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仮題『代』/『吐』/『pain』
石を蹴って歩くようにね。
仮題『代』
自分ではない自分の糸を
借り受けた義手で繰れたのならば
喪失の痛みも あるいは懊悩も
海月のように解けていったのに
さよならだけが人生だと
命の終わりに色を載せるのが
『かけがえのない』を振り翳した
一度きりの舞台だったのだ
仮題『吐』
喉の奥の淀みが渦を巻き
あなたを忘れるように流れて
酸っぱい痛みを伴いながら
鼻の奥を抜けてゆくのだ
曰く それが許しなのだと
曰く それを飲み込むべきだと
曰く 我慢も潰えたのだと
言った誰かも 乾いて消えた
仮題『pain』
深く 深く 息ができないくらい
抉った傷に 二酸化炭素の泡
中に包まれたあなたを詰まらせて
このまま肺が壊死するまで
いちたすいちの 問いに永遠と
答えられずに止まる足を
プルメリアの花が彩る道に
手向けられずに 跪く
さよならって、かっこつけないでよ。
痛いのは誰だって嫌でしょ?