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海を揺蕩う文の梁  作者: 文海マヤ
――2023――
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128/205

仮題『偶然』/『式』/『Diva』

マザー・グースを歌ってよ。

羊水の中のことは、もう憶えてないからさ。


仮題『偶然』


さあ 君の番がやってきたよ

運命が気に入らないのなら

誰もが等しく賽を振る権利を

生まれたときから 持っているから


現実を認めぬと 食い縛っては

重ねてきた忍耐が報われることなど

無いとわかって ついに出た目に

拳を突き上げられるように



仮題『式』


「すべての空欄を満たさなくちゃ」

 あなたの声 あの日去ったはずの

 それは 暮れを待つ晩鐘の音だ

「色のないモノは 愛せないよ」


 デネボラは死んでしまいました

 もう 息もできませんから

 人生の形をした 厄介な謎に

 どうか 唯一つの解を



仮題『Diva』


音の死骸が転がる街を

孤独なあなたが駆けてゆく

たった一度も救われぬまま

たった一度も 幸せになれぬまま


あなたの歌を唄いましょう

あなたが風化しないように

あなたの歌を唄いましょう

あなたが鎮火しないように


終わりは水葬と、相場が決まってるんだ。

歌姫は水面によく似ているんだ。

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