1000人の王子
むかしむかし、あるところに1000人の王子さまがいました。
「あるところ」というか、「あるところどころ」と言った方がいいのだろうか。
まあそんな事はどうでもいい。
1000人もいるのだから、もう王子のありがたみは、そりゃあもう無いに等しい。
みんながみんな声高に叫んで「自分こそは最高の王子」だと主張するしかない。
これが現世で起きている事なのである。下らないものが取りはやされては持ち上げて、後は知らんぷり。
野球チームが監督を胴上げしといて、落ちてくる時に誰も支えないから、監督は地面に激突するしかない。
後に残るのは、もう監督の役割を終えた惨めな中肉中背の中年オヤジ。
王子はいつしか王様に、そして全てを失って「無様」になるのだ。
だから王子なんて名乗るのはやめて、玉子かけご飯でも食べながらひっそりと生きるがよろしい。
1000人の王子はつまるところ、1000人の『自称』王子だったのだ。
しかし、この中にも本当の王子がいたとしたら話は終わらない。
本当の王子はどうやって自分の「王子性」を証明するのだろうか。
『王』という言葉を良く見てみよう。ゲシュタルト崩壊するまで観察してみるべし。
そう、これは左右対称、バランス拮抗の紋章なのである。
この不動の紋章こそが人類が求めた、崇高なまやかしなのである。
紋章を刻印せよ。それが人と国を支配してきたのである。
偽者に惑われずに不動でいた者こそが真の『王子』なのである。
かくて本物の王子は、ただ王子で在り続けたのでした。




