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三月羅針譚~盾持ちと吸血鬼~  作者: FOXtale
一章 始まりの■■
20/57

かがり火の休息

どうも、作者です。二十話です。

「それで、お主たち、自力で帰れるのか?」


ダンジョンで救出したパーティたちは、クランの適切な処置もあって全員回復していた。気絶していたパーティメンバーも起きていた。


「あぁ、一階層なら、もう何度も探索してる。補給なしでも大丈夫だ」


だが、それでも不安は残る。回復したとはいえ、それでもやられてから間もない。


「問題はねぇだろ、一階層の主要ルートは俺たちが軒並み魔獣を討伐しちまったし、罠も解除してある。寄り道しなければ、正直楽勝だ」


なるほど、それなら問題はないか。


「......正直、助かったよ。すまなかった」


俺たちがそんな風に議論していると、クランに説教されていたパーティのリーダーは、素直に頭を下げる。それに合わせて、後ろにいたパーティメンバーも頭を下げた。


「ふん、もうこんなことを起こさぬように、次からは腕の確かなヒーラーを味方に引き入れるがよい! でなければ……次は本当に死ぬぞ」


クランは、本気で忠告をした。正直、ここまで真面目なクランを見たのは本当に初めてかもしれない。


「......ああ、そうするよ。俺は自分も、仲間も死なせたくない」


「ああ、そうするがよい。それと、助けられた時は、謝罪ではなく、礼をすべきじゃ。そっちの方が、助ける方も快い」


クランは、いつものような大笑いではなく、慈愛の笑みでそう言う。


「......ああ、ありがとう」


俺たちは、アメイの先導で、一階層への階段まで救助したパーティを送ることにした。先ほど魔獣をかなりの数倒したおかげか、道中で敵に遭遇することはなかった。


「それじゃ、ありがとな」


「うむ、戻ってからも医者にかかるがよい」


そう言って、冒険者たちと別れた。とにかく、死傷者が出なかったのは幸いだったな。




俺たちは、冒険者たちと別れた後、二階層の探索に移ることにした。一階層では、二階層に移ることをメインに動いていたが、二階層では、探索をメインにいろいろな空間(ルーム)に入るのがメインだ。


これは、一階層より、二階層の方が、宝箱の中身や出現する鉱石が豪華だからだそうだ。だから、二階層を攻略できる腕があるなら、そっちの方がいいとのこと。


「にしても、本当にわしら以外にも、このダンジョンを探索していた者らがいたとはのう」


一応、事前にこのダンジョンを探索しているのは俺たち以外にもいるとは聞いていたが、遭遇したのはさっきが初めてだ。


「ま、一階層メインで探索する冒険者は正規路をメインで攻略しねぇからな。つっても、ほとんどは三階層を探索してるんだろう。さっきの奴らも、そこそこ潜ってんだろうし」


「そうなのか?」


アメイはそう言うが、何か理由があるんだろうか?


「一階層に、俺たち以外の冒険者がいたら、あそこまで魔獣が俺たちに群がることもねぇし、トラップの類も解除されてたはずだ。すくなくとも、一日くらいは新しい奴は入ってなかったはずだ」


なるほど、アメイは本当にダンジョンのことを知り尽くしている。こういう知識は、俺たちにはないから本当に助かるな。


「あぁ、今回は助ける側になったから大丈夫だったが、他の冒険者には注意しろよ。ダンジョンの宝物は早い者勝ちだが、いちゃもんつける奴は多いし、場合によっちゃ魔獣のなすりつけなんかも起こる」


うーん、冒険者自体荒くれ者が多いとは聞いている。今のところ、他の冒険者と接触する機会が少ないから何もなかったが、これからは警戒していった方がいいか。


「おっと、ついに発見したな。どうやら、救出した甲斐があったらしいぜ」


そう言われ、俺たちがたどり着いたルームには、宝箱があった。どうやらまだ開けられていないらしい真新しい箱だ。確かに、救助活動をして、正規ルートを外れたからこそかもしれない。


「おお、ついにか! 早く中身を確認せんか!」


アメイはクランに急かされつつ、周りや宝箱そのものに罠がないかを確認した後、宝箱の鍵を解除。その中身が見える。


中には、色がついた石だった。宝石というには、色が濁っている。まぁ原石ならこんなものかもしれないが。


「おお、これは魔石じゃのう」


魔石、つまり魔力を含んだ石ということか。これまた異世界ファンタジーの定番だ。


「魔導の実験に使ったりなど用途はとにかく様々じゃが、その最大の特徴は……食える」


「食える!?」


これ、食えるのか。また、どうして食う必要が、いやそうか、魔力を含んだものを食うということは。


「まぁ、くそまずいがの。基本的には魔力回復用に使われる。といっても、基本はマジックポーションにして、効率と飲みやすさを増して使うのが一般的じゃ、そのままだと何がついてるかわからんし」


なるほど、つまりマジックポーションの主要な素材なのか、これ。


「つっても、ダンジョンでの緊急時にゃ、手に入れた魔石を直接飲むなんてこともよくあるらしいがな。俺も試しに一回直食いしたことがあるが、本当に普通の石よりはかみ砕きやすいだけの石だ」


飴のようなものだろうか。石味の飴、絶対食いたくないな。


「ま、基本は換金用だな。ダンジョンじゃよく採れるが、さっきクランが言ったようにマジックポーションの素材だから需要が尽きなくて、安定して売れる。ま、当たりだな」


初手から当たりを引くとは、中々幸先がいいな。



――結局、二階層では、そこそこの戦闘をこなしつつ、たまに宝箱を見つけて、当たりだ外れだと一喜一憂していた。


そして、今は、三階層連絡階段に一番近いセーフティルームでキャンプをすることになった。


「うーむ、今日の成果は上々じゃのう!」


倒れそうなパーティの救出というイレギュラーはあったとはいえ、それ以外に大した問題はなかった。それに、宝箱から、魔石や、使えなさそうという所感があった魔道具の類はいくつか見つけ出せた。


「そうだな、俺から見ても、こんなパーティでここまでスムーズに行けるとは思わなかった。まぁ、ダンジョンの適正レベルは越えてるし、しっかり準備はしてきたとはいえ……お前らが優秀だからだな」


褒められると中々うれしいものだ。特に経験豊富なアメイから言われると説得力がある。しかし、


「俺たちが優秀なのもあったかもしれないが、単純にアメイがいてくれたからだろ。じゃなかったら、ここまでうまくいかなかった。ありがとう、同行してくれて」


「うむ、わしも同意じゃ。ハイカ殿にも感謝じゃな!」


クランも俺の言葉に同意して、二人で一緒に感謝を伝える。紹介してくれたハイカさんにも確かに感謝だな。


その言葉に、アメイは照れくさそうな顔をして、焚火を眺める。すると、すぐに真面目な顔になる。


「......本当に、お前らは俺を見下さないんだな」


「どうして見下すんじゃ? 実際お主がいなければ、わしらはどうなっていたか分からんし」


俺もクランの言葉に同意だ。見下す理由がない。


「クイックサポーターって言うのは、基本見下されるものなんだよ。なんで、クイックサポーターって呼ばれるか知ってるか?」


クイックサポーターがいなければ、ダンジョン探索もままならないと思うが……。しかし、どうしてクイックサポーターと呼ばれるのか、か。


確か、クイックサポーターはギルドの正式名称では行動支援職(フィールドサポーター)だったはずだ。しかし、冒険者の間では”クイックサポーター”という通称が浸透している。


「クイックサポーターの由来は、逃げ足が早いから、クイックなんだ。それぐらい、戦闘ができないって言うのは冒険者にとって、お荷物なんだ」


先ほどのパーティを思い出す。確かに、あまりクイックサポーターの扱いは良いものではなかった。


「それは、ならこの略称を使うのは」


「いや、別にいい。正直そっちが浸透しすぎて、ギルドですら諦めるくらいだ。今更、蔑称ともおもってねぇよ……すまん、辛気臭くなったな、ちょっと俺は外の見張りしてくる」


アメイは余計な話をしてしまったと思ったのか、気まずくなったのか、部屋を離れる。追いかけた方が、いや、多分気遣われたのは俺たちの方だった。俺たちの方が余計気にしてしまったせいだろう。


「ふん、それで言うなら、ヒーラーだって同じようなものじゃろう。まぁ、わしは例外じゃが!」


クランも、気遣われたのに気づいたのか、気にしていないそぶりで強気にふるまう。確かに、戦闘能力が低いというのは、ヒーラーも同じだ。それで言うなら、防御専業の俺も、似たようなものだが。


だが、クランがヒーラーという言葉を使っていたので、先ほどのクランの説教を思い出す。救助したパーティに対する、ヒーラーがいなかったことへの非難を。


「そうだな。お前は強い。正直、才能だけならアタッカーの方があるだろ。ヒーラーとしては、随分努力したんじゃないか?」


先ほどのクランのヒーラーに対する思いや動きには努力の跡が見えた。それほどまでに、こいつは人を癒すのに執着している。


「......そうじゃの。わしは恐らく、アタッカーの方が向いているんじゃろう。しかし、それでも、わしは、ヒーラーになりたかった。人を”癒す者”になりたかった」


クランは、また、ヒーラーとしての矜持を語る。そう答えるクランは、熱を帯びていた。それが、絶対に譲れぬものであるというように。はっきりと、”癒す者”になりたいというほどに。なら、


「どうして、ヒーラーに執着するんだ? そこまでして、”癒す者”にこだわる……吸血鬼の、お前が」


「お前にだけは……いや、そうじゃのう、お前には話しておこう。と言っても、そんなにたいしたことではない、わしにとっての大事な思い出話じゃがの。それでも、わしが唯一抱えたい、”傷”の話じゃ」


――それはきっと、今のクランのルーツだった、少女の昔話。

読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字報告・コメントお気軽にどうぞ。

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