19 柔軟体操はボクの得意競技!!
「優くん。今日の体育は柔軟体操だって。…できる?」
「たぶん大丈夫!!」
「多分なら先生にダメだって話してくるね」
「できる!!」
「前にそれで倒れたんだよ?それにお兄さんから『無理はさせないで』って言われてるから」
…むぅ。にぃにのせいか…。できるもん。ねぇねとよくやってるもん!!
僕は更衣室に向かい体操服に着替えた。
「ゆ…優くん?」
「できるもん!!いつもやってるの!!」
「…ちょっとだけって約束だよ?」
「軽くなら大丈夫!!」
「わっ。優くん柔らかいね」
「これぐらいは大丈夫」
僕は胸までぺたっと床に付けた。
ねぇねは…ボクより硬いんだよ?手を伸ばしてぷるぷるしてるの。いつもボクに『アイドルたるもの柔軟性を!!』って言ってるのにね。ところで…あいどるって何?女の子のキラキラしてる人達のことでしょ?ボク違うもん。
「息切れしてない?大丈夫?疲れは?」
「大翔くん心配しすぎ」
「…誰のせいでこんなに心配するようになったと?」
…それはボクです。ごめんなさい。だって恥ずかしかったんだもん。みんなは体育するのにボクだけ見学なんて…。
「大翔くんは?柔らかいかな〜」
「僕は平均だと思うよ?」
大翔くんは肘までしかつかなかった。
あ…あれ?ボクが特殊なの?
周りを見渡してみるとみんな大翔くんと同じぐらいかそれ以上に硬い子ばかりだった。
「…毎日やってるからかな?」
「だとしたら優くんも元々は硬かったの?」
「ううん。いっつもぺたーってしてたよ?」
「僕は座ってることが多いからかな…」
たまに体は伸ばしてるんだけどね、と大翔くんは笑った。
ふぅん…。ボクもいつも座ってるよ?ぬいぐるみをぎゅーってしてたりにぃににお勉強教えてもらったり…ねぇねの動画はいつも座ってお話するだけだから…。
「おぉ。東條は柔らかいな」
「えへへ〜先生はやらないんですか?」
「先生は硬いんだよ」
「ふぅん」
…いつもやらないと硬くなっちゃう…とか?硬くなったらねぇねに怒られちゃう!!…お部屋でストレッチしよう…。
僕は心の中でちょっとねぇねに怒られることを想像して怯えた。
「…ん?優くん。どうしたの?」
「なんでもない」
「…本当に?」
「本当に!!」
「…本当の本当に?」
「大翔くんしつこい!!大丈夫だもん!!」
喘息は今のところ起こってないし呼吸もしづらくないもん。