50話、壁外奇襲作戦、決断と対価その1
翌日、俺たちは襲撃に備えて待機していた。白い煙はまだ上がらない。空気が張り詰めている
指揮者の作戦は白い煙が出た瞬間に、馬車でギリギリまで移動
展開して魔法隊が魔法を出した瞬間に斥候、前衛と突っ込み乱戦に持ち込むものだった
俺がするのは、中小の敵の数を減らす
馬車近くで待機してると、ん?振り返ると
ミアが俺の袖を引いていた
「ねぇ、ちょっと気になる箇所がある」
ミアが指を差した方向に、確かに違和感があった。
なんとも言えない違和感
「闇の気配?」
「セレンかもしれない」
「状況打開できるかもしれない、どうする?」
ミアが迷わずこちらを見た
「どんな選択でも、私はアキについて行く」
その言葉に背中を押される
「俺は、確認に向かいたい」
ミアが頷いて、俺たちはみんなから少し離れて、ミアが腕を前に出した
「わかった、少し抜けよう。闇魔法、不可視」
姿が消えた俺たちは、違和感に近づく。木々の隙間から見えた。
「あれはセレン、、じゃ、、ない?」
白い服に黒い髪。セレンに似ているが、纏う空気が違う。もっと重い
「だれだろ?1人は魔族よね?」
ミアが小声で言う。確かに、白い服の人物の前に魔族が立っている
「必死に何か叫んでるわね」
「叫んでるね、内容まではわからないが」
「私 怨 を 取って から って」
「す 闇 私はあなたに も ない 」
「 で、 は貴 を助け なん 」
「 る」
森の中で距離がある。声は風に紛れて断片しか聞こえない。だが魔族の表情は洞窟で会った魔族とは違う。あの時は歓喜だった。魔族が申し訳なさそうにしている
「魔族から黒いのが吸われてる」
ミアが息を呑んだ。魔族の体から黒い霧のようなものが白い服の人物に向かって流れている
「魔族が逃げた」
黒い霧を吸われた魔族が、礼をした後に怯えたように飛び去っていく。
あの人は、黒いモヤを抱えたまま消えた
「これ以上はわからない、戻ろう」
「そうね、、」
ミアもなんとも言えない表情だったが、それ以上は言わなかった
あの女性は一体何をしたんだ?
森に戻ると、空気が変わっていた。みんなが馬車に乗って準備をしていた
見てみると城壁の方角に白い煙が立ち上っている
「よし、、煙が上がり出したぞ!用意!」
指揮者の声に馬車主が手綱を握りしめた
俺たちも馬車に乗る
馬車中から黒い煙が続いて上がった。合図だ
「突っ込むぞ!」
号令と同時に馬車が駆ける、今まで見たこと無いぐらいのスピードだ
「とまれ!展開して魔法隊は攻撃用意、号令したら斥候は中の小さい奴らを蹴散らせ!前衛は取り残したでかい奴らを攻撃」
「魔法隊、放て!斥候は突撃!爆発音がしたら前衛は走れ!」
爆発音が響いた瞬間、前衛が走り出す
「おおぉぉぉ!」
ベイルさんが先頭で突っ込んでいく。大斧が弧を描いて魔物を薙ぎ払う
俺は左のこめかみにデコピンをして極限集中をした
「闇魔法、同調」
ミアの呼吸が重なる。同時に煙に向かって斥候が突入する
左をレンが隣を走ってる。
右はセラスの状況を教えてくれた斥候、距離をとりながら走る
6人で前線の先を切り拓くために走る。真上から色々な魔法が俺たちを追い越し白い煙の中で爆発する
後ろからベイルさん達前衛組が俺たちが切らなかったやつを切り伏せていくため、少し遅れて走っている
あの光魔法は、フレイルさんか?頭上を越えて煙の中に落ちた
煙に命知らず6人が突撃したが、サソリの尻尾が真横で止まり、尻尾で反対に薙ぎ払ったのがわかった瞬間
「ぐあぁぁぁぁ!」
俺の横にいた右側からの悲鳴が聞こえた。
大型のサソリの魔物に吹き飛ばされたんだろう、見知った相手だけに追いたくなるがだめだ
足を止めるな
魔族と戦った失敗をするな。周りの敵を倒そう、首を振っている虎型の魔物に突っ込む
首を突き刺さして、上に切りあげる。
切り上げた虎は倒れた、次だ
く、視界が悪いから周りがわからない。
うお、風の刃が真横を通って行った、もしかしたら当たっていたかも
この作戦を考えたやつ、マジで殴りたい、
いや、待て、あの炎
ミアのだな、こっちに飛んできてないか?
来てるよな!?やばい!走って逃げたら正面に斥候を吹き飛ばしたサソリの魔物がいたからサソリに突っ込む。
奴はハサミで挟む気だな、構えている
どう動くのが正解だ?
