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三月羅針譚~盾持ちと吸血鬼~  作者: FOXtale
二章 ■■にあつまれ
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騒乱前夢

どうも、作者です。五十四話です。

「ふ~、まさか勉強に付き合わされるとはのう」


今日は、クエストを終えた後、エフィの勉強会に付き合っていた。昨日言えなかった(アメイの家に戻ったらそろいもそろって酔っていた)情報共有もできたから良かった。


しかし、依頼の処理の時にアイカに会えなかったな。まぁ、資料館に荷物を届けていただけらしいし、問題はないだろうが。


それに、それ自体は珍しくない。アイカが書類仕事なんかで裏にこもっているなんてことはしょっちゅうだし。


「冒険者の勉強、意外に多いな」


「ほとんどの冒険者はやらんがのう」


まぁ、そうだろうな。ほとんどは文字が読めなかったりする荒くれ者がばかりだし、勉強などせず、流れで覚えるものが多いだろう。


今日は、冒険者のランク制度の基準だったり、冒険者のジョブの話だったりと色々だった。


「そういえば、SSランク冒険者って知ってるか?」


SSランク冒険者、昨日ヒビキさんに話してもらったことだ。


「知っておるに決まっておろう! 全冒険者の憧れじゃからのう!」


やっぱりそうなのか。名実ともに最強の冒険者、憧れないはずがないか。


「何じゃ、SSランク冒険者について知りたいのか?」


「まぁな。気になるだろ」


クランはそれにうなずく。俺はまだこの世界のことを何でも知っているわけじゃないし、常識に疎かったりするからな。


「うむ、なら語ってやろう! SSランク冒険者について!」


クランは冒険者情報について、かなり勉強していたようだし、期待できそうだ。


「わしが知る限り、現在のSSランク冒険者は七人! 『騎士』レイド、『灰氷』イサム、『迷宮の覇者』グラム、この三人はアタッカーじゃ! 三人ともめちゃくちゃ強いらしいぞ! SSランクは全員そうじゃが」


まぁ、聞いただけで強そうなのが分かる。それにしても、冒険者なのに、『騎士』なんて称号が渡される人間がいるのか。でも、一番は『迷宮の覇者』だな、なんかかっこいい。


「そして、『支援者』エリシア、『調教師』アグルス、『小賢者』アルデ、『神出鬼没』シルクハット、じゃな。順番に、前二人がバトルサポーター、そして、キャスター、クイックサポーターじゃ」


なるほど……シルクハットって……あのシルクハットか? 他はまぁ分かる名前だが、一つだけおかしくないか。いや、異世界の名前だからなぁ。なんとも言えない。


「この中だったら、誰が強いんだ?」


「やはり、『騎士』か『灰氷』かのう! 最強のアタッカーと名高い! 二人とも卓越した技術と圧倒的なステータスを持っているらしいぞ。じゃが、迷宮攻略なら『迷宮の覇者』じゃし、集団戦なら『支援者』、難しいのう」


やっぱり、各々それぞれの得意分野があるのか。確かに、七人とも、ポジションはばらばらだしな。アタッカーはともかくとして……まて、七人?


「俺がヒビキさんが聞いた話だと、六人だったはずだぞ?」


確か、あの時ヒビキさんは、今のSSランク冒険者は六人だと言っていた。一人多い。


「何じゃ? うーむ……わしも最後に聞いたのは、三年前じゃから、その間に誰か引退したか?」


三年前、微妙に古いな……。だが、それだけの年月があれば誰か引退していてもおかしくないか。


「明日、ヒビキさんに聞いてみようか」


「そうじゃの」


まぁ、アメイでもいいが……どちらでもいいか。二人とも詳しそうだし。


それにしても、タンクとヒーラーのSSランク冒険者はいないのか……ちょっと残念なような……。


「何、わしらがなれば良いじゃろ」


「それもそうか……」


最強の盾、最強の治癒師、そうなるのも悪くはないな。


眠気はピークに達していた。そろそろ寝るか……というか、瞼はもう重い……




「――泉さん、聞こえますか?」


ん? ここは、何もない空間、この感じは……未来さんか?


「はい、私です」


久々……でもないか。あれからまだ一週間くらいだし。今日は俺の旅の話でも聞きに来たのか?


「そうしたいのは山々なんですが……それどころではないかもしれません」


……どういうことだ?


