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ギルドの受付には、快活そうな茶髪の女性が立っていた。南国特有の陽気な笑顔をたたえ、二人を見上げる。
「いらっしゃいませ!依頼をお探しですか?」
「おう、そうなんだ。魔獣退治の依頼を引き受けたいんだけどな」
ガルツが自信たっぷりに声を上げる。その隣でライネルはローブの襟元を軽く握りしめ、静かに受付の依頼板を見つめていた。
「魔獣退治ですね!ええと……南の山岳地帯に巣を作った《炎牙獣》の討伐依頼がございます。危険度は高いですが、報酬も良いですよ!」
「いいねぇ、そいつにするか!」
「待て、ガルツ」
ライネルが冷静に制する。白い指が依頼書の端を指し示した。
「《炎牙獣》は炎を纏う魔獣だ。この暑さに加えて炎系の相手は厄介だ」
「いやー、お前、氷結魔法が使えるからいけるって!なんなら俺が前に出るしさ!」
ガルツが豪快に笑うが、ライネルは細めた目でじっと彼を見た。
「お前がそんなに張り切ると、フォローするこっちが大変だ」
「ちぇ」
受付の女性がくすっと笑う。
「息がぴったりですね。この依頼で決まりでよろしいですか?」
「……あぁ」
ライネルはため息混じりに短く頷き、依頼を引き受けた。
ギルドを出て、二人は通りを歩く。南国の朝の光が眩しく、熱気が石畳をゆるやかに熱していた。
「ライネル、お前さ、暑くない?平気か?」
「昨日よりはましだ。……が、街を出たらローブは脱ぐ。人が居なければいいんだろ?」
ライネルが前髪を指で払うと、首筋に汗が光る。その一瞬にガルツはどきりとし、慌てて目を逸らした。
「いや、人というか、俺というか……」
「?」
ガルツは動揺してうまく答えられなかった。