1.5話 追放、過信(魔法使い視点)
魔法使い視点です、いつこの話を見たかによって楽しみ方が違います
名前はあえて伏せてます
あの日のことは、今でも鮮明に覚えている。
私は華麗にダンジョンを仲間と共に進むけど、問題が発生した
ダンジョンの中層部、洞窟内で仲間が魔物と対峙してるが仲間の判断が遅れた
支援が来ない!早くしなさいよ!?
「ちょっと!私の支援は!?」
「すみません、ガレスさんで手一杯になってます!」
「相変わらず使えないわね!」
私はシリスに悪態をつくが、それよりガレスだ
ディフェンダーのガレスが目の前のミノタウルスの攻撃に必死に耐えてるが、かなりマズイみたいだがそんなの私には関係ない
私の炎は全てを薙ぎ払えるんだから!
ガレスのカバーにリーダーのアルドリックが入り込んだ、さらにシリスが支援魔法をかけ...
絶対にミノタウルスの振りにアルドリックの支援が間に合わない。みんなの想定以上に敵のミノタウルスが速かった。
だから私は判断した。支援無しの自分の魔法で攻撃する。今まで何度もやってきたことだ。
右手をかざし炎の球を出す
「いけぇ!」
その瞬間、私は違和感を覚えた。
遅い。火の魔法の火力が出ない。シリスの支援がある時と全然違う。無いとしてもこの威力はありえない
そんなはずはない。もう一度。もっと力を込めれば出るはずだ。
私ならコイツは一撃で倒せる
しかし二発目も、三発目も、想定の半分も威力が出なかった。しかも1発目以外全て外した
なんで、なんで
しかし目眩しにはなってはくれてはいたようだが私にはそんな事より今の私の状態のがおかしいと感じて焦りが先行する
なんででないの?なぜ?頭の中をずっと何故と言う言葉が出てきて答えが出ない
この魔法を私はずっと駆け出し冒険者の時代から使ってきたのに
焦りが判断を鈍らせた、ダメ!4発目の制御を失った魔法が、仲間の方向へ飛んでいく
私の魔法で焼かれたガレスの絶叫が響いた。
しかも悪い事に横薙ぎを受ける瞬間だったのでもろに吹き飛ばされた
「何をしている!?」
リーダーの言葉に私は固まった。自分が何をしたのか、理解するのに少し時間がかかった。
支援魔法で強化された火力が自分の実力だと思っていた。
ずっとそう思っていたのに、シリスの補助があって当たり前の攻撃だがシリスの補助は有って無いものだと思ってた私は、一度も疑わなかった。
「シリス!」
「はい!ただし1分も持ちません!」
シリスは待ってましたと言わんばかりにアルドリックの後ろで構える
「かまわん!30秒で倒す!」
無理矢理に力をこじ開ける限界攻撃
アルドリックがいざとしか使わない緊急技、反動が大きいが格上でも1人で倒せる技なんだけど私に声をかけてくれなかった
私は要らないって事?アルドリックが私を見た。その目に何が宿っていたか、私にはわからなかったが睨んでいるとも呆れてるともわからない
ただ、明らかに必要とはしてない目だった
その後はまるで劇を見てるようにエラーラがガレスの近くに寄り、応急処置をして行く。私の膝はずっと崩れ落ちていて何もできなかった
頭の中の何故と、この結果を出した無力さに私は動けない
ガレスがアルドリックによって運ばれていく。運びながらもエラーラが必死に私がつけた傷とミノタウルスにやられた傷に対して回復魔法をかけている。
「撤退だ!いそげ、前衛が居なくなるぞ!」
アルドリックが撤退の指示を出すが足が動かない
「ミアリスさん!」
シリスの声で私ははっとして呼ばれた方を見てしまう
「行きますよ!あなたがしっかりしないとみんな死んでしまいます!」
「わ、わかったわ!」
立ち上がり、皆の後についていく
その後、私は支援魔法かけられていつもの魔法で敵を倒せたが私はこれが私の力じゃ無いと思うと気持ち悪くて仕方がなかった
みんなの顔が見れない
無事に戻れた翌日、パーティに呼び出された。
全員私を見ている。まるで裁判みたいだ
「ミアリス。お前をクリムオースのパーティから外す」
アルドリックの声は静かで、いつもの声だが怒りではなく、決意の目だった。
しかし私はその目の奥に、別の何かを見た気がした。
私に対する罪悪感に似た何か。
「ガレスは一命を取り留めた。だがお前の状況を見るに、俺たちの冒険にはついていけないのがわかった」
「しかも、周りに対して高圧な態度をしすぎて、実力と態度が合っていない」
