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三月羅針譚~盾持ちと吸血鬼~  作者: FOXtale
二章 ■■にあつまれ
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守れ、少女を

どうも、作者です。六十二話です。

エフィにアイカのことは任せて、俺は二人を守るのに専念する。とはいえ、敵は目の前の奴だけじゃない。他にも三人、いや一人さっきの突撃で気絶してるから二人だな。とはいえ、流石に全員はきついな。


前にいるリーダー格だけでもきつい。やはり、俺じゃ倒しきれなさそうだが……


(クラン、ハイカさんは!?)


(まだ半分くらいじゃ)


いや、半分!? まだ二分足らずだぞ!? 少し驚いていると、次の一撃が来る。くっ、耐えきれるか! 連撃、正直一発でもきついが、防ぐだけならどうにかできる。腕に響く衝撃で、折れそうだが。


「ちっ! 全員、後ろの女を狙え! 盾を持った男は俺が殺す!」


敵が苛立っているせいか、攻撃が単調なのは助かるが……くっ、周りの敵の攻撃が、アイカ達を襲う。挟み撃ち、両方を防ぐのはきつい、それでも、アイカ達を守れ。


『縛れ』

魔鎖(チェーン)


左の敵の足を鎖で縛る。鎖を持ったまま右側の敵の目の前に移動し、右手の盾でガードする。左の敵は俺が移動したことで、鎖が引っ張られ転倒する。


「隙だらけだ!」


やっぱり、俺狙いだ。リーダーの男は、どうも俺に憎悪の感情を剝き出しにしている。いや、さっき眷属と言っていたから、厳密には、赤月の女神に、だろうが。


だが、俺を狙う分には構わない。それに、やっぱり動きが単調だ。敵はまっすぐ、俺に剣を振り上げながら向かってくる。


それを、左の籠手でガードする。本来なら、そのまま腕ごと切り裂かれていただろうが、この籠手は特別製、一切の変化をしない。それゆえ、剣は籠手によって横にそれる。だが、剣の衝撃は直に腕に伝う。骨の軋む音がして、そのまま衝撃が裂けるような痛みとして体全体に伝わる。


「イズミさん! その人だけに集中してください!」


エフィの声、俺は横目でその顔を見る。いつもの弱気な目がどこかにいっている……そうだな、信じよう。今は、強がっている余裕はない。


「頼んだ!」


俺は籠手の硬さに動揺している相手の手首をつかむ。今、一番にやらなければいけないのは、こいつらを分断すること、現状リーダー格は余裕がないが、多分、今逃げても追いつかれる。


なら、こいつをアイカ達から、離す!


何より、室内では少し、狭すぎるからな――俺はそのまま、その手首から相手の身体を持ち上げて、全力で投げた。


敵が吹っ飛ぶ、やっぱり、重量軽減は人間にも効く。つまり、通常なら七、八十キロはあるであろう男を、俺であれば八キロぐらいの感覚で投げられる。


そこに、職業によるステータスの増加で、相手はかなりの飛距離を飛ぶことになった。俺はそれを追いかける。


「エフィ! 頼んだ!」


「はい!」


アイカのことは、エフィに任せるしかない。今は、敵に集中する。


相手に追い付く。敵は道のはさんだ先の建物に衝突したようで、建物には、その衝突跡が見える。相手はそこから落ちて、道に投げ出されたらしい。


「すまんな、投げすぎたか?」


「お前ぇ!」


「一つ聞くが……なんでそこまで赤月の女神を敵視する?」


明らかな未来さんへの憎悪、いくらなんでも過剰すぎる気がする。


「そんなもの! 我らが女神の崇高な目的を! 幾度となく邪魔してきたからだ! あの女神がいなければ、この世界はもっと良くなっていた!」


ふむ、”女神たちの戦い”、だったか。最初にあった時に言っていたな。多分それのことだ。だが、


「まだ、赤月の女神の目的も聞いていないのに、崇高だの言われてもな」


そうだ、争っているということは、青月と赤月の目的は衝突するものなんだろうが、こいつは赤月の女神の目的を聞いていないのに、なぜそう言えるのか。まぁ、俺も聞いてないんだが。


「黙れェ!」


「ラウンドツー、ってやつだ」


戦いは、ギルド街特有の大きな街道に移されて続く。



――泉さんに”頼まれた”。だったら、やり通さなきゃいけない。


「ア、アイカさん、ぼ、僕から離れないでください!」


「うん、お願いします! エフィさん!」


アイカちゃん、勇者の娘……魔王である僕が勇者の娘を守るだなんて、なんだかおかしな話な気もするけど、きっとそんなのは関係ない。今はただ、彼女を守るんだ。


敵は様子をうかがっている。今の僕は魔王じゃない、一介の冒険者だし、まだまだステータスは低いけど……いけるかな……? いや、弱気になっちゃだめだ! そうだ、戦う時は常にスイッチを入れろ……敵を倒すことだけ考えろ自分、得意分野だろ?


