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振り向かない彼

「電車って暇だなぁ、何か面白い遊びない?」

「人振り向かせ遊びはどう?」

「何それ?」

「向こうを向いている人に念力を送ってこっちを振り向かせるの」

「できるの!?そんな事」

「子供だと意外と簡単にできるんだよ。意識が色んな所向いてるから、すぐこっち見るよ」

「たまたまじゃないの?」

「何でも技術だよ。一つの事でも集中するとできるようになっていくのよ」

「尊敬できないけど凄いなぁ」

「でも最近は難しいね」

「どうして?」

「どうしても勝てないライバルができてね」

「誰?」

「スマートフォン。みんなスマートフォンの方ばかり見てる」

「ああー、スマートフォンは最強だわ」



 私は友達とのそんな会話を思い出していた。

 なぜなら、今その念力を使ってみたいなと思う時が来たからだ。

 

 私の事をずっと好きだ好きだと言っていた男の子が今私の座席の正面に居る。

 でも彼はずっとスマートフォンを見ている。


「好きな人が目の前にいるよ」


 私は念力を送ってあげるけど、彼はスマートフォンの方をじっと眺めている。

 


 私は電車から降りる時に彼にもう一度念力を送った。

 

「関係は画面の中じゃないよ。顔を上げた所にあるんだよ」



 私が電車を降りる時、彼は顔を上げたようだったけど私はもう前を向いていた。


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