46話、覚悟と悲しみの筋肉
馬車には何人も乗っており、上手く潜り込めたし窮屈といえば窮屈だったが、苦じゃ無かった
見た限り前の馬車と含めて4台のキャラバンで向かっているが多分人は2台にしか乗ってないな
残り2台は、物資だろうな
そして馬車には添木も居た、俺たちに気づいたベイルさんが話しかけてきた
「おぉ?アーキ殿達もセラスに来るとはな」
「本当ですねぇ・・・」
フレイルさんが眼鏡を拭きながら呟いてる。まさかまた会うとは思ってなかっただろうな
「いやー、ちょっと訳があってね」
「訳?」
「凄い、嫌な感じがしたから馬車に飛び乗ったらセラス行きだった」
これしか言いようがなかった、第三者に闇の精霊の話をするわけにはいかない
レンが呆れた顔をしてるが、行き先すら確認してなかったように見えるからな
「行き当たりばったりだな」
「ミアリスさん、なにしてるの」
「すみません、こんなはずでは無かったの」
ミアが馬車の窓から外を見ながら頭を抱えてる。
計画性のない逃げ方をしたように見えるからな、俺たち
それに、戦闘とか考えてなかったな
ミアに後で相談するか
「しかし戦闘になると思うが、、って2人とも新しい武器を持ってない!?」
「あぁ、買ったんだよね」
「私も、良いのがありましたから」
「なんか、変わった杖ですね」
フレイルさんがミアの杖を興味深そうに見てる。今ならわかる、あれは学者の目だな
「ダブルキャスティングロッドって名前らしいです」
「ほうほう、、初めて見ますなぁ」
「アーキ殿のは?」
「俺のは、万能性を重視したショートブレイドです」
鞘から少し抜いて見せると、ベイルさんが頷いた
「アーキ殿らしいな」
「2刀流は!?」
「残念ながら無理だろうね」
「なぜだよ!」
レンが食い気味に聞いてくる。斥候として興味があるんだろうな
「単純に腕力不足、投げるなら行けるかもね」
「カッコ良さそうだけどなぁ」
ミアに言われたら、さ
見せたくなるよね
「練習、するか」
レンの目が輝いた。こいつ単純だな
「わかっていたが、単純すぎないか...」
ベイルさんが頭を抱えてる
なんとなく、気持ちはわかるぞ
夜になり、馬車が止まって野営になった
前の馬車にいた鎧を着た女性が指揮を取っている、多分あれが指揮者だな
女性は炊事、斥候は索敵、他は万一に備え警戒と炊事の補助を言われた
ベイルさんとフレイルさんが薪や火の準備を始める中、近くの冒険者達の会話が聞こえてきた
「斥候は交代で索敵か...まぁ仕方ないか」
「なぁなぁ、あの黒と赤の混じった女。まじで良い女じゃね?」
振り返らなくても誰の話かわかる
「だよな、胸もそれなりにあるし」
「俺口説こうかな?」
こんな下劣な奴に、ミアを近づけさせたくないな
「すまないが、長髪の赤黒くてオッドアイの話か?」
俺は穏やかに、でも確実に聞こえる声で話しかけた
「あぁ、そうだぞ。めっちゃ良い女だよな」
「あぁ、俺の彼女だからな。内面も最高だぞ」
笑顔で言ったが、目は笑ってない自覚がある
「ちっ、彼氏持ちかよちくしょう」
男達が舌打ちして話題を変えた
「なぁ、じゃああの小さい女は?」
「お前、流石にないだろ...」
「レンか、同じメンバーとして忠告しておく。やめておけ」
ベイルさんが近くにきて真顔で止めてる。声でわかる、これは本気で止めてる
「なんでだよ」
「まぁ...うん、死にたくないならな」
ベイルさんの目が遠くなった、何かを見てきたんだろうな
「とりあえず明日してみるか」
男よ、忠告は聞いた方がいいぞ
皆が就寝前の時間帯で、俺の方にミアが寄ってきたから俺も寄ったら、話したい事があるみたいで不安そうな声を出してきた
「ねぇ、アキ」
「どうした?」
「私達、セラスに行ったら戦うんだよね?」
俺と同じ考えかな、似た考えのようだ。少し怯えてるのか手が震えてる
「そうだね、逃げても良いし戦っても良いがミアが危険になるのは嫌だ」
「私は、守られてばかりじゃ嫌なの。私もアキを守りたい」
手の震えが無くなってミアが何かを決意した目をした
「なら、危なかったり全滅しそうなら逃げよう」
「うん、それなら近くに居てね?」
「もちろんだよ」
翌朝
あの男は何言われたかわからないが泣きながら別の馬車乗っていた
こっ酷く言われたんだろうなぁ
さて、それより現状の確認だ。何故こうなってるんだ?
「あの、ミア?」
「何?」
「近くない?」
朝起きたらミアが隣にぴったりくっついてるんだよなぁ
「近くない」
目を合わせず周囲を見ながら言い切るミア。左目が金になってるし俺じゃなくて周囲にいってるから何か言われたのだろうか?
いや...まって、ほんとに何が起きたの?
とりあえず無理難題を言ってみるか?
「そうか、なら今膝枕するか?」
「うん、する」
マジか、即答だった
ミアの頭が太ももに乗る、朝から甘すぎないか
「見せつけられてるなぁ」
「羨ましいんだけど」
「うー、、私もあんな彼氏欲しい」
周りの冒険者達の視線が痛い
「わしの筋肉...見向きもされぬ」
ベイルさんが自分の腕を見つめて項垂れてる
「ど、どんまい」
レンが慰めてるがフレイルさんは容赦がない
「全く、早くキスを見せ「下世話なこと言うな!」てごふっ!」
レンの拳がフレイルさんの腹に入った。いつもの光景だ
「こっちは夫婦漫才だな」
ベイルさんが遠い目をしてる
昼過ぎに、一人の女性冒険者が手を挙げた
「あの、提案があるんですが」
「なんか、見せつけられ過ぎてイライラしてきたからこの馬車で合コンしませんか?」
「「「「えっ????」」」」
この突拍子もない提案に馬車内が凍りついた後、なぜか賛成の手があがり盛り上がった
俺が右を向くと
「あの、よろしく」
「かったいなー、ラフで良いよ!」
フランクに接する近接の女性と人見知りな斥候の男性
左を向くと
「あの、その私魔法使いです」
「僕は、剣士です...」
「固くなってますね」
「こんな可愛い子が人生初の彼女なんて思わなかったから」
「口がお上手ですね」
お互いに顔を真っ赤にする剣士と魔法使い
.......
甘々の空気の中、結論から言おう
ベイルさん以外に恋人が出来ました
「なぜだ、、筋肉、筋肉アピールがいけなかったのか、、、?」
ベイルさんが馬車の隅で膝を抱えてる。背中が小さい。あんなにデカいのに小さい
「多分、違うと思うぞ」
いや、筋肉アピールも原因の一つだと思うが言わないでおこう
「我、この甘い空気に、耐えられそうには・・・」
馬車の中がカップルだらけになった。空気が砂糖で出来てる
「頑張れリーダー」
レンがフレイルさんに寄り添いながら言ってる。お前が言うなと言いたくなる
「頑張る、我には筋肉さえアレば、筋肉が喜びに打ち震えてるぜ」
腕を組んでポージングするベイルさん。涙目なのがバレてる
多分、1番悪いのは間違いなく
合コンを提案した女の子だろうな