私は反論しようとしたけど、言葉が出なかった。
「…実は、気づいていた」
アルドリックが珍しく視線を逸らしながら言葉を発する
「お前がシリスの支援魔法に頼りすぎていることに。ずっと前から気づいていた。でも、パーティの火力が上がっていたから…言わなかった。それは俺の判断ミスだった」
「しかも、練習もせずに初級魔法しか使ってなかったのも知ってる」
シリスが申し訳無さそうに目を伏せる。エラーラが唇を噛む。
「俺たちはお前の慢心と傲慢を見て見ぬふりをしていた。それも含めガレスが傷ついた。それは俺たちの責任でもある」
しかしアルドリックは私を真っ直ぐに見た。
「だが、今日の状況も含めて総合的に判断した結果は共に戦えない。それだけは変わらない」
「出て行け、今のクリムオースの看板は今のお前には重過ぎる」
その一言が、私の世界を変えた。
昨日の光景に仲間を傷つけた恐怖と、悲しみとかたくさんの感情が私の中で暴れ回ってる
ガレスに会うことも、謝ることも出来ずに逃げるようにアイアンゲートからタイズポートへ移動した。
私には魔法しかない、魔法しかないの
魔法さえあれば私は返り咲ける。
力のある私に戻れる
練習場で朝から晩まで魔法を撃ち続けた。
初級魔法は打てるが連発はぎこちない、中級と上級魔法にいたっては出そうとするたびに、魔力が空回りする感覚がした。長い間上級魔法を使わなかったせいで、イメージできるのに空打ちみたいに何も出ない
三日目の夜、まだ練習して宿屋で体育座りをして眠れない
四日目の朝、また練習して初級魔法すら出せなくなって来た
食事も満足に取れてない、二日目から眠れていなかった。
ガレスに打ってしまった罪悪感と私のプライドが寝るのを許さない
私は手を止めることができなかった
ただ、魔法さえ取り戻せれば
魔法さえ戻れば、また私は証明できる
自分には価値があると、力があると証明できる
全然、戻らない
私はできる、やればできる
努力すればきっとできる
五日目の朝、練習場で魔法を放とうとした瞬間、視界が暗くなった。左目が痛い
そのまま、力が抜けて地面に倒れ込んだ
倒れても誰も助けに来なかった。
練習場にいた他の魔法使いたちが遠巻きに見ているのがわかった。
だけど「なぁ、助けろよ?」「嫌だよ、あいつプライドの女王だろ?関わりたくない」という声が聞こえた
プライドの女王なんて呼ばれてたのか、私には確かにお似合いだ
魔法が打てない私に残った称号、泣きたいがダメだ
冷たい地面に頬をつけたまま、私は動く力が残ってない
プライドが邪魔して泣けない、泣いてはいけない。
本当に私にはお似合いなのかも、そう思いながらも目の奥が熱くなるのを止められなかった。
誰も来ない、私なんかを助けない。
わかっていた。それでもどこかで誰かが手を差し伸べてくれるかもしれないと思っていた。
期待したく無いのに、最後は人に助けを求めてしまう
私って、本当にわがまま
あぁ、身体の中が寒い、寒いよ。誰か助けてよ。
足音が聞こえた。
何故かお腹がなった、それさえ気にならないくらい今の私には余裕はない
足音が止まった。
パンとミルクが、目の前に置かれたのが虫のような視線で下側だけ見えたこの匂いは蒸しパンかな?
顔を上げる力もなかった、でも確かに
靴しか見えないが男性がそこにいた。
「…食べていいの?」
声が掠れた、まるで物乞いのようで情けないと思いながらも今の全力で出せる声を振り絞った
これが限界だった。もう声は今の状態じゃ出せない
これで取り上げられたら意識を失う自信というか確信があった
「…倒れてる奴に出したんだから当たり前だろ」
ぶっきらぼうな返事だった、優しくも何ともない。
それでも私は顔も上げずに礼儀が悪いってわかっていても今、動ける全力で手だけ動かして食べ始めた。
蒸しパンの柔らかさとちょうど良い温かさを噛み、とミルクは飲みづらかったが口の中の水分と身体の悲鳴が合わさって我慢できなかった
無理矢理一気飲みしたミルクの動きと胃に伝わる感覚は冷たいはずなのに胸が温かくなり涙が頬を伝った。
悔しいのか、安堵なのか、自分でもわからなかった。俯いてしまう
それでもわかったことは
私の身体、生きたかったんだね。ごめんね
相手に顔を見られたくない、食べたらまたちっぽけなプライドが顔を出してきた
私はこんな状況でも、本当に嫌になる
けど、居場所をあの失った日から、私の物語は変わり出した




