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海を揺蕩う文の梁  作者: 文海マヤ
――2022――
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54/205

仮題『書苦後』/『決心』/『フィラメント』

読書の夏にしよう、ね。

右と左、どっちにする?

仮題『書苦後』


胃袋が弾ける寸前だった

それでも詰めろ 詰めろ

この脳味噌に這う蛆では足りないのなら

お前の中身を分けてくれ


噛み切って 舌を撫でて 喉を通って

熱傷まみれの内側を愛して

それでわたしが一杯になったとき

四までを数えられるのでしょう



仮題『決心』


刃を突きつけたんだ

首に縄を巻いたんだ

飛び降りようとした寸前で

足が震えていることに気づいたんだ


生きようとする体と 死のうとする心

どちらに従うべきかわからないまま

嗄れた街で 娼婦が声を上げるのを

セラミックの目で 眺めていたんだ



仮題『フィラメント』


らせんが白熱するのを眺めていた

饐えた 四角い箱に閉じ籠もって

画面の中の世界を貪っていたんだ


ロビンフッドがいなくなったのだと

フードの奥から声が聞こえたときに

間違いを正して 空の待合室


線路に飛び込んだホームレスを

そんな目で見送るくらいなら

生きることを 選んでみようか


ぱりんと、割れてしまう前に、ね。

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