87 冒険者Aさんと新弟子の男の娘
あらすじ:DQN2人の斜め上な行動で、策は爆発四散!
視点:マリさんに頭が上がらない大妖怪 ミケニャンさん
『』:アルファさん
「はああああああ!!? 嘘ぉおお!?
背丈も小さくて、可愛い顔してんのに!?
着とるのも女物の服やし
どー見ても、女の子ですやん!?」
「いや、あの子の名はノブユキ君と言ってな。
{ムトウ家}の長男なのだよ。
ちなみに次男の子はノブシゲ君という名でな。
マリ君が言うには、ノブシゲ君が生まれるまでは
{ノブ}の方で呼んでいたらしいのだが
それでは判別が付かなくなってしまうので
彼らの愛称は{ユキ}と{シゲ}の方で
呼び分けているのだそうだ」
・・・正直、ジンさんが驚くのも無理ないですけどね。
実は、ミケもそれ聞いた時はびっくりして
似たようなリアクションしちゃいましたし。
ふっ・・・芸人としてボケるのを忘れるとは
我ながら情けないですわ!!
『なんでやねん。
いつから芸人になったんや、ミケ』
「んもーーーー! ご主人様!
心の声にツッこまないでくださいよ~!!」
「・・・??? 主従揃って何の話してますん?」
「ジン君よ、考えるのではない、感じるのだ」
「いや、ご隠居様、それも意味分かりませんて」
「やれやれ・・・理解できないんですか?
これだから浮気エロ侍は~~~~~」
「ちょ!?
ホンマ勘弁してくださいよ、ミケのねーさん!!?」
『わはは。
まあ、ジンくんの浮気癖はともかく。
ユキちゃんが何で女の子の格好しとるのか~やけど
マリちゃんが前にゆーとったの思い出したわ』
「いや、浮気癖って・・・」
「ほう、マリ君が?」
『世間話程度で詳しくは聞いとらんのやけど。
最初にできた長女の時は【行者】の活動が忙しくて
東方の{ムトウ家}で産んでそのまま預けとったらしい。
んで、次に生まれた長男くんの時って
丁度【ヘイアンの都】で朝廷やら将軍家に
{ムトウ家}とキヘエの売り込みしとった時期らしくて
そっちの拠点にしとったとこで産んだらしいんやわ』
「ふむ、そういえば・・・。
その話、キヘエ君から聞いた事があるのう。
長男の出産に立ち会えなかったとか何とか。
彼にしては珍しく後悔しておったぞ」
「ほえー・・・ん? あれ?
にーさん、それが何で女の子の姿と関係あるんでっか?」
『えーっとやな、実はその拠点にしとった所ってのが。
懇意にしとった芸妓さんらの置屋やったらしいわ。
舞妓さんと違って、芸妓さんやったら
子育て経験ある人も結構おるしな。
外出せんとあかん時とか面倒見てもらえるから
一石二鳥・・・やったらしいんやけど』
「まー、普通に考えても。
そんな女所帯の巣窟に、可愛らしい赤子預けたら
そりゃ、格好の玩具になりますわよねー」
『実際、そーやったらしいわ。
で、1年後やったか2年後やったか忘れたけど。
キヘエが将軍家の【旗本】入りする事になって
長女や家臣らを連れて、都へ移住したから
ようやく家族全員で一緒に住めたらしいんやけど。
今度は、マリちゃんと芸妓さんらに加えて
実の姉まで加わってもーてな。
長男くんは、着せ替え人形状態。
散々、玩具にされて弄ばれたらしいんやわ』
「つまりアレですよね、アレ!
【フソウ】で何年か前から流行ってる
【男の娘】ですよ! 真性の【男の娘】!!」
「うはあ・・・、業が深いわぁ」
「まあ、次男のノブシゲ君が生まれる時に
マリ君は、子供2人を連れて
{ムトウ家}に帰ったそうでな。
以降は、そちらで過ごしたおかげで
ノブシゲ君も、やや中性的ではあるが
明瞭な青年に育ったと聞いておるぞ」
「・・・見た目は完全に女の子やけどね」
『そういや、見た目と言えば。
さっきの襲撃で言動見とって思ったんやけどなー。
長女ちゃんと次男くんは、東方の【武士】なんやろな。
「拙者~」とか「~でござる」って、ゆーっとったし。
・・・まー、【武士】は【武士】でも
【脳筋武士】やったけどなー』
「いえ、どっちかというと【野武士】じゃないですか?