「アイカさんが、誘拐されたかもしれません。いえ、もうすでにされているかも」


アイカが誘拐された? なんで、いや……あの例の奴らか。


「泉さんはさらった相手が分かるんですか?」


ああ、今ギルドに嫌がらせしている連中だろう。冒険者を薬か、それとも別の方法かわからないけど、洗脳してるやつらがいる。知らなかったのか?


「……すみませぇん、私、月が出ていない間の情報はうまく取れなくて……」


あぁ、あの赤い月が出ていないと地上の観測ができないのか……。


「はい、他の女神ならできるのに……私のダメなところです……」


いや、まぁ得意不得意はあるよ、うん。それで、アイカが攫われたかもしれない、ってどういうことだ。


「そうですね。前にも、というか今も未来さんと呼称していただいていますが、私、未来視ができるのですが……」


それでアイカが攫われる未来が見えた、と? でも、それならなんで、もう攫われてるかもなんだ?


「実は私の未来視、勝手に発動する上、見た時点の未来で、正確ないつ、どこで、なのかが分かりません。その上、あくまで起こる確率が高い未来なんですが……とにかく、この未来が見えたのは、今朝ぐらいです。厳密には、泉さんが前回起きた後、です」


なるほど……つまり、今日俺が依頼を受けている間に攫われた可能性もあるのか……というか、その未来視。


「言わないでください! すっごく使いにくいのは分かっているんです! しかも、伝えられるのは眷属が寝ている間だけ! だから、タイミングも遅くなりがち! 分かっているんです!」


すまん……そこまで気にしてたのか。


「いえ、こちらこそ、すみません。取り乱してしまって」


だが、アイカが攫われた、か。ということは、ギルドは……。


「人質を取られる、もしくはもう取られているはずです」


となると、ギルドは……。


「今、動けない可能性もあるかと。ですが、少なくとも夜の間は何もありませんでした」


なら、昼に攫われた可能性もあるし、明日かもしれない、か。そこは、明日聞いてみた方がいいか。


「……それも危険かもしれません。もし、もし私の忠告が遅く、もう攫われている場合、ギルド側は冒険者に口外できないようにしている可能性があります……例えば冒険者に事情を話した時点で殺す……などですね」


そんな可能性があるのか……。いや、そうか、ギルドが使える一番の戦力は冒険者だもんな。それを使えなくする、か。だが、そんな簡単に殺すのか?


「ギルドにとって、身内の存在は何より優先されるべき財産です。だからこそ、ギルド職員を誘拐するというのは、こういったギルド管轄の土地では、かなり効きます」


なるほどな、しかも今回の場合、ギルマス代理かつ、多分最大戦力のハイカさんの妹、か。


「はい、それだけの有効打です。この情報を渡してしまった私が言うのもあれですが、ギルドに直接聞くのは危険かと……それに、洗脳された冒険者がいるのですよね?」


そうか……どこに監視の目があるかわからない……これ、かなりまずいな。


「すみません、私じゃあまり力になれず」


いや、アイカの情報が分かっただけでも、ありがたい……ちなみに、アイカの位置は分かるか?


「すみません、それすらわかりません。少なくとも、私が監視できる、外にはいない、というだけです」


これは、なんだか違和感がある。でもそれすらわからん。だめだ、これ、俺とクランだけで解決できる問題か?


「……泉さん、この前、私は貴方に私の眷属であることを言わないよう言いましたね?」


そうだな。


「それを……解きましょう。パーティメンバーの皆さんに、それを明かしてください。そうすれば、」


今回の情報が共有できる。


「はい、竜人のヒビキ、そして私の眷属……ではないのですが、魔王のエフィ君、そしてアメイ、彼らの力が得られるなら、かなりの力になってくれるはずです」


何より、どこに監視があるかわからないし、誰が洗脳されているかわからない中、信用できるのは、それくらい……か。


つまり、これは、もしアイカが攫われている場合。


「たった五人で、言え貴方達五人で解決することになると思います」


これは、厳しい戦いになるな……。もし、救えなかったなら、アイカどころか……ギルドさえ。


「私もバックアップをしますね。どこまで助力になるか分かりませんが……」


いや、いてくれるだけでも助かるよ。それに、アイカは、絶対に守る。


「お願いします……”守る者”」


ああ、未来さん、ありがとう。無事でいてくれよ……アイカ。

読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字報告・コメントお気軽にどうぞ。

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