86 冒険者Aさんと溺れた策?
あらすじ:あざといは配慮できる人の証
視点:弁才天の巫女 ユミネ・フジさん
『』:アルファさん
『ちなみに姫さんはどうやと思う?』
「もー! おじさま!?(ぺしぺしぺし!)
姫はやめて欲しいってゆったやないですか!!」
『わはは、すまんすまん。
で、今回のは、キヘエの思惑通りやと思うか?
それとも、何か読み違えたと思うか~?』
「何、ミケの前でイチャイチャしてるんです!?
そういうの許しませんよ! 嫁的に!!」
「その言い方やと、嫁とゆーよりオカンですやん」
むむむっ!
これは、おじさまに試されとる!?
ここをズバッと良い感じに答えれたら
おじさまの評価を上げる好機やね!!
ウチかて、【弁才天様】に認められた才女!
・・・・・・のはず。
ま、自分で才女ゆーのもちょっとアレやけど。
うーん・・・思惑・・・思惑?
今回の騒動・・・騒動・・・策?
うーん・・・ウチもおおまかな全容だけで
詳細聞いた訳ちゃうしーー。
『まー、ユミネちゃんも
細かい所までは聞いてないやろしな。
もっかい、順を追って話そかー』
「仕方ないですねー。
どうせ、そこのお侍さんも
わかってないでしょうし?」
「おっしゃるとーりです、あねさん!」
「自慢げに言われましてもねえ。
・・・まず、ご主人様とミケが
宿屋の裏で逢引をしてるとですね」
「あ、あ、あ、逢引っ!!?」
『初っ端から嘘はやめーや、ミケ。
裏で薪割りしとったら、突然2人が押しかけてきてな。
{ユキちゃんに師匠に相応しいか試すでござる!}とか
言いたい事ゆーて、名乗りもせんと
問答無用で切りかかってきたんやわ』
「うむ、それだけでも酷いな。
東方は西方に比べて、礼儀にうるさい筈なのだが・・・」
「そこだけ聞いたら、ただの強盗が何かやん」
「まあ、それでですね。
事前にギルドマスターのボケじーさんに
【フソウ】から人を招く~みたいな話聞いてたのを
とっても優秀なミケは思い出しましたので
ミケがあっさりと2人を制圧したわけですよ。
ご主人様が相手したら2人共殺しちゃうでしょうし」
『わはは、おいおいミケ~。
いくら俺でも、即殺とかせーへんって。
町中の宿屋やし、迷惑かかるやん?』
「は、はは・・・さすがにーさん。
(それって、町中やなかったら即殺って事やろ?)」
「ま、それで、ご主人様が特製の【トリモチ網】で捕縛。
2人共喚きだしたので、口は【粘着布】で塞ぎました。
そしたら、2人を追いかけてきたっぽい{忍}がですね
【煙玉】使いましたので、煙を吹き飛ばしたら
見習いっぽいのを1人残して姿を隠したんですよ。
まー、ご主人様やミケには、バレバレだったんですが」
「うむ、聞けば、その{忍}達の事も
気絶させるだけだったのであろう?
そして、その報告を受けたキヘエ君が
慌てて来たのだったな?」
『せやね。
で、何だかんだ弁解聞いとる間に
マリちゃんとユキちゃん案内しとった
ゲンさん達ご一行が到着~ってのが
今回の一連の流れやな』
「・・・?
おじさま、おじさま?
ウチ疑問やねんけど
試すも何も、襲撃する必要ってあったん?」
おじさまの事が知りたかったんなら
普通に正面から会いに来たらええんちゃうの?
ウチももっとおじさまの事は知りたい!!
・・・・・・あー、え、ええっと。
腕試しがしたいんやったら
別に普通に頼んだらええんちゃうの?
それこそ、ギルドで場所借りればええんやし。
何か襲撃せんとアカンような深い理由でも?
