執行・疾走・無双
どうも、作者です。六十一話です。
さて、エフィさんが魔法を発動させましたね。なら、こちらも始めるとしましょうか。
『示せ、影の点』
『命令点』
『命令点』、魔力で付けたマーカーを味方にだけ見える魔力の柱として生成する魔法。数に制限はない使い勝手のいい魔法だ。
私はこれを昼の間に、できる限りすべての”洗脳冒険者”にマーカーをつけた。やはりフィールドワークは重要だ。得られる情報量が桁違いなのだから。一応、相手の手先の人間にもつけたがすべてではないだろう。
私は、マーカーを倒してほしい順に起動していく必要がある。しかも、追われながら。私を追っている彼らから、ハイカさんに倒してもらった方が負担は減るが……まぁ、まずは、イズミさんと同方向に向かおうとしてる人たちからですね。
――私は、ギルド本館から、街を見下ろす。どうして、敵の監視が多いであろう、ギルド本館なのだろうかと思ったが、”街の中心”であること、”防衛機構”があることからの二点だったのか。ヒビキさんはやはり、合理的な人だ。
魔力の奔流を感じる。これが開始の合図、そして、それとほぼ同時、今度は光の柱が見える。あれは、コマンダーの魔法だ。つまり、ヒビキさんのもの、あそこから倒せということですか。
「じゃ、後で合流じゃ」
クランさんは別の仕事があるようで、ここで別れるらしい。ですが、まぁどのみち、”追いつけない”でしょうから仕方ありませんね。
私はギルドから飛び降りて、屋根に向かう。さて、やりましょうか。
――俺、なんで外の街を歩いているんだっけ? 確か、休もうと思って、宿に帰るところだったはずだが……いや、”命令”されたんだった。だからこうして、あの冒険者を監視して……そうだ、”報告”しなきゃ、あの盾を持った冒険者が消えたから……
そんなことを考えていたら、上から大きな影が降ってくる。あれは……鎧?
「手加減は――できるだけしますね?」
は? 鎧が向かってくる。一体何が――。
――約三百メートルの移動に二秒、着地に一秒、散らばっていた洗脳冒険者十二名の処理に八秒、計十一秒、少しかかりすぎですね。やはり、久々では衰えていますか。ですが、ここからボルテージを上げていきましょう。
私が倒したのを察知したのか、次の柱が現れる。私は、少しだけ助走し、上に跳ぶ、途中、壁のとっかかりを掴みつつ、屋根まで上がり、次の地点へと向かう。
少しばかり、ダンジョン街そのものにそれなりの損害が出るだろうが――問題はない。責任は取りましょう。
柱が示す冒険者を見つける。私は先ほどと同じように、愛用していた剣の鞘で冒険者たちを”軽く”小突く。洗脳されていない冒険者たちもいますが、後で説明が面倒ですね。ついでに小突き……ふむ、これ剣で殴るより、拳の方が速いですね。
「すみません、寝ててください」
私は痛みが極力出ないように一瞬で気絶させる。十五人の処理に六秒、大丈夫、かなり動きに余裕ができてきた。とはいえ、ここまで、合計二十一秒、時間が、ない。
もうすぐレベルダウンが始まる。そうなったら、処理も移動ももっと時間がかかる。あと、何か所だ。いえ、何か所でも、すぐに終わらせる。
次だ、うん?
「お前は――『騎士』! お前の妹は――!?」
知ってますよ、誘拐されていることくらい、相手は衛兵、洗脳冒険者よりはやるようだが――関係ないですね。精々Lv.50程度でしょう。その程度なら、問題ない。
敵は刃を引き抜こうとする。流石に対人を理解しているようですが、まだ重心の位置が甘いですね。時間があれば剣で相手したのですが、時間がない。
――相手が剣を引き抜いたころには、私はもう相手の後ろを走っていた。というか、多分剣は抜けていないでしょう。
とはいえ、今ので合計四十秒。流石に数が多いですね。というか、一体何人の洗脳冒険者がいるでしょうか? ダンジョン街には、数千を超える冒険者がいますが……これはかなりやられていますね。
はぁ、どうやってこの数の冒険者を洗脳したんでしょうか……。というか、いつの間に虫が入ったのやら、そこの原因の洗い出しも必要ですね。
次の相手が見える。数は少ないですが……今度は洗脳冒険者じゃなく、全員敵の兵士ですが……面倒ですが、今度は剣の方が良さそうですね。何より、相手はもう武器を構えている。ですが、もう四十八秒、
「全員、散開、囲め!」
散開されると面倒ですね。やるなら、散開しきる前ですか。しっかり警戒しながら動いているのは敵ながら統率が取れている。
だが、まだ甘い。動きはもっと統一した方がいい……でなければ、一番やりやすい人があらわれてしまい、そこが穴になる。
兵士は面倒だが、一つだけいい点がある――加減がいらないことだ。私は、抜き身の刃で相手の首を狩り、その勢いのまま一番近くの敵に剣を向け、そのまま切りつける。四十九秒。
今度、一番近いのは、指示を出した男。一歩でその相手の元まで向かい、頭を掴み、投擲、命中はもう確定しているので、振り返る必要はない。五十三秒。
その間に相手は散開しきっている。しかし、動揺しているのがバレバレだし、私が倒した分の穴がふさがっていない。まぁ、四人分を一秒足らずで埋めるのは、流石に厳しいでしょうが。
『撃て』
『魔弾』
魔力でできた弾丸が前方の敵の頭を穿つ。確認しきる前に左右の敵二人の挟み撃ちの攻撃、私は片方を避け、片方を剣で受ける。受けた方の人間の身体に剣を押し込み、もう片方に膝で顔面を強打。あと一人、しかし、五十八秒。
「くっ!」
すぐに私は敵へ向かい、相手はその一撃を避けようと動く。本来なら当たるのだが――六十秒、レベルダウンによる性能低下が体を襲い、剣の動きは歪なものとなる。
相手は避けられたことに驚愕している。しかし、安堵感を顔に出すのは良くない、その間に首と体を分けられる。
大丈夫、今の一撃、動きは修正する。だが、移動速度はどうしても低下してしまうな。それでも、やり切るしかないか――
――俺はその盾で敵の一撃を防ぐ。しかし、すさまじい衝撃が体を襲う。やはり、”レベル差”と”職業”はどうしようもないな。
「お前は――”眷属”の!」
やはり、相手は俺のことを知っていた。ヒビキさんの読みはすさまじいな。
「泉さん! その人、変な魔法使って操ろうとしてくるから気を付けて!」
! つまりこいつがリーダーか!
「エフィ、アイカを頼む!」
「わ、わかりました!」
これは……大変な戦いになりそうだ。
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