名乗りもしないで一方的に襲い掛かってきましたし。
ゴロツキとか山賊とかと同類ですよ、アレ」
「ほっほっほ、なかなかに手厳しいのう。
まあ少し、援護と言うか弁明みたいなものだが
当時の・・・、20年前の【フソウ】の情勢では
武家ならば仕方ない面はあったと思うぞ?
西方はともかく東方は特にのう」
『まー、そう言われるとなー。
あの頃の武家で生まれ育ったんやったら
確かにしゃーない面もあるかもなー』
「東方の情勢? おじさま?
20年前の東方はどんな感じやったんですか?」
『ん? あ~~~。
ユミネちゃんが知らんのも無理はないやろなー。
西方の、【ヘイアンの都】の生まれ育ちやと
よっぽど自分から調べでもせん限り
東方の情勢とか入ってこーへんもんなー』
「そうでしょうねー。
まあ、アレですよアレ。
いわゆる、{戦国時代}とでも言うんですかね?
・・・その名残みたいなもんですが。
その頃には【大将軍】の{アシカガ家}が
勢力も権威もすっかり回復してたので
西方はほぼ収束してたんですけど
東方の【大名】は勢力が強い所が多かったせいで
まだまだ勢力争いしててですね。
小競り合いや戦争を繰り返してたんですよ」
「えっ!? 戦争続いとったんですか!?」
「うむ、実はそうなのだ。
さすがに、【大名】同士の大規模な総力戦などは
ほとんど無かったのだがな」
『東方って、戦略・戦術・奇略に搦め手も使うけど
最後は結局、武力で殴り合いって感じやったなー。
まー、あの姉弟もそんな感じに育ったんかもな』
「今の【フソウ】は西も東も関係なく。
{武器で殴り合う時代}から{銭で殴り合う時代}に
すっかり変わっちゃいましたしねー」
まあ、{此の親にして此の子あり}なんて言いますし
マリさんの娘らしいと思わなくもないんですけど。
性質は恐らく別物ですね。
母親の方は、武勇は元より、智も謀も天賦の才を持つ
10年どころか100年に1度ぐらいの傑物ですが
あの長女の子は、武勇1本の脳筋武将って感じですね。
先程の様子を見た限りだと
母親と違って【行者】としての才能は有りませんねー。
人同士の戦場で、刀や槍振り回して突撃してる方が
まだ向いてそうですけど
どっちにしても、猪突猛進に突っ込んでいきそうですし。
長生きできないタイプでしょうね、あのままじゃ。
「うむ、将軍家の力と権威が回復した結果ではあるのだが
武家よりも商人の影響力が大きくなりすぎておってな。
朝廷の政治に口を出す者までが現れているのは
問題ではあるが・・・まあ、その辺りは
若い者達の頑張りに期待するとしようか。
のう? ユミネよ」
「ウチに任せといてください、おじいさま!
外の大陸で学んだ事は伊達やないって事を
引き篭もってる連中に思い知らせたりますわ!」
『わはは。
頼もしいやん! ユミネちゃん。
俺も応援しとるで~、頑張りや~』
「!!!!!(ぐっ)」
「お嬢、燃えとんな~~。
・・・・・・あっ。
ところで、アルファのにーさん。
結局、あの子、弟子に取らはるんでっか?」
「うむ。
そういえば、肝心のそれを聞くのを忘れておったな。
どうするつもりなのかな?」
『せやなー。
弟子にしてもえーかなーと思っとるわ。
マリちゃんに頼まれたってのもあるんやけど。
それ以上に、さっき、色々と話してみた結果やね。
あの子、考え方や目の付け所がええし。
何より、よくそんな事まで調べたなーってぐらい
俺の事を調べとったわー。
そこまでの熱意持ってもらったなら嬉しいやん?』
「アレは、ご主人様のファンって言うよりも
マニアって言った方が正しい域でしたね・・・。
ご主人様マニアですよ、ご主人様マニア」
「・・・・・・つまり、ウチの強敵!?」
「「「『えっ?』」」」