『つまりは、そーゆー事や、ユミネちゃん。
今、疑問に思った事がそのまんま
キヘエの思い描いとった策であり
その策が失敗した原因って事やな』
「???」
「つまりですね、キヘエさん的には
ご家族全員揃ってから、ちゃんと挨拶して
ご主人様にユキさんの弟子入りを
お願いする予定だったんでしょうね。
マリさん居たら、ほぼ確実にOKですし」
「え? 何でマリさんおったら確実なん?」
「なるほどのう・・・。
うむ、ユミネよ。
それはだな、マリ君が
ミケニャン君の【承認者】だからなのだよ」
「【承認者】・・・ですか? おじいさま」
「あー、なるほどー。
ミケねーさんの【承認者】やったら
そらまあ、ダメとは言えんですわ。
えーっとな、お嬢はまだ知らんと思うけど
【行者組合】の規則でな
従者を登録する時には【承認者】が必要なんや。
しかも、親類以外の第三者でないとアカンねん。
まー、身元保証人みたいなもんやな」
「うむ、色々と犯罪を防ぐ為には必要なのでな。
特に【行者】は神々と接する機会も多いから
その辺りは気を使わねばならんのだよ」
「それでな、人やったら特に問題はないんやけど
【妖怪】や【幽霊】とかみたいな人外の場合はな
その危険度によって、【承認者】にも格が必要になるねん。
具体的には、【行者】やったら上級以上。
他には高家やったり朝廷の要人やったり。
場合によっては神様がなってくれる場合もあるな」
『まー、【行者】には【陰陽師】や【降霊術士】みたいに
霊を使役するのタイプも多いし。
お供の従者が暴走でもしたらえらい事やからなー。
それを取り押さえられる人か
そんなんしませんよって保障は必要になるわけや』
「ふむふむ、それが【承認者】なんですね」
うーん・・・。
{フジ家}は代々【行者組合】に深く関わってるお家やし
ウチも{フジ家}の人間やもんな。
【フソウ】へ戻ったら、そこら辺も覚えんとダメやね。
「ちなみに、当時のミケニャン君はな。
旅人を騙したり、人里で悪戯する程度で
直接的な被害は少ない【妖狸】という認識だったのだが
張り合っていた【妖弧】の悪行が酷くてな。
何度も討伐者が送り込まれたのだが、その度に返り討ち。
そのせいで【妖怪】の中でも、かなり上位の危険度に
認定されておった。
その為、従者には相応の【承認者】が必要だったのだよ」
『せやねんなー。
で、俺の知り合いで【承認者】になってもええよって
申し出てくれたんが、マリちゃんってわけや。
生まれは【大大名】の姫で、{ムトウ家}当主の正室。
そして、既に上級の【戦姫】として各所で活躍しとって
【絢爛舞踏の美戦姫】なんて異名で呼ばれる程の人気ぶり。
朝廷や将軍家にまで顔が効くぐらいの影響力あったしな。
そりゃ【承認者】としては申し分ないわー。
いや、むしろお釣りくるレベルやろな』
「なるほどー、そんな事情があったら
確かに、弟子入りのお願いとか断れませんよねー」
『せやろ?
・・・で、多分なんやけどな。
弟子入りの話を持ちかけた際に
あの姉弟をけしかけるつもりやったんちゃうかなー』
「け、けしかける・・・!?」
『んで、正式な場を儲けて、決闘なり模擬戦なりさせて
ちょっと天狗とゆーか、自信過剰になりつつあった
あの子らの鼻っ柱折ってもらおう・・・。
みたいな事を考えとったんちゃうか?
その為に、前もって、あの2人に
色々と話を仕込んどったんやろな』
「し、仕込む!?」
『せやなー・・・例えばやけど。
俺の逸話だけは色々話しておいて
肝心の本人の人物像についてはぼかしておくとかな。
・・・逆に悪名とかばかり吹き込んどくのも有りやで?
そうやって興味や不信感を植え付けとけば
話の流れで、ええ方でも悪い方でも煽っていけるやろ?
キヘエやったら余裕でやりそうな事やな』
「あーーー、確かに。
あの人だったら、その辺の企てとか
普通に盛り込んでそうですよね。
・・・それで、ユキさんにその様子を見せる事で
ご主人様に更なる敬意を持たせる様に仕向けるとか
逆に、ドン引きしたらしたで、弟子は諦めさせて
自分の後継者として育てようとするとか」
「ひえっ・・・」
そこまで考えられるもんなんや・・・。
ウチにはそこまで先読みも深読みもでけへん。
さすが、おじさまや!
・・・と、いつもやったら感心して終わりなんやけど
それやったらアカンよね。
おじさまに少しでも追いつかんと!!!
・・・・・・あれ?
「えっと、おじさま?
つまりは、キヘエさんの失敗ってゆーのは
その、事前の仕込をやりすぎたって事ですか?
それで、2人が暴走してもうた・・・と?」
『まー、そんな所やと思うでー。
まさか、そんなタイミングで
そんな無意味な悪手に出るとは~みたいな感じやろ。
いやー、どんだけ頭ひねって策練ろうとも
予想外な事ってのは起こるもんやな~』
「なあなあ、にーさん、ねーさん。
キヘエはんの策が裏目ったんは分かりましたけど
結局、あの2人が何で奇襲したんやろか?
理由が分からんのですけど?
ただの興味や慢心だけやったら、奇襲なんかせんと
逆に目の前で堂々と叩きのめす方選ぶやろうし」
「えーっと、多分ですけどね。
単にあの2人。
シスコンとブラコン拗らせただけっぽいんですよね」
「「はあーーーー!?」」
「それが、どーも話をよーーーく聞いてみたんですが
2人共、ユキさんの事が大好きすぎるようでして。
ご主人様への弟子入りに、期待で胸焦がすユキさんを見て
キヘエさんに仕込まれてた興味や心配よりも
嫉妬が限界突破しちゃったっぽいんですよねー」
「なんやそれ」
「えーっと?
つまり、こうゆー事ですか、ねーさん。
{大好きな姉様が取られちゃう!?}とか
{大好きな妹をそんな怪しげな人物の所へやれるか!?}
みたいな拗らせをしてもーたと?」
「まあ、話を聞く限り、それっぽいんですよね。
・・・それにしても、ジンさん。
どーも、さっきから違和感あったんですけど
あなた、大きな思い違いしてませんか?」
「うむ、確かにジン君は思い違いをしてるな」
「ウチも違和感あったけど、今はっきり分かったわ」
「はあ・・・、ワイが思い違いですか?」
『わはは。
ジンくん、ユキちゃんは男の子やで?』




