孤独のドイツ
海外旅行に何を求めるかは人それぞれだが、多くの人間は自分の国に無いものを求めるだろう。
かくいう私もそう。
私の場合はドイツに日本の雑多な町並みには無い、統一された美しさを望んでいた。
リューデスハイムの町は格別だった。整然かつ賑やかな町並みが人と街との調和を感じさせ、どこまでも居心地が良かった。
ライン川を渡る船に乗りながら古城を巡る喜びは何ものにも代えがたい感動を与えてくれる。
ドイツの歴史に関する知識を携え、空想しながら眺めるのはなお楽しい。
しかし船の中でドイツ語が上手く通じず、頼んだ料理と違うものがやってきた事が頭の片隅に引っ掛かり、私の空想を邪魔していた。
船はそのままライヒェンシュタイン城に向かった。赤みがかったレンガが歴史を感じさせる古城である。
城の中を散策していると、映写機を使って歴史を伝えるツアーの団体がいた。
古城を肌で感じながら歴史を知り、イメージを膨らませようという試みだろうか。
観光客は爽やかな夏に見合った格好で、古風な映写機が映し出す映像を自由な雰囲気の中、それぞれが眺めていた。
私は自分の心の内側に秘めた楽しみを、少しだけ皆と共有したようで嬉しかった。
その後はゆったりとした陽気に包まれた古城の横道を、満たされた気持ちで歩く事ができた。失敗の思い出はもうどこかに行ってしまっていた。




