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仮題『飛行機雲』/『無二』/『やめた』
いい天気だね、結構結構。
仮題『飛行機雲』
きみが溶けていなくなったあとの
空に浮かべた リグレット
炭酸の泡が消えてゆくのを
あの灯台から 眺めていた
例え 世界が終わってしまっても
記憶の中にしか生きていないきみに
もう一度 会いに行くために
翼なき手で 羽ばたくのだ
仮題『無二』
切り取り線の 向こう側
気付く前なら きっと捨てられた
今では 神経が通っていて
刃を入れれば 血だって滲む
寂寥くずれの感情が 真っ赤に流れて
ありふれた言葉に意味を吹き込む
明日の朝 市場に向かう前には
ほんとうの価値を知ることになるのだ
仮題『やめた』
息を止めて 湖に沈んでゆく
眠かった 冷たくて 苦しくて
でも 不思議と痛くはなかった
愛してくれないとわかっていて
愛されてはいけないとわかっていて
それでも 心拍は止まらなくて
まだ この無価値な二進数を
人生と称して並べ続けるのなら
私であることを 放棄するべきだ
聞き飽きたよ。
まどろみの海で、溺れないようにね。




