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海を揺蕩う文の梁  作者: 文海マヤ
――2022――
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93/205

仮題『Trivial』/『Rain』/『小瓶』

理由なんて、なんでもいいよ。

傘なんていらないでしょ?

仮題『Trivial』


さざなみ そよ風 ささくれ つまづき

理由はどれでもよかったのです

一歩を踏み出すための口実を

あるいは 隣人を刺し貫くきっかけを


たとえば 陽が昇って沈むだけでも

わたしにとっては ひどく感傷的で

声を上げて泣きたいほどだから

今日も ブーゲンビリアが散るのです



仮題『Rain』


泣き空に名前をつけなければ

愛することもできない 寂しいあなたへ

愛など 降り注ぐ程度のものだと

明日の朝に 教えてあげるつもりだった


けれど 気付けば雲は晴れていて

青のまぼろしは 煙る町に消えて

たったひとりきりで わたしは

これが痛みだと 叫ぶのでした



仮題『小瓶』


切り取った想いを 硝子に詰めて

色相はシアン イエロー マゼンタ

何色でも作れるはずだったのに

心の黒が紡げない 痛みの黒が綴れない


だから 棚に並んだ色彩の

蓋を開けて 飲み干してしまう前に

この首に 倫理の刃を突き立てて

切るのは電源 それとも喘鳴


よろしくやってよ、色覚異常。

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