1話、あの日の蒸しパンと追放
誤字脱字あったら教えて下さい
当たってないのに、左腕が消えた。
振り返ると、同じ箇所の服が切れているのに無傷の女性と目が合った。
彼女の目が、どんどん絶望で染まっていく。
なぜ俺の腕がないのに、彼女が絶望しているのかわからなかった。
瞬間に、骨が折れる感覚と共に体が吹き飛ばされて身体が激しく地面に擦られる。
こうなるなんて、あの日に蒸しパンを差し出した時には想像もしなかったな。
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アイアンゲートの酒場で賑やかに周りが騒いでいる
夜の酒場で俺の愛想笑いを見てみんなは笑い声が響かせている
「まあまあ、飲めよ!今日は俺が出すから!」
俺の声にリーダー格のこいつが音頭を取り出した。
「アーキ様!次は肉と最高の酒を頼みたいから頼んでも良いかな?みんなも飲みたいよなぁ!?」
「「おぉー!」」
断れない空気を作って、言ってくるこいつの常套手段だ。
「頼め頼め、任せる」
断れない俺は流されるようにリーダー格に任せる。
「おらぁ!普通の客は帰れ!アーキ様の貸切や!」
奥から慌ててウェイターが俺の取り巻きを注意しにきてるな。
「お客様、今日は貸切じゃありません」
「うるせぇ!やんのかぁ!?」
脅しかけるリーダー格のやつを止めたいが逆に言いくるめられたことがあるくらい口が上手くて俺は止められなかった。
店長がウェイターを呼び、首を横に振ってる。
諦められたな。
俺に金が入ると俺の周りは台風みたいに暴れに暴れる。
金が入った瞬間に俺のとこに擦り寄るこいつらは、金がなかったら無視してくる奴らだ。
それでもテーブルに並ぶ酒と料理。周りの顔見知りたちが愛想笑いを浮かべながら杯を傾ける。その中にはちゃんと喜んでくれてる人がいた。
俺はそれを見て満足していた。これでいい。これでここにいるみんなからは嫌われない。嫌われたくない。そう思っていた。
俺の前には安いポテトのフライと一杯の酒。一口で酔える俺には十分だ。
楽しみながら酒を飲んでるこいつらが裏で俺を褒めてくれてると信じてる。
翌朝になって二日酔いで頭が重い中、セドリックから呼び出しが来た。
嫌な予感はあった、それでも気怠そうに体を起こして向かった。
ギルドの一室、ニラとイオナが部屋の隅に立っている。
ニラは目を合わせない、イオナは複雑な表情で俯いている。
セドリックが俺の前に立った。
怒りでも悲しみでもない、疲れ果てた目をしていた。
「アーキ、すまないがお前をクレストのパーティから外す。もうみんなが耐えられなくなった。」
「ギルドからも、問題行動ばかりで改善できないなら追い出せって何度も来てるし俺たちはもう多方面に謝るのは疲れた」
俺は一瞬固まった
しかし次の瞬間、口元に笑みを浮かべた。
「…そうかぁ。まあ、仕方ないな」
軽い口調だった、まるで天気の話でもするように。
「俺みたいな奴、どうせいつかこうなると思ってたよ。お前らも長い間よく我慢したよ」
ニラが顔を上げ、イオナが口を開きかけて止まる。
セドリックが何かを言おうとした、俺はそれより先に手をひらひらと振った。
「気にすんな。クレストのお荷物が消えるんだし次の斥候の方がよっぽど使えるだろ。じゃあな・・・今までありがとう」
振り返らずに部屋を出た、廊下を歩く足取りは軽い。
すれ違うギルドの冒険者に「よう」と声をかける。
いつも通りに愛想笑いをする俺だった。
街を出るまで、笑顔を崩さなかった。
森に入って木々に囲まれて、誰もいなくなった瞬間
笑顔が消えた。
怒りでも悲しみでもない。ただ重たい何かが胸の底に沈んでいく感覚。
誰かのせいにすることもできない、言い訳も思いつかない。
本当は、ずっとわかっていた。
全部わかっていたけど、それでも変えられなかった。
ずっと、わかっていたけど心から笑える事は...みんなで依頼受けるの楽しかったなぁ
あいつらの思い出はあのパーティに入った時から使ってる採取用のバッグだけになっちまった
しばらくその場に立ち尽くしたまま、木漏れ日をぼんやりと見上げる。やがて何も解決しないまま、ただ前に向かって歩き出す。
居場所を失った日から、俺の旅は始まった。
気づいたら果実を摘んでいた。甘いのに上手く食べれないししょっぱかった。




