解答編
ラストになります。
お付き合いくださってありがとうございます。
もはや考察するまでもない。可能性を考慮するまでもない。これが真実なのだ…………。
俺がこの読めない本の『答え』をとうに導き出している。そう彼女に知らしめるには十分すぎる問い掛けだったのだ。
もしかしたら、まだ核心には至っていないかも……。そんな彼女の淡い期待を打ち砕くにはこの一言は力を持ちすぎていた。あの動揺は明らかに『敗北』を察してのものだった。
「始めよう」
俺はそう短く言って、目の前のハードカバー本の位置を正した。
「本当に、よろしいですね?」
彼女は最後の警告だ、とも言いたげに重々しく俺に言ってみせた。
「ここでリタイアすることも可能ですが……」
「始めてくれ」
気圧されてはいけない。彼女の声を遮るように、俺は力強く応じた。
「分かりました……。それでは、『用意、始め』を合図に始めます」
既に、彼女に目線を向けてなどいなかった。あぐらをかきながら、背筋を伸ばし、ただ単色の厚い表紙を見据える。
「用意…………」
全てはハッタリだった…………。先ほど設けられていた5つの質問タイムも、『攻略のヒントにする』ためのものなどではなく、『攻略不能の事実を叩きつけ、踏みとどまらせる』ためのものだったのだ。だが、生憎だったな。
俺は、頭がよかったのだ!!!!
「始め!」
その瞬間、最後の問答が脳内に反芻する。
『過去に、このゲームに参加した人数を教えてくれ』
『このゲームに過去に参加した方は、一人もございません』
この答えを聞ければ、もう何もかもが十分過ぎるだろ? 何のことは無い。答えは最初の説明の時点で分かっていたんだ。
『今までその本を読むことができた者はいません』
そう。この『読めない本』のトリックは、過去にこの本を読んだ者がいなかった!
それだけのことなんだよ!!
◆
「始め!」
私はそう短く声をあげると、ポケットに忍ばせたリモコンに指をかけ、コンクリ固めの部屋を消灯した。
ということで完結でございます。予想通りのオチでしたか?もしかしたら色々と思うところはあるかもしれません。しかし本作ではこれを一つの答えとし、完結とさせていただきます。
こういう可能性もあるんじゃないか!? この聞き方の方が効率よくないか!?
みたいなダメ出しがありましたらどしどしお寄せください。
そして完結してなお、考えを膨らませることで、拙作をさらに楽しんでいただけることになるのではないかと期待しております。
ありがとうございました。