた。
だけど、お父様が若くしてお亡くなりになり、残された母娘は事業を継いだドラーグ・ハワードに引き取られた。
ドラーグは悪どい商売で事業拡大し巨万の富を得て平民ながら男爵の地位を授かった。
ドラーグ男爵の資金力は凄まじく、領地が飢饉に喘いでいるよ男爵家や子爵家などに資金を工面して支援を行い
そのため、ドラーグ男爵に頭が上がらない貴族が続出。
社交界でも傲慢な振る舞いから悪評は高く、貴族の間でも成り上がり者と裏では陰口を叩いていた。
それゆえ、ドラーグ男爵が落ちぶれたと知って、さきほどの令嬢たちのように手のひらを返すものが出たというわけだ。
にしても、なにこの娘めっちゃ話すんだけど!
ちょっと大人しい感じだから口数少ないかと思っていたらめっちゃ喋る。
さっきからずっと!
「クスッ」
「⁉︎ ルテナ様、失礼致しました。わたし、初対面のルテナ様に身の上話をずっと喋るなんてはしたない。
だから先ほどのように平民だと馬鹿にされるのですね」
「いいのよ。シャロンも心の底から話せる友人がいなかったのね。さっきの3人じゃ。心の内なんてさらけ出せない。
私にもひとりいるのよ“オカ子”って言ってね。なんでも話せる友人がーー」
アレ? なんだか私たち仲良くなっている?
気づいたらオカ子も向こうの草むらの陰で拳をグッと握って頷いている。
これはうまくいった?
これで私、もう処刑されなくて済む!
⁉︎ オカ子、どうしたの? 急に慌てて⋯⋯
何? あっちを見ろ?
⁉︎
『ルテナ!』
ティード⁉︎
「ど、どうしてここに?」
「どうしてじゃない。さきほど俺の方に泣きながら走ってきた令嬢たちに聞いた。
ルテナはあの令嬢たちを口汚く罵ったそうじゃないか? ルテナお前は将来、妃になるんだ。
そんなはしたないようじゃ、妃の器ではーー」
“バチん”
咄嗟のことでした。
気づいたら私はティードの頬を引っ叩いておりました。
「器じゃないのはお前の方だ! 私は弱みに漬け込んで友人に手のひらを返す愚か者の令嬢たちに
淑女のなんたるかを教えただけだ。ティードあなたこそ真に傷ついた者を見定めることができずに
どうやって王様が務まるというの! あなたこそあの卑怯者たちの前でいい格好した
王子様を見せつけている暇があったら人を見る目を養いなさい!」
あーあ、やってしまった⋯⋯
こりゃあ処刑だな⋯⋯
つづく
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