『我が声に応えて顕現せよ、かの剣ども』

『双魔剣』


僕は二振りの魔剣を生み出す。


「なんだ? その魔法は?」


敵のつぶやきが聞こえる。魔剣魔法……前時代の魔王が作り出した、ただ魔力でできた剣を生み出す魔法。彼の王の、唯一の財産。魔族にしか伝わってないから、使ったらバレるかなと思ったんだけど……。


「あ、魔剣魔法でしょ! すごく前に流行ったっていう」


あ、アイカちゃんは知ってるんだ……え? すごく前、今は使われてないの!? ショック……いや、今は倒すことだけに集中しろ自分!


「こ、こい! この子は、殺させない!」


敵が襲い掛かる! 僕はスイッチを切り替えた。考えなくていい……対人戦は散々、やらされたから……。


右の敵が先に襲い掛かる。僕は左手の魔剣を敵に投げつける。双魔剣は、本当に変哲のない剣だ。だが、一つだけ違う部分もある。それは、投げた魔剣に向けて魔力を向ければ、加速する特性がある。


「な!?」


敵は投げられた魔剣を剣でいなそうとするが、加速した剣には間に合わない。そのまま、手首を持っていく。戦うことだけ考えろ、容赦は……考えるな。


左からも襲う敵を泉さんに付けられた『魔鎖』をやっと外し終えた敵は味方がやられて近づくのは危険と思ったのか、魔法を使おうとする。


『我が声に応えろ、狩りする黒犬』

『魔剣ブラックドッグ』


今度は短刀型の黒い魔剣があらわれる。魔剣ブラックドッグ、その性質は魔力の追尾、その短刀を敵の魔法が完成する前に投擲、避けようとするが、完成直前の魔法におびき寄せられて、魔剣は対象を追従する。


敵のわき腹に命中。詠唱は乱れて、魔法は完成することはなかった。


「……つ、強い」


誰かの、つぶやきが聞こえたが、今はその意味が分からなかった。ただ、追加で来る敵にだけ、集中していたから。



敵の突進、その一撃をもう一度盾でガード。く! やっぱり近くに守る対象がいないと防御力が落ちる。それでも、あそこにいるよりはましだ。エフィが上手くやってくれてるといいが。


あっちのことを考えている暇はないか……とにかく、ハイカさんがたどり着くまで、耐える!


今度は下からの振り下ろし、盾を下に……フェイント! どうにか、後ろに跳び退る。盾を避けて現れた剣に二の腕が切り裂かれる。


どうも、段々相手の思考が冷静になってきたな。まずいな、このままじゃ、死ぬ。


「顔を狙ったつもりだったが……なんだ?」


相手は再生されていく俺の右腕を見て怪訝な表情をする。


「再生系のスキルか……面倒だな」


相手がもう一度俺に攻撃しようと、狙ってくる。だめだ、ガードするだけじゃやられる……俺はその攻撃から目を離さないように、バック走。


「逃げる気か!」


いや、そういう訳じゃないが……速度はほぼ同等、いや相手の方が少し速い、後ろ向きに走っているのもあって段々追いつかれる。


相手の剣が俺を捉える。その瞬間に合わせて、俺は走りを止め、相手に向かって突進、剣と盾の一撃は拮抗して、互いに弾き飛ばされる。九十キロの盾を使った突進で、やっと拮抗……やっぱりきついな。


――そんな攻防を、何度か繰り返す。やはりすべては防ぎきれず、俺の身体はあちこちに傷ができている。盾で守り切れない分はあえて腕やら腹やらをあえて貫かせた。致命傷だけ避ければ、俺の身体は動く。問題はない。


とはいえ……そろそろ、まずいかもしれない。何とか、足は守り切ったが……


(泉! ハイカ殿による殲滅、完了した!)


!! 来たか!


敵の攻撃がもう一度来る。これだけはうまくやれ、自分! 敵の攻撃に合わせる。フェイントか? そのまま来るか? この二択だけは、外すな……フェイントだ!


「――いいえ、そのまま来ます!」


! その声に合わせて、俺は盾をまっすぐ相手に向けて、振る。敵の攻撃は、それに弾かれる。


はぁ――後は頼んだぞ、ヒビキさん、クラン!


『『交換(チェンジ)!』』



盾野郎がその場から消え、代わりにそこには女が立っていた。しかもさっきの声、もう一人現れた。こいつらは、あの時、盾野郎といた奴らか。


「さて、ここからは少しだけ」


「わしらが相手しよう、”らうんどすりー”というやつじゃ」


ちっ、面倒だが、殺すのみ。

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