46/205
仮題『今ある幸せ』/『砂時計』
満ち足りた人なんていないんだよ。
仮題『今ある幸せ』
白磁の縁を撫でながら
涸れた声は 穏やかに語る
遠くでは彼を呼ぶ声がして
浅い陽射しが射し込んでいた
要りません 十分ですから
いなすように笑う彼の頬に
一筋の汗が伝い 落ちる
彼がいなくなる 二日前の話だ
仮題『砂時計』
底の抜けた硝子の縁から
溢れていく 心拍の粒
ひっくり返して やり直すのだと
甘えを許さぬ 絶筆の澱
限りがあるから 永遠はないから
言葉の上だけ 作られて
『かけがえのない』を都合よく
歯車の止まる日を待っている
わかってるなら止めときなって。




