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仮題『今更』/『声座』/『体温』
仕舞いでいいなんて、言ってないよ。
仮題『今更』
手遅れの言葉だとわかっていたんだ
腐敗と死臭の道をゆく度に
知らないことを知ってしまった脳が
その余白を塗り潰していった
描きたいものに気付いた頃には
最後の一頁が染まり切っていて
声なき声を閉じ込めた肋骨が
乳飲み子のように 叫んでいた
仮題『声座』
生まれては消える 言葉を集めて
宙で結んで 繋ぎ合わせては
顔のない誰かが舌を出すことすら
本当は滑稽だと思っていたんだ
誰でもない わたしの貌と
誰かになりたい きみの貌が
見上げた星空を言い表せぬままで
共に 朽ちていきましょう
仮題『体温』
籠もった熱が 冷めぬままで
零下の霜を踏みしめてゆく
堕ちる星の上で抱いた後悔が
肌の上を滑り行くようだった
青い男に投げられた言葉が
今も 臓腑を疾ませてゆくから
発芽の温度が絶えてしまう前に
はやく わたしと出会ってください
いいじゃん、アルビレオ。
寒いね、やだやだ。