続
「ええ! 告らなかったんですか!?」
「ああ。いざとなるとやっぱり、躊躇しちゃってな……」
「なんなんですか……気落ちしてる先輩が見られると思って、楽しみにしてたのに……」
「ばーか。告ってたとしても、同じくらい清々しい気分だっただろうよ」
「そうですかね。絶対振られるんですよ?」
「わかってるよ。でも、あ~、なんだ、その」
「なんです? 言いたいことがあるなら言ってくださいよ? 言わなきゃ思いなんて伝わらないんですから」
「いや、確かに伝わったよ。お前の思いは。助かった。ありがとな」
「なんかしましたっけ?」
「見え見えだったよ! 何が『なあ、春山』だよ。あたしの背中押す気満々だったじゃねーか」
「うわ、思い出したら恥ずかしくなってきた」
「うん……。あれはちょっとわざとらしかったよね、遠山くん」
「のわりには、動揺してたよな?」
「ちょ、やめてくださいよ、先輩!」
「そういえば、どうしてあんなに動揺してたんだ?」
「もう! 遠山くんは黙ってて!」
「ええ……」
「あはは、二人ともありがとな! スッキリしたよ」
「それはよかったです」
「そうだね。遠山くんに付き合ってあげた甲斐があるよ」
こうして、上山真白先輩の恋は、幕を閉じた。
閉じたよね? 引きずってたりしないよね?
まあいいや。終わったということにしとこう。少なくとも、僕はこの後そういう現場を見ることはなかった。
めでたしめでたし。
とは終わらないんだな、これが。
その後も、部活は続いて、文芸部主催の学内小説大賞の準備が行われた。
「よし、じゃあ、これをぜんクラスに配ってもらうか?」
「いえ、クラス掲示をお願いしましょう。資源の無駄です」
「ああ、まあそうか。じゃあ、そういうことで、俺からお願いしとく」
「よろしくお願いします。先生」
「ん? なんか、口調変わったか?」
「いえ? 前からこんな感じですよ。やだなあ」
ハートマークが語尾につくこともなくなって、すごくまともな感じの先輩に戻った。
先生のいないとこでは変わらないけれど。
「よし、じゃあ、よろしく頼むな、三人とも」
「はい。大丈夫です。任せておいてくださいよ」
「よし、じゃあな。また明日も補修があるから俺は遅いが、早ければ明日にも作品が来る可能性もある」
「さすがにそんなに早くは来ないでしょうよ」
「まあ、一応だ。じゃあな」
「はい。さよなら~」
「さようなら」
「お疲れさまでした~ 」
翌日、僕らの作ったチラシが、クラスに掲示されることとなった。
書いてあるのは、募集要項と提出方法だ。
さて、どのくらい応募があるかな。
楽しみだ。
結局、集まった作品の総数は、十五作品ほどだった。
「う~ん、あれだな」
「少ないですね」
「春山、あんまはっきり言うな」
「あ、ごめん」
「まあ、少ないとは言え、応募作品自体はあるんだ。これを全部読むぞ」
「そうですね」
僕らは、印刷したそれを一つずつ手にとって席につき、読み始めた。
一つ読むごとに、項目ごとに点数をつけていく。
中には、文章がめちゃくちゃなものや、まったく面白くないものもあったが、どれも、学生が書いたと言われれば驚くようなものばかりだった。
まあ、少なくとも、そんなに酷いようなものはなかったということだ。
むしろ、一万字という微妙な制限で、よくもまあこんなに濃密なものを書いたな、というものもあった。
「こんなとこですかね」
「やっぱお前読むの速いな」
「そうですか?」
「うん。ちょっと気持ち悪いかも。ちゃんと読んでる?」
「当たり前だ。あ、じゃあ、持ってきたの読んでるんで、終わったら教えてください」
「ああ、わかった」
そのまま、なんとか小説大賞は終了した。
「そういえば、文芸部の部誌に載せようかっていう話はどうします?」
「ああ、じゃあ、応募者にコンタクトとって、許可をとろう」
「そうですね」
という訳で、許可を取りに行った。
「え? ああ、別にいいよ」
と言ってくれる人もいれば、
「いや、悪いけれど、やめてくれ」
という人もいる。
前者には、
「ありがとうございます」
後者には、
「いえいえ、大丈夫ですよ。ありがとうございました」
と返事をする。
「結局、OK出たのは半数か」
「まあ、いいんじゃないですか? あんまり多くても印刷代高くつきますし」
「まあそうだな。でも、もう少しほしいか……?」
「じゃあ、最後に一筆のせましょうよ」
「そうだな」
こうして、文芸部の部誌も完成への一途をたどっていった。
「そういえば、結局ずっといましたね」
「あん?」
「いや、上川先生目当てで入部したのかと思ってたんで、結局ずっといたのがけっこう意外だったんですよ」
「いや、あたしは、普通に本が好きなんだよ」
「そうなんですか」
「まあ、確かに、真白先輩、本が好きなようには見えないもんね」
「まあ、理系だしな」
「いや、そういう問題でもないでしょ」
「得意科目は国語と数学」
「そこは上川先生がらみなんですね……」
「まあな」
こんな感じに、僕らの日常は続いていく。
今日も明日も、その先も。
よろしければ、感想等もらえると嬉しいです。
同シリーズの別作品も、よろしければお読みくださいませ。