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闇の烏:THE CROW  作者:
便所の世界? 嫌だな
8/22

ようこそ (2)

「だから。一緒に世界を脅かす便所どもを掃除しろって」

とモブが俺の片手を掴みながら言った。


「誰がそんなことやるか。手を離せ……殴るぞ!」

と俺は威圧感た(いあつかん)っぷりの声で言った。

抑えていた怒りで額と頬の血管が浮き上がるほど張り詰(はりつ)めていた。


「ぷふぅ…!殴る?やってみろよ!」

そのモブは俺を挑発的(ちょうはつてき)な眼差しで見つめながら、(あざけ)るように笑った。


俺はすぐに体をそのモブの方へ完全に向けた。


その瞬間…


——考える間もなく、俺はそのモブのホログラムの顔目掛けて力の限り拳を振るった。


俺の拳は激しく彼の顔に叩き込まれ、握った拳が顔の肉に少し沈み込むほどだった。


——ドンッ!


その衝撃で彼は少し後ろによろめいただけだった。

顔には大きな笑みが浮かび、その眼差しは闘志に満ちていた。


彼は倒れないよう、バランスを保つために一歩下がっただけだった。


それでも、彼はまだ俺の手を握ったまま、離そうとしなかった。


「いいパンチだ…だがお前!!」

——そのモブは俺の手を引っ張り、俺は彼の異世界の魔法陣へと引きずり込まれた。


「魔力持ってないだろうなぁぁぁ!!!」

とモブは満面の笑みを浮かべながら、決意に満ちた声で叫んだ。


俺がその魔法陣に足を踏み入れた瞬間、稲妻のような光が俺の体を包み込んだ。

まるで磁石のように、俺を異世界へと引き込もうとする力だった。


俺はその引力に必死で抗い、体が前に折れ曲がるほどだった。


そして…


——モブの両手が俺の頭と背中を押さえつけ、まるで異世界へ引き込まれるのに逆らえないよう、俺を屈服(くっぷく)させようとした。


俺の両手と両膝は無理やり魔法陣に触れさせられた。


「俺の世界じゃなぁ!すべての便所がモンスターに変わっちまったんだよ!最悪なことに魔王になった便所までいるぞ!想像してみろ、俺の世界がどんだけ臭ぇか!!」

とモブは唾を飛ばしながら大声で言った。


「やろぉぉぉぉぉぉ!!!」

俺は必死に吸い込まれまいと叫んだ。


俺の手と膝の一部が、ゆっくりと魔法陣の中へ沈んでいった。



俺の視界の外で、ALICEは俺がそのモブの異世界にほとんど引き込まれかけているのを見ていた。


彼女の顔はたちまち焦りに変わり、俺を助けようと自分の魔法陣の外へ足を踏み出そうとした…。


「勇者!」


…彼女の片足が魔法陣の外に踏み出した瞬間——


——異世界にある彼女の足から、まるで何度もナイフで斬られたかのように血が噴き出した。


彼女は真っ暗な部屋の中にいた。


数本の蝋燭だけが彼女を取り囲み、床に描かれた魔法陣を照らしていた。


彼女はその魔法陣のちょうど中央に立っていた。


両手のひらを祈るように合わせ、目は静かに閉じられていた……


……やがて足から流れる血がゆっくりと石の床を濡らしていった。


彼女の服は魔法使いのように真っ白だった。



ALICEのホログラムの顔には、自分の足の方を見つめながら痛みに耐える表情が浮かんでいた。


『私は……助けられなかった』


ALICEの視界に映るモブたちは……苛立ちと絶望の表情を浮かべていたが、誰一人として自分の魔法陣から出ようとはしなかった。


『きっと……召喚魔法を使ってここにいるみんなは、この魔法陣からは出られないのね…』



モブは勝ち誇った顔で、なおも俺を押さえつけ続けた。


「さぁ!さぁぁぁ!さっさと諦めろ!!!」


「俺は……絶対に……諦めねぇぇぇぇ!!」

俺は異世界に引き込まれる圧力に抗いながら、決意を込めて叫んだ。


すでに沈んでいた右手首を、俺はゆっくりと表面まで引き戻すことに成功した。


右手は強く拳を握りしめ、手の血管がはっきりと浮き上がるほどだった……


——俺は右の拳を、すぐそばにいたモブの股間目掛けて力の限り振り抜いた。


ズドッ!俺の拳が彼の股間に叩き込まれる、鈍く激しい音が響いた。


そのモブの目は痛みで一気に見開かれ、唇まで尖るほどだった。


彼は反射的に両足の間を押さえ、痛みに耐えようと体を少し前に折り曲げた。


そして……


…彼のホログラムと異世界の魔法陣は、ガラスのように砕け散った。


俺の力は完全に尽きていた。体はもはや自分を支えることができず、ついに俺は大通りのど真ん中で膝から崩れ落ちた。


片手で体の傷口を押さえ、痛みに耐えようとした。


俺の体から流れる血がアスファルトの上に滴り落ち、顔は青ざめ、目には虚ろ(うつろ)な光が浮かんでいた。


俺の目の前には魔法陣があり、その中で一人の女性が跪きながら(ひざまずきながら)俺に向かって手を差し伸べていた。


「私をお選びください。その傷、私が癒して差し上げます」

と彼女は柔らかい声で言った。


俺は虚ろ(うつろ)な目で彼女を見つめた。


(これは幻覚じゃない…のか。少なくとも……便所の世界の勇者になるよりは、まだマシだ…)


俺の手はゆっくりと伸び、彼女の差し出す手を受け入れようとした。手のひらにはまだ血の跡が残っていた。


(生き残るため……勇者になるしかない…)


俺の手が彼女の手に触れる前に、別の異世界の魔法陣にいた騎士のモブが突然俺に向かって叫んだ…


「勇者よ!早くその女から離れろ!そこは危険だ!」

とモブは、まるで目の前の女性から離れるよう警告するかのように叫んだ。

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