女神の情報共有
どうも、作者です。百十一話です。
――この感じ、久々だな。確か、前はダンジョン攻略一週間前ぐらいだったか。というか、すごい落ち込んでるな……未来さん、大丈夫か?
「すみません……本当は弱気な所ばかり見せるのもどうかと思って明るく振舞おうと思ったのですが……」
いや、今回の件は誰も気づいてなかったから仕方ないんじゃないか?
「人が気づかなかったならまだしも……私、女神ですし、今回の私、すごく滑稽ですし……ふぅ、すみません、切り替えます」
そうした方がいい。俺なんて、今回の件一切何もわかってなかったからな。正直、未だに何が何だかわかってないからな。
「私が言うのもなんですが、泉さんとクランちゃんはずっと巻き込まれていますからね」
まぁ、それはともかく、今回はどうしたんだ?
「そうでした、色々と情報共有しておこうと思いまして」
情報共有?
「実は……泉さんには内緒にしていたんですが、私の眷属たちをダンジョン街に呼んでまして……」
……それってつまり?
「入れ違いです! 本当はサプライズでーす! ってやりたかっただけなのに……! 何だか、そんな雰囲気じゃなくって……!」
……うん、どんまい。未来さん、割と考えなしなところが……いや、なんでもない。だが、ダンジョン街にいるってことは、ハイカさん達とは合流したのか?
「はい、二人は、エフィ君のためにヒビキさん達と動き始めています。泉さん達と同じく、獣王国に向かっています……合流できないことはないとは思うんですが……聖王国はルート的に厳しいということで、反対のルートを使っています」
つまり、獣王国にたどり着くまで合流できないってことか?
「そうなりますね。ただ、逆を言えば、泉さんと、他の二人を利用した情報共有はできると思うので、結果的には、かなりのファインプレーでした……」
ま、まぁ、やった理由はともかく、普通に助かってるから、ありがたいよ。
「慰めてくれてありがたいです……モロゾフさんには怒られそうだけど」
モロゾフ……眷属の一人の名前か。まぁ、そこらへんはそのうち会えるだろうから、その時に聞くとして、あっちはどうなんだ?
「あっちも、明日の出発になるようです。何もなければ、あちらが先につくと思います」
何もなければ、か。まぁ、そううまくはいかないだろうな。というか、恐らく、俺たちが解決しようとしているエフィの件……魔王が獣大陸に来たっていう話が相当やばいらしいし。
「特に、聖王国はたった一日で色々と動き出したようです」
やっぱり、思ったより大変なことになりそうだな……。まぁ、進むしかないんだが……。
「もっと助力が出来たらいいんですが、とりあえず、明日は大丈夫だと思いますよ。未来視で安全そうなシーンしか出てこなかったので」
それを聞けるだけでも安心した。
「あとは、お二人は直接見ていないと思いますが……”神災魔獣”について、少し痕跡から色々と分かったので」
その”神災魔獣”とやらは、一体何なんだ?
「”ダンジョン暴走”がダンジョンのバグならば、”神災魔獣”は魔獣というシステムのバグです」
なるほど、”ダンジョン暴走”と似たようなものか。
「はい、少し解説すると、通常魔獣は共食いしません」
確かに、ダンジョン内でも一度も共食いしている場面は見なかったな。あの賢そうな鮫ですら、他の魔獣を食べるのは見てないな。
その言い方的に、”神災魔獣”は魔獣同士が共食いすることで発生するってことか?
「そういうことです。魔獣は基本的に、自身の中にある魔力をもって生存するので、そもそも食事を必要としないんです。それが、何らかの要因で他の魔獣を食べ始めると起きます」
何で他の魔獣を食べると強くなるんだ?
「魔獣にとって、魔力保有量は強さに直結します。他の魔獣を食べるということは、その魔獣の魔力を取り込むことになるので……」
つまり、数十、数百体分の魔獣の魔力が一体の魔獣に集約する……みたいな感じか?
「その認識で正しいです。はい、泉さん達の世界で有名なものだと、”蟲毒”に近いでしょうか……あれは直接使うのではなく、それを呪いに使う訳ですが。と、それは良いとして、その結果として生まれるのが”神災魔獣”ですね」
それが、”神災魔獣”……なら、今回も似たようなことが起きたのか?
「いえ、今回の話は随分と違っています。問題点は二つ、”人工的”に作られたことと、その”工程”に問題があります」
今まで、人工的に作られた魔獣はいなかったのか?
「いえ、つい最近、今から五年前に、人工的に作られた魔獣はいました」
なら、今回もそうやってつくられたわけじゃないのか?
「いえ、問題は、その当時、”神災魔獣”を作った張本人は殺されており、更に言えば、その張本人の力で作られていたので……ただ、”人工的に作ることは可能”という情報は、聖王国に渡ったのは間違いありませんね」
なるほど、なら、聖王国が五年間研究して、作れるようになった、って考えることはできるのか。というか、作ったのは聖王国で確定なのか?
「それは間違いないかと。どんなに痕跡を消そうとしても、ここまで大々的にやれば、流石にわかりますから。恐らく、ヒビキさんも痕跡には気づいていると思います」
なるほど、まぁ未来さんが、女神が見てそう言うならそうなんだろう。それでもう一つの工程っていうのは?
「……”神災魔獣”は、通常であれば、先ほど言った通り、数十、数百という魔獣が共食いをした末に生まれる魔獣です。ですが、今回、共食いそのものをした形跡もありますが、精々数匹程度でしょう」
つまり、”神災魔獣”が生まれる程の共食いは起こっていない?
「ええ、そのうち生まれてはいたでしょうが、生まれる程の共食いはその時点では起こっていません。そして、それが気づかなかった原因です。通常、共食いが起きれば、連鎖的に広がっていくので、分かるんですが」
共食い自体が小規模だったから、そもそも気づかなかった、か。なら、どうやって生まれたんだ?
「……あまり、自分のことを責めないでくださいね。原因は、皆さんが攻略したダンジョンです」
……俺たちが攻略したダンジョンが?
「はい、通常、ダンジョンの魔力はダンジョンによって管理されますが、攻略されたダンジョンは、管理者がいない状態になります」
つまり、その管理者がいなくなったダンジョンの魔力が……
「”神災魔獣”となった魔獣の体内に何らかの方法で送り込んだ、と考えるべきですね……」
そう考えれば、辻褄が合う。ダンジョンは通常、攻略されたとしても、”残った”魔力でしばらくは維持されると聞いたのに、崩落したのは、ダンジョンの魔力が吸われたから。
そして、俺たちが攻略を終えたくらいのタイミングで、マゼランが”神災魔獣”を発見して俺たちの元に向かったのも、偶然じゃなかった。つまり、間接的には俺たちのせいか……。
「悪いのは泉さん達ではないですからね! どのみち、あのダンジョンと同じ規模のダンジョンが攻略された時点で、起こっていたことではありますから」
それは、分かっていても、なんとも煮え切らない気分だな。
「すみません、言わなければよかったですね……」
いや、聞いて余計に今回の件に対する気合が入った。教えてくれて助かった。
「はい……どうか、エフィ君を助けてください。彼も、私の大切な子ですから」
ああ、助けるさ。また何かあったら教えてくれ――
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