起きたら詰んでた
最後まで大筋出来たので投稿始めます!
前回は毎日更新宣言をして地獄を見たので、”できたら”毎日頑張るくらいで行きたいと思います!
よろしくお願いします!
――なんか、背中がチクチクする。
「……痛い……」
かすれた声を漏らした直後、遠くから慌ただしい怒鳴り声が聞こえてきた。
「水を! まだ煙が出ているぞ!」
「そっちの柱には近づくな!」
「王女殿下は!?」
「まだ目を覚まされていない!」
「誰か医師を――」
「…………」
(何なの、この騒ぎは)
私は眉をひそめながら、重いまぶたをゆっくりと開いた。
視界に飛び込んできたのは、雲ひとつない青空。
太陽は容赦なく照りつけ、あまりのまぶしさにそっと顔を横に向ける。
すると、目の前には真っ黒に焼け焦げた巨大な屋敷。
その周りを大勢の人々があわただしく駆け回っているのが見える。
「なに。どうなってるの?」
そもそも、私はなぜ外で寝ているのだろう。
先ほどまで、私は家のお風呂で一人酒を楽しんでいたはずだ。
屋敷の前には、一人の男が立っていた。
ザック。
スラム出身の孤児でありながら、数々の功績を重ね、今では英雄と呼ばれている男
そして、私の――。
「……夫?」
けれど今の彼は、その威圧感を失っていた。ただ呆然と、焼け落ちた屋敷を見つめている。
その瞬間、頭の奥で何かが弾けた。今まで知らなかったはずの記憶が、濁流のように押し寄せてくる。
私は王女。オリヴィア。
高慢で、わがままで、傲慢な女。
そして昨日、結婚初夜を迎えたばかりだった。
『近寄るな!!この変態ぃぃーー!!!』
記憶の中の自分が、目の前の夫。ザックに向かって叫んでいる。
『あなたスラム育ちなのでしょう?この私を誰だと思っているの!?』
そんな私に、落ち着くよう両手を軽く前に出した夫に向かって
バシッ!!バシッ!!
豪快に往復ビンタを決めていた。
『あなたに触られるくらいなら、このベッドごと燃やしてやるわよ!!!』
(王女......あなた......あなたほうがよっぽど野蛮では......)
王女はそのままベッド脇に置いてあった燭台を勢いよくベッドに投げつけ、
そしてその火は瞬く間に屋敷全体を包んでいった。
なるほど。
つまり......
私は昨日、結婚初日に夫を往復ビンタし、
ベッドに火を放り投げた。
(......この屋敷......燃やしたの。私だ。)
「…………」
冷や汗がどっと吹き出す。
なんだか背中が濡れてきた気がする。
そういえばお風呂で意識を失う直前、誰かの声が聞こえた気がする。
『え?やば!後はあんたよろしく!』
(……まさか、あいつ逃げたのか!?)
(うわぁああ!!前任者ァァァァァァァ!!!!)
(いったい何をしてくれているのよーーーーーー!!!!)
もう完全に、思い出した。
いっそ、記憶喪失スタートがよかった。
(お......落ち着け。とにかくどう動くのが正解か考えよう)
うっすらと目を開けて、燃えた屋敷を見る。
黒焦げになった屋敷の一角が、音を立てて崩れ落ちた。
その前では夫が諦めたような顔で「ハハッ......ハハハッ」と笑っている。
怖い。
何と声をかければいいのだろう。
「昨日は、燃やしちゃってすみませんでした」
違う。
「ちょっと手が滑ってしまって」
絶対違う。
「ところで、今日からどこに住みます?」
もっと違う。
謝るしかない。
しかし、何をどう謝ればいいのかが分からない。
そしてオリヴィアはそっと、もう一度目を閉じた。
オリヴィア(冷や汗が、止まらない……)
兵士「なんか、王女の周りめっちゃ濡れてるな。だれか水かけたか?」




