13/205
仮題『夏』/『逃避』/『青天の霹靂』
今日も暑いね。
本当のことを言わないでよ。
仮題『夏』
マイナスの温度が 唇を冷やす
氷菓を齧って 頬を伝う
謳歌の季節 蝉の声
慰めの涼風が 袖を揺らした
窓の向こうに 水色の君
柵を越えて 消えてしまった
見下ろす雲の峰だけが
わたしの思い出を知っていた
仮題『逃避』
灰の描いた夢模様は
やがて吹いては消えるでしょう
幸せな顔が憎くなったのなら
ストリキニーネと友達に
だって ここにいなくても
いっそ ここから飛び降りても
きっと 風は南向きのまま
そんな度胸もないくせに
仮題『晴天の霹靂』
それは劈く落雷のようだった
リヒテンベルクの紋は
葉脈のように 私を覆った
出会いに前兆がないように
あらゆる別れにも前兆はなく
例え前触れを覚えても
それは 後付けの理由でしかない
ゆえに 私は泣いたのだ
黒の報せに 泣いたのだ
急にそんなのって、ないよ。