ハサミは構造上、左右に動かすのが得意だ
つまり滑り込み、ヤツの目を切りほふくで後ろに行くか
ヤツの腹を切るか
右のハサミが迫ってくる、スライディングしながらやつの顔がこちらに噛みつこうと向かってくる
目は中止、滑りながら顎を切る
顎を切ると苦しそうに顔を上げた、その隙に下に潜り込んだ
ドカン!
真上に爆発音がした。ミアの炎が当たったのか?
サソリの足が震えてる?やばい押しつぶされる
横に転がり、足付近に来るとサソリが足が力無く胴体が落ちた
隙間からなんとか出る、サソリが燃えたみたいだ。穴が空いている
それより他だ、目の前の奴を切ろうとしたら
目の前にベイルが出てきた
「ベイルさん!」
「アーキ殿か!」
背中合わせでベイルと周囲を確認する、周りは敵が少なくなった気がする
煙が減ってきたな、周囲の敵が少なくなってるのがわかる
だが、一刻を争う事態になっていた
「レン!」
レンが、倒されてゾンビに襲われそうになっている
叫びながら俺は駆けた
声も出せず両手で押さえているが力負けしだしている
レンの上にいたゾンビの腹を蹴って飛ばした
倒れたゾンビの横に行き、武器を振り上げる
確か首を切れ...ば?
あれ?この人、多分、最初にサソリに飛ばされた斥候の人だ
俺はまだいけるぞ
判断を間違えるな首を切れ、くびをきれ、クビをキレ
セラスらしく、凄い泥臭い持久戦をしてる!城壁周りに魔物よけの群生地やキルゾーンを使って持ちこたえてるけど、魔物の数が多い!
この人の声を考えるな!首に剣を突き刺した、感触と色々な物を思い出し....
今は戦闘に集中しろ!
はっ、レンは大丈夫か!?
「レン!無事か!?」
「ありがとう、無事だよ」
レンは起き上がっていたが軽い放心状態だ
多分、レンは切れなかったんだろうな
「現状確認するぞ!」
ベイルさんの声にハッとなったレンが周囲を確認する
三方向を見ると、俺たちで敵を蹴散らしたのがわかったが
何人か犠牲になっている
さっき俺が刺した偵察に出てくれた斥候に、何人か前衛も倒れている
魔法隊と馬車が走って来てる、指揮者が叫ぶ
「無事なものはキルゾーンへ向かえ!!」
「魔法隊、キルゾーン側の敵に砲撃始め!」
「馬車と支援隊は負傷者を回収後、前衛に合流、追従するぞ!」
「魔法隊は馬車が来たら乗って後方の魔物に魔法を打ちまくれ!」
間髪入れず、俺たちは走る。レンがよろけてやがる、無理をしてるな
「レン、無理するな!」
「大丈夫、私は今走らないと戦えなくなる!」
レンも含め俺たちは走りながら敵に突っ込む
俺たちの進行方向に、後ろから魔法が飛んで何匹か魔物が吹き飛ぶ
奥が騒がしい、まさか
城壁から兵が出て来てる!挟撃が完成した!
背後から爆発音がする、多分馬車に乗ったミア達が打ってくれている
走る、切り伏せながら後方の兵士達も切り伏せてくれているんだろう、しばらくしたら
「ディープウッドから来ました、救援です!」
「ようこそ、セラスへ!」
右のこめかみにデコピンをして解除する。呼吸が俺の呼吸に戻る
辺り一帯には魔物が居ない
街から出て来た人達に目に涙が浮かんでる
「我ら、ディープウッドからきました。ギルドマスターのところへ案内をお願いします!」
指揮者が胸を張って答えた
「案内します」
セラスの人達に、俺たちは案内された
キルゾーンに入ると、馬車から降りたミアとフレイルさんがこっちに走って来た
「アキ!」
「レン!」
無意識に手を上げたら、ミアがハイタッチしてくれた
「やったね、生き残ったよ!」
「だな、ミアが無事で...あれ?」
足から力が少し抜けた?
そんな俺をミアが支えてくれる
ミアを抱きしめた、だけど、右手は左手の上に乗せて震えてるのがバレないようにした
「生きていてくれて、ありがとう」
「うん、ミアも生きててくれてありがとう」
炎で死にかけたのは、黙っておくか
辺りを見たら、フレイルさんがレンを抱きしめてる
フレイルさんが耳元で何かを囁いて、レンさんが涙を流している
「アーキ、レンを助けてくれてありがとう」
フレイルさんの感謝が、今までと違う
穏やかに、大事な物を守ってくれた
心からの感謝な気がした
それと反比例して、俺は何かわからないが右手の感触と共に
ダイジナナニカが欠けた気がした
右手がずっと